日本酒、お燗で舌鼓 温めて増す香りとうま味

燗酒の名店として知られる料理店、神田新八本店(東京・千代田)で話を聞いた。女将の佐久間玲子さんは「純米酒の素晴らしさを伝えていきたい」と笑みを浮かべる。日本酒は大きく2つに分かれ、コメとコメ麹(こうじ)だけを原材料とする純米酒と、醸造アルコールを添加したアル添酒がある。温めて楽しむ場合、香りがおだやかで味わいも自然な純米酒のほうが向くという。同店は「なるべく減農薬か無農薬のコメ」を栽培する農家とつながっている蔵元を重視している。さらに麹づくりが丁寧な酒を選ぶという。

神田新八の定番は、神亀酒造(埼玉県蓮田市)の純米酒だ。この酒蔵は約30年前、生産の全量を純米酒に切り替えた。熟成してコメ由来のうま味が増すことも重視し、醸造後2~3年は蔵で寝かせてから出荷する。珍しい銘柄だと長期熟成した「大古酒」があり、たとえば昭和57年産(1982年産)は深みのある琥珀(こはく)色に輝いている。ほっとする温かさの燗酒は、36年間を凝縮したような複雑なうま味や酸味が絡み合う。

温度の調節、料理との相性で

神田新八本店では料理との相性を考えて、お燗の温度を調節する

料理店によっては「お燗番」という担当がいて、料理との相性を考えながら銘柄ごとにちょうど良い温度で提供する例がある。揚げ物の場合、神田新八では白子の天ぷらに「日置桜」(鳥取市の山根酒造場)の純米酒を合わせるのを勧める。酸味と渋味もあるやや辛口で、食事中に口の中がリフレッシュする感覚になる。ふわりととろける白子を味わってから「油はさっと流せるように55~60度の熱燗にする」(佐久間さん)。

あんこう鍋なら、竹鶴酒造(広島県竹原市)の純米原酒「小笹屋竹鶴」という銘柄。味噌ベースの鍋は意外にも日本酒を選ぶのが難しいという。味噌の甘味が強いと酒を渋く感じやすいため、酸味やうま味がしっかりして味噌に負けないバランスのある銘柄がお勧めだとか。温度帯は鍋と合うよう52~53度に上げる。

■湯煎で燗付け、器は平杯を

家で燗を付けるときは湯煎を勧める専門家が多い。電子レンジだと温まる部分とやや冷たいままの部分でムラが出てしまう。飲む器は平たい杯が適している。やや底が深い「ぐい呑(の)み」は温められた日本酒の香りが強く出過ぎる面があるが、平杯は適度に香りが抜けて、味が分かりやすくなるからだ。

燗に向く酒を選ぶなら純米酒のなかで生酛や山廃のほか、味にふくらみのある銘柄を酒販店で聞いてみよう。例えば浜嶋酒造(大分県豊後大野市)の「鷹来屋(たかきや)特別純米酒 槽(ふね)しぼり」という銘柄は穏やかなうま味で勝負している。決して派手さはないが、杯を重ねるとじわりと体にしみ渡る。寒い日に45~50度程度の燗にするのがお勧めだ。

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