資格、選挙、トランプ… 一言では語れない僕の仕事
和歌山を輝かせる(3)
小幡和輝(おばた・かずき)です(@nagomiobata)。前回の記事では、起業直後の話。まったく仕事にならなかった暗黒時代から、一大イベントになった堀江さんの講演会までを書きました。今回はそれからの話。具体的な仕事について書きたいと思います。
改めてですが、僕は「和歌山を輝かせる!」をコンセプトに仕事をしています。和歌山を輝かせる! というのは抽象的な理念で、具体的なミッションとしては、和歌山が好きな人。和歌山のファンを増やしていきたいと思っています。売り上げ、利益も重要ですが、自分がやる意味があるかどうかをとても大切にしていて、仕事をする上での大きな判断基準です。では、仕事について説明していきますね。
商品プロデュース
最初の記事でもちょっと紹介した「わかやまトランプ」が結構人気商品で、1000個以上売れました。1つ1480円(税込)。作ろうと思ったきっかけは自分の実体験です。僕はゲームが大好きで、特に歴史のゲームがめちゃくちゃ好きだったんです。信長の野望とか戦国無双とか。それがきっかけで歴史にすごく詳しくなり、大河ドラマなども大好き。ゲームを通じて楽しく学べたなぁと思ってます。ゲーミフィケーションというやつですね。なので、ゲーム×和歌山で何か作りたいなと思って、トランプを作りました。
「和歌山をテーマにしたゲームを作ったらよかったのでは?」と、よく質問されるんですが、和歌山をテーマにしたゲームを買う人って、多分、そもそも和歌山が好きなんですよね。好きな人だけに届けても意味がないので、1番よく遊ばれているゲームだと思うトランプにしました。
これは企画段階からかなりいろいろな仕掛けを作っていて、まず製作資金はクラウドファンディングで調達しました。わかやまトランプは13種類の絵柄に和歌山の名産品や有名人が書いてあるオリジナルトランプですが、この絵柄を決める投票権がリターンでした。また、各カードにその絵柄を紹介するキャッチコピーが書いてますが、これは小学生と一緒に考えました。和歌山に子供向けの英会話教室などを提供しているPETERSOXという会社があり、ちょうどまちをフィールドにした学びを提供する新しいカリキュラムを立ち上げたタイミングだったので、その教材にということで共同開発させていただきました。
和歌山の梅の魅力はなんだろう? 和歌山生まれの将軍、徳川吉宗はどこがすごいの? という問いに対して、子供たちが考えた生の声をそのままトランプに反映しています。一番反映されたのはジョーカーとカードの裏の絵柄です。プロジェクトが立ち上がったとき、ジョーカーはノープランでしたが、子供から「わかやまジョーカーを作ってほしい!」という声があがりました。写真ではちょっとわかりにくいですが、柿のバンダナに、みかんの首飾り、鼻は梅干しのわかやまジョーカーを作ったのです(ちなみにすべて和歌山県が生産量日本一です)。
カードの裏の絵柄も仮で決めていたのですが、子供から「ダサい(笑)」という遠慮のないご意見をいただきまして、子供が考えてくれたラフ画をデザインしなおして、実際の商品に反映しました。
これがかなり話題になって、クラウドファンディングの支援者を中心に、いろんな人が宣伝を手伝ってくれて、予約販売の時点で原価分を回収できるくらい売れました。製造前から黒字が決まっているというのは非常にありがたかったです。予約だけで売り切れるのがわかっていたので、途中で追加発注しました。
「商品ではなく、体験を売る」ということで、クラウドファンディングをうまく活用できたんじゃないかなと思っています。そして、これが一番嬉しかったのですが、一緒に考えてくれた子供たちがめちゃくちゃ和歌山に詳しくなってるんですよね。教育プログラムとしても非常によかったなぁと思ってます。
仕事の話をもう少しすると、これに関連した話で、日本最大のクラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」の和歌山県公式エリアパートナーとして、プロジェクトの立ち上げ、プロモーション支援を行なっています。これまでに1000万円くらいの資金調達をサポートさせていただきました。
わかやまコンシェルジュ
これは仕事というよりやりたいからやってる活動なんですが、いま一番力を入れている活動で「わかやまコンシェルジュ」という取り組みをしています。冒頭で、和歌山が好きな人を増やしたい。ということを書きましたが、和歌山が好きな人って抽象的じゃないですか。好きな人が増えているのかどうか、わからないんですね。なので、和歌山が好きな人を認定する仕組みを作って、これを増やしていこうと思ってます。
和歌山の歴史、名産品、観光地、有名人などをテーマした問題を作っていて、合格者を「わかやまコンシェルジュ」として認定しています。こんな感じで認定証や認定バッジも発行してます。現在、1500人くらいわかやまコンシェルジュがいます。とりあえずの目標は1万人です。
選挙啓発
あとは選挙啓発にも関心があります。昨年は18歳選挙権のスタートということもあり、いろいろな取り組みをさせていただきました。選挙とまちづくりは非常に関係があり、結局は行政も動かないとまちは変わらないし、そもそもまちのリーダーを決めるのが選挙なわけです。選挙に関心がないということは、自分のまちに関心がないことと同じだと思うんです。これは問題なので、選挙啓発はかなり積極的に取り組んでいます。
その一環で、総務省主催のワークショップの運営委託を受けて和歌山でワークショップを開催したのですが、これは投票率上がらないなと思いました。10代と話す機会が多いのですが、選挙に行こうと思ってる人は「行けって言われたからまぁ行くか」みたいな感じでした。まったく自主的じゃないんです。
そこで、いろいろ考えた結果、一番啓発になるのは、友達が選挙に行ってることをSNSで見ることだと思いました。「あ、あいつ選挙行ってる。え、あいつも?」みたいな感じで、選挙行ってる人が可視化されることで、選挙に行く空気感を作れるんじゃないかなと思いました。選挙に行った方がいい、というのはみんなわかってるので、ちょっと罪悪感を刺激する感じです。
プロジェクト名は和歌山リア10プロジェクト。コンセプトは「10代の投票率が高くなれば、和歌山の若者のリアルを充実させる政策が、きっと生まれる」#は「#和歌山の10代投票率を日本一にしよう」です。
これは和歌山の学生、コピーライター、デザイナーと一緒に作りました。そもそものきっかけが、コピーライターの長谷川哲士さんとご飯を食べていたときに選挙の話で盛り上がったのがスタートです。長谷川さんが和歌山出身でコピーライターの後藤亮平さんとデザイナーのハヤカワ五味さんにも声をかけてくれて、素晴らしいメンバーで作りました。マジで僕の力はほぼ0です。クリエイターが凄すぎました。
最終的にやりたいことは「投票に行ったことをつぶやいてね」なんですが、そもそも選挙とか政治のことってなんか意識高いというか、Twitterとかに書けない空気感があるじゃないですか。なので、まずは選挙の話題が当たり前にタイムラインに流れてくる状況を作るために、選挙啓発ポスターを約40種類作りました。
こんな感じでいろいろやってきたのですが、一言で表すのが非常に難しい。名刺交換のときに、「どんな事業をしてるんですか?」という質問が一番苦手です。これは仕事でこれはボランティアです。みたいな明確な線引きが難しくて、「どんなビジネスモデルですか?」と言われても「うーん。。」という感じです。
例えば、わかやまコンシェルジュは非営利活動ですが、これがきっかけでつながった人がクラウドファンディングに支援してくれたり、新しいプロジェクトを立ち上げたときに周知できるネットワークになっていたり、和歌山リア10プロジェクトも非営利活動ですが、これが話題になって別の仕事につながったりもしました。
そもそも長谷川さんとはご飯と食べてるときに話が盛り上がって、プロジェクトが立ち上がったわけで、そう考えると誰かと一緒にご飯を食べることも仕事と言えるかもしれません。
仕事=1つの肩書きではないと思います。
僕は和歌山を輝かせることを仕事にしたい。なので、いろんな手段を使ってこれからも仕掛けていきたいと思っています。次回は、和歌山を輝かせると同じくらい大切にしている「チャレンジする人を増やす。」について。僕一人が頑張っても意味がないんです。
小幡和輝 OfficialWebsite nagomiobata.com
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