パンクの女王 ヴィヴィアン・ウエストウッドの真実
恋する映画(9)『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』
いよいよ2018年も終わりを迎えるところですが、1年を振り返ってみて、「自分らしい日々を過ごせた!」と胸を張って言えますか? とはいえ、「自分らしく生きるとはどんなことなのか?」という思いに駆られている人もいるはずです。そこでオススメしたいのが、ドキュメンタリー映画『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』です。
伝説のデザイナーに隠された真実とは?
本作品で、3年にわたって密着している人物は、タイトルからもわかるように英国が誇るデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド。1970年代にパンクファッションというジャンルを築き、「パンクの女王」と呼ばれました。人目を引く斬新なデザインはもちろん、王冠と地球をモチーフにしたブランドのロゴは誰もが目にしたことがあるはずです。現在77歳のヴィヴィアンは、もはや単なるデザイナーではなく、英国カルチャーを作り上げてきたアイコンであり、数々の伝説を生み出してきた人物としても知られています。
本作では、そんな唯一無二の存在であり続けるヴィヴィアンがいかにしていまの道を歩んできたのか、波乱に満ちた半生を自身の言葉で語る姿と過去の秘蔵映像が映し出されており、どのエピソードも興味深いところです。
労働者階級の家庭に生まれたヴィヴィアンは、若い頃には美術教師を目指していたものの、20代前半で最初の結婚と出産を経験。「世界について知りたい」という理由で3年後には結婚生活に終止符を打ちますが、2人目の夫となるマルコム・マクラーレンとの出会いをきっかけに、デザイナーとしての才能を開花させることになるのです。
その後、2度目の離婚や経営に失敗して無一文になってしまったという衝撃の事実も明らかにされます。ファッション界に進出した当初は批判されたり、観客の前で笑い物にされたりと、決して順風満帆とはいえませんでした。そんなこれまでの人生についても赤裸々に語っています。
困難や挫折に見舞われながらも、それを支えていたのはどんなときも変わることのないヴィヴィアンの強さと信念。その結果、どん底を味わうものの、1990年、91年と2年連続で「ブリティッシュ・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するまでにはい上がり、2006年にはエリザベス女王から「デイム」の爵位を授けられるほどになります。
一言一言からあふれるエネルギー
同じ女性からみると、とにかく「かっこいい!」の一言に尽きるパンクな生き方は、誰にでもまねできるものではないですが、ついぬるま湯につかりがちな私たちにとっては、「お金には興味がない」と言い放つひょうひょうとした彼女のたたずまいと数々の名言に触れるだけで、多くの刺激を得られるはずです。
劇中でも、ケイト・モス、ナオミ・キャンベルといったスーパーモデルやパメラ・アンダーソンをはじめとする女優などの豪華なセレブたちが登場し、彼女の魅力を語っています。これまでにメリル・ストリープやヘレン・ミレンといった大御所の女優たちがこぞってヴィヴィアンのドレスをレッドカーペットで選んできたのもうなずけます。
スタッフへの厳しい言葉も飛び交いますが、それは何においても妥協しないからであり、高いレベルを維持しながら仕事と向き合う姿勢についても、考えさせられます。現在の夫は、もともと教え子だったという25歳年下の夫アンドレアス・クロンターラー。公私ともにパートナーとして全面的にサポートしています。
年齢に関係なく情熱は燃やし続けるべきもの
最近は、環境保護や人権保護問題の活動家としても精力的に活動をしているヴィヴィアン。あらゆることに関心を持ち、つねに全力で立ち向かう姿は、いつまでも私たちを飽きさせることなく、世界中の人を虜(とりこ)にするばかり。本作では、そんないくつもの顔を持つ彼女の生き様を存分に味わうことができます。
何事においても情熱を持ち続けることの大切さ、そして何と言っても「情熱が年を取ることはない!」というのを感じさせてくれるはずです。いくつになっても、自分の足で自らの進むべき道を突き進むヴィヴィアンの姿は、2019年に向けて新たな決意や意気込みを持っている人には、まさにぴったりのドキュメンタリー。自分の人生をどうデザインし、どうやって仕立てていくかは、すべてあなた次第なのです。
監督:ローナ・タッカー
出演:ヴィヴィアン・ウエストウッド、アンドレアス・クロンターラー、ベン・ウエストウッド、ジョー・コーレほか
配給:KADOKAWA
12月28日(金)より 角川シネマ有楽町、新宿バルト9他全国ロードショー
(C)Dogwoof
【ストーリー】
2016年2月、ロンドン・ファッション・ウィークの秋冬ショーを控えて、ヴィヴィアン・ウエストウッドのアトリエではデザイナーのヴィヴィアンとスタッフが最終チェックに追われていた。指示を間違った服に容赦ない言葉を浴びせる姿は、77歳のいまなお現役であることを証明していた。そんな彼女がカメラの前で自らの人生について、すべてを語り始めることに……。
(ライター 志村昌美)
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