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新しい価値を伴う企画提案へ 現場・現物を知り、センスを磨け

学生のための実践マーケティング(2)

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NIKKEI STYLE

同志社大学の高橋広行です。私のゼミナールでは、企業の方々との積極的なコラボレーションを通じて、製品開発やサービスの提案を行っています。では、学生らしい新鮮な(スレていない)視点、ユニークな視点を持った企画提案を行うには、どうすれば良いのでしょうか? 今回はそれをひも解いていきます。

以前、「奈良食べる通信」(奈良の地元の優れた農産物を作り手の方、製法と一緒に紹介する雑誌で、冊子で紹介した食材サンプルも同封してお届けするサービス)の福吉編集長、源口副編集長にゼミにお越しいただき、活動についてご講演いただいたことがあります。ご講演の後に、学生からおふたりに、質問やコメントをさせていただきました。そこで出た意見をホワイトボードいっぱいに書き出し、整理しました。その結果、編集長、副編集長も、いろいろな気づきがあったようです。例えば、「自分たちが思っている以上に、食べ物の背景が伝わっていない」あるいは「作り手、食べ物の背景やそのこだわりが伝わりさえすれば、かなりの反応がある」という点などです。「なんとなく、気づいてはいたが、より深い気づきになった」「改めて気づいたことも多かった」と仰ってくださいました。

他の実務の方もゼミと関わっていただいたことで,同じような気づきがあったとおっしゃってくださいます。では、どういった企画を提案すれば、実務の方々にとって役に立つ提案や気づきになるのでしょうか?それを説明していきます。

安っぽい提案は見抜かれる

商品開発の最初のステップは、アイデア出しから始まります。まずは、アイデアを広げるために、できるだけ多くのアイデアを出すことが重要です。しかし、新商品の企画でも、サービス改善でも、学生がすぐに思い付くようなアイデアは、すでに世の中の誰かが実現している場合が多い。つまり、簡単に思いつくことは、すでに誰かが実現しているということです。そういった内容を企業の方に提案したところで、「そんな事例はもう既にあるよ」と言われてしまい、企画提案自体が安っぽい場になってしまいます。そうならないためには、かなり真剣に下調べをすることが大切になります。ここで注意して欲しいのが、出したいくつかのアイデアが既に商品として市場に存在していたら、「このアイデアはダメだ!」と簡単に捨ててしまったり、諦めたりする必要はありません。それをしてしまうと議論が進まず、期間内で良い企画提案につながりません。

また、チーム内でアイデアを否定し合うのは簡単です。アイデアは簡単に潰れますが、そうではなく、いかに伸ばす努力をしたのかが重要なのです。実は、ここから本当の議論がスタートします。様々なアイデアを組み合わせたり、視点を変えたり、用途を考えたりしながらポジティブな意見を積み重ね、考え抜くことで企画を温めていくことが大事なのです。そして、そのアイデアの背景を設計したり、利用シーンやターゲットを柔軟に変え、市場性を見出したりすることで、従来の商品とは異なる価値を持つアイデアに昇華させていくことが可能になります。

では、そういった新しい視点や価値を創造するために必要な視点や能力とは何でしょうか? それは、常日頃から「センスを磨く」ことです。イマドキの学生は授業にしっかり出ますし、アルバイトやサークル活動で忙しい様子です。それでも時間を見つけて新しいスポットに出かけたり、新しい商品に触れてみたりする行動的なゼミ生がいます。普段からこのような行動を心がけて実践している学生は、様々な情報に対しても敏感ですし、発想がおもしろい。「感度がいい」というのでしょう。ただし、それだけではセンスにはなりません。

アイデアのストックがユニークな発想力に

例えば、京都で新しいタイプの店ができ、流行っていると聞いたら、実際に行ってみます。そういった店を知っていることは、企画を考える上で大きなヒントにはなります。それをセンスとして磨いていくためには、

「なぜ、その店が流行っているのだろうか?」

「どういった点が集客につながるのか?」

「どのような商品が売れているのか?」

などの考察を深めたり、売れている理由を自ら考えてみたりすることで、読み解くことが重要となります。その経験と「なぜ?」「何が」という思考の連続で得た知見をアイデアとしてストックしておくことです。そのストックを課題や状況に応じて使える力がセンスだと私は考えます。そのストックの数と思考の深さが、新たな発想につながり、新しい価値の創造に役立ちます。そういった繰り返しを重ねることで、自らの幅を広げることにつながります。

ユニークな発想力とロジカルな思考の両立を

当ゼミは、やや女子が多めなのですが、学生を見ていて感じるのは、男子学生と女子学生では、それぞれ強みが違うということです。そのため、当ゼミでは必ず男女混合チームを作るようにしています。(一般的に)男子学生は女子学生に比べて、発想力はやや貧弱ですが、課題を整理し、企画をロジカル(論理的)に組み立てる能力が高い傾向にあります。

ロジカルに考える力とは、企業の方からお預かりした課題の本質を見抜き、その本質を外さないようにしながら、裏付けとなる情報やデータを用いて説得力の高い企画を形にしていく能力のことです。

一方、女子学生は、流行に対して敏感で、知識も豊富なので、ユニークな視点での発想力が高い傾向にあります。逆に、企画を組み立てたり、ロジカルに考えたりするのがやや苦手なようです。

こういった点から、男女混合チームにすることで、女子学生のユニークな発想を、男子学生がカタチにしていくという「チーム力」がうまく発揮されるのです(男女を問わず、両方の能力を兼ね備えていることが理想ですし、実際にそういう学生もいます。過去の事例で言うと、大阪駅北側の商業施設「ルクアイーレ」様とのコラボで、お惣菜・スイーツの企画提案から実際の商品化にまで関わらせていただいた時は、ロジカルな思考を持った男子学生が「京都らしい、可愛らしい商品企画」を提案してくれましたので、必ずしも男女でセンスは分けられないのですが)。

念珠の暗いイメージを転換し、ネコの首輪に

例えば、昨年度から、京都の伝統産業である「京念珠(ねんじゅ)」、いわゆる数珠(じゅず)の新しい価値を創造する商品開発提案に取り組んでいます。念珠というと、学生のイメージでは、「宗教臭い」「暗い」あるいは「ヤンキーっぽい」というイメージがありました。このような学生たちの直なイメージに、企画に関わってくださっている中野恵介氏(京念珠の老舗で創業250年以上続く、中野伊助ブランド10代目当主)も驚いていました。

そうしたイメージから脱却するため、商品開発において学生チームが重視した点は「ネガティブイメージをポジティブに転換すること」でした。その一つに、ネコの首輪に使う企画「ねこのわ」が提案されました。これは、ペット好きな女子学生・男子学生のアイデアから出た企画ですが、彼女たちのリサーチによれば、ネコを飼っている人の約4割は首輪をつけているというデータを裏付けとして、水晶を使った「かわいらしさ」と、本来の念珠が持つ「お守り的な要素」を生かし、首輪に展開するというものです。実際のパッケージやリーフレットのイメージまで提案したことで、企画提案会で優勝しました。その後、中野伊助ブランドとのコラボ商品として、現在は東急ハンズのペット売り場に並んでいます。

企画提案の良さは、考え抜いた時間に比例

上記以外にも、これまでいろいろな企画提案を行ってきましたが、いずれも、利用シーンを工夫したり、ストーリー性を付加したりすることで大きくアイデアの価値が高まった企画がいくつもありました。打ち出し方や組み合わせ方によって、付加価値の高い提案になる可能性があります。アイデアを育てることの大切さに学生自身が気づいてもらえたらいいなと思っています。

最近、安易にSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を使った取り組みを提案する企画をよく見かけますが、「なぜソーシャルを使うことに価値があるのか」「何の課題を解決するのか」という点をしっかりと考え、掘り下げた提案でないと効果は期待できません。

「なるほど、そうきたか!」といった「グッとくる」企画提案において言えることは、企画提案の深さ、面白さは議論した時間と比例すると考えています。ひとつのテーマの中で、その課題にどれくらい真剣に向き合い、ブランドの強み・弱み、消費者ニーズや市場の理解を含めて、どれくらい課題を深掘りして考えたのか、アイデアを考え抜いたのか、その時間のかけ方が良い企画提案につながっていきます。

途中経過の発表で課題あぶり出す

また、自分たちの企画提案の甘い部分を見つけるために、企業へ提案する前に、必ず、中間発表をしてもらいます。一見、上手に作りこまれているように見えても、なんとなく引っかかるという点があれば、矛盾点や違和感を徹底して突き詰め、それらを真摯に受け止めてもらい、修正していきます(以前、発表のためのスライドを大幅に3回作り直したチームもありました。その学生たちの提案は、時間をかけ練り直したことで、様々な大学から30チームほどが参加した提案会で、最優秀賞を受賞していました)。

ここまでの話をまとめます。

商品企画はアイデアや目のつけどころが大切です。ただし、アイデアは簡単に潰れてしまいますので、アイデアを温め、育てる必要があります。そのためには、感度の良さやセンスが重要となります。男女や個々人の個性として得意・不得意はありますが、アイデアや商品の魅力を磨いていく能力は、日々の「なぜ?」の思考を深めることで高めていくことが可能です。また、良い提案は考え抜いた深さにも比例します。だからこそ、1回の提案で完璧なプレゼンができることはありません。何度も発表し、矛盾点や違和感をなくすために、議論を重ねてブラッシュアップさせるという経験(訓練)が重要なのです。併せて、データによる裏付けの仕方も重要です。この点は次回に触れていきます。

高橋広行 研究室ホームページ

http:// takahashi.sweet.coocan.jp /

高橋広行(たかはし・ひろゆき)
 同志社大学商学部准教授。博士(商学),専門社会調査士/1級販売士。専門はマーケティング(特に消費者行動論・ブランド論)。『カテゴリーの役割と構造 -ブランドとライフスタイルをつなぐもの-』(関西学院大学出版会,2011年,日本商業学会賞・日本広告学会賞),『ケースで学ぶケーススタディ』(同文舘出版,共著,2015年)など。実務経験があり,マーケティングが専門であることから,現場感覚を大切にしながら,研究面でも教育面でも現場に役立つ学問「実学」を目指す。趣味は,映画とスイーツとカフェ巡り。

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