面接の最後に「何か質問ありますか?」と聞かれたら
人事部長のひとりごと(12)
「何か質問ありますか?」。採用面接の最後は、決まってこの質問です。
「でも、何を聞けばいいのですか?」。
学生からは、そんな相談を時折受けます。正解はありませんが、「別に」「特にありません」などという答えでは、自社に関心を持ってくれていないことが感じられて、面接官はがっかりしてしまいます。逆に、面接官をうならせる質問とは、どんなものでしょうか? 今回は、そんな質問づくりのコツをご披露します。
私は日本経済新聞社等で勉強会「ジローさんの迫熱教室」を行っている中澤二朗です。現役の人事部長ではありませんが、最近まで大手企業の人事部で部長をつとめ、今は高知大学の客員教授をしています。
面接官を「うならせる」質問とは
次の3つの質問の中で、どれが一番、面接官をうならせる質問だと思いますか。その理由も答えてください。
(1) 「働き方改革」がいま議論になっています。御社についても具体的な取り組み事例があれば、いくつか教えて下さい。
(2) 市場はグローバル化しています。競争は益々激しくなっていると聞いています。御社はこうした中で、どのようにして生き残り、かつ成長しようとしているのですか。具体的な取り組み事例があれば教えて下さい。
(3) 私は「働き方改革」も「生き残り」も共に大事だと思っています。しかし両者は時に"衝突しあう関係"になることがあります。まさにあちら立てれば、こちら立たず。そうした"板ばさみ"の中にあって、いま会社として一番悩み苦しんでいることは何ですか。
次は、こうした質問を初めて耳にした時の、私の受け止め方です。もし私が面接官であれば、きっとこんな独り言を頭の中で唱えるのではないかと思います。
(1) 「ほおー、働き方改革に関心があるんだ。これは基本中の基本。まずまず、かな」。
(2) 「自分の口から市場について触れる人はそう多くない。ましてや、企業がその市場で翻弄される大変さに思いを馳せる人はまれ。なかなかの人かもしれない」。
(3) 「真の課題とは、一つ一つの課題というより、複数の課題に折り合いがつけられずに困っているもの。とすれば、この人はそうした課題を見つける癖づけがされているような気がする。こうした人に任せれば、にっちもさっちもいかなくなった事態を打開してくれるかもしれない。だから、採る方向で検討しよう」。
要するに、一番"うならせる質問"は(3)だということです。
そしてそのキーワードは「折り合いをつける」です。もっといえば、矛盾した折り合いのつかないものに、自分なりの折り合いをつける人。真の課題を設定でき、限られた経営資源を使って"より悪くない選択"ができる人です。
しかし考えてみれば、いや、考えるまでもなく、そもそもマネジメントとはそういうものかもしれません。manageの意味は「やりくりする」「折り合いをつける」。であれば、そんな"衝突しあう課題"を、自分なりにブレークスルーするところにマネジメントのマネジメントたる真骨頂があるのです。
質問を聞けば、その人の真価がわかる
ここは大事なところ。重ねて言います。「働き方改革」は大事です。「生き残り」を画策することも、むろんも極めて大事です。しかし、その両者を先ずは視野に入れること(質問(1)+(2))。そしてその上で、衝突しあう関係に決着をつける。そういう人がいま何よりも求められているということです。
「質問を聞けば、その人の真価がわかる」と言われます。この話は、その一例です。
"求められる人"になりたければ、こうした質問ができるようになればいいのです。(3)の質問ができるように、物事を多面的にみて、自分なりの打開策を造ろうとするクセづけをすることが何より望まれるということです。
これは、就活中の学生ばかりではなく、会社に入ってからも、あらゆる年代で、あらゆる分野で求められる資質なのです。
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