人気ブロガー実践 3つの箱で「日本一簡単な整理術」
「ぐちゃぐちゃの部屋で暮らしてきた、物をなくす天才」を変えたのは、たった3つの箱と扉のない棚。収納が苦手でつい自分を責めてしまうあなたに送る、人気ブロガーが編み出した「日本一簡単な整理術」とは。
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「どこに何をしまったかを記憶できない僕はさしずめ、ドングリをせっせと土に埋めては忘れるリス。『普通の人向けの収納ノウハウ』では、到底、物を管理できません」。
そう語るのは人気ブロガーの「借金玉」さんだ。注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断されている彼は、不動産業関連の自営業者として働くなかで、障害に伴う困難に対処すべく編み出したライフハック(工夫)を発信し、共感を集めている。
自分が今いる位置から手が届かない場所に、どうしても物を戻す気力が湧かない、入れたが最後、中身の存在を忘れてしまう引き出しは怖くて使えない……。それが借金玉さんの悩みだった。
そのため、借金玉さんはあらゆるものを床に積み上げ、暮らしてきた。しかし、床に積み上げられたものは視界から徐々に消えていく。「ブラックホールに吸い込まれるがごとく」頻繁に物がなくなった。
何とかしようと考案したのが、1カ所に物を集める「集約」、一目で全体を見渡せる「一覧」、すぐ出し入れできる「一手アクセス」を3原則とする、独自の整理術だ。
「集約」を体現した片付けアイテムが、借金玉さんが「本質ボックス」と呼んでいる箱。部屋を散らかす元凶の、「使用頻度が低く、置く位置が決まっていない雑多なもの」を何でも放り込む箱だ。分類せず入れると探すのが大変そうだが、「『落ち着いて探せば必ず見つかる』。そう思える安心感は、手間や時間に代えられません」。
扉のない棚は、「一覧」と「一手アクセス」を両立させるハック。机の脇に並べ、各段に貴重品、仕事の資料、掃除機などを置く。「見えない場所にあるものは、僕には存在しないのと同じ。手が届く場に、物を可視化して置くことで、既に持っているのに何度も買ってしまう、痛恨のミスもなくなりました」。
散らかるのは自然の摂理
「こんな僕でも、整然と片付いた空間への憧れは人一倍。ドラマの舞台のようなしゃれた部屋を目指し、収納本を何冊も買い込みました」と借金玉さん。
「でも、そのなかの世界で求められている整理整頓のレベルは、ベターを超えた『ベスト』。あの美しさを維持し続けるのは困難です。そもそも、人が暮らせば散らかるのは自然の摂理。それを認めず、なぜ片付けられないのかと自分を責めるのはやめました。必要最低限のラインで僕は十分に快適ですし、諦めるところは諦めればいい。そう思うと気持ちが楽になりました」。
【仕組み1.本質ボックス】 たった3つの箱で悩みを解決
部屋にあふれる置き場のないものを、「ひとまず放り込む」箱を用意する。これだけで部屋の散らかり度合いが薄れる。中のものは「箱からあふれ、収拾がつかなくなった時点で整理すればOK」。箱の数は3つ程度が望ましい。
・LARGE(雑多):大きめの箱に用途を問わず、雑多なものを収納。写真はイメージで、「チェンソーを入れていた時期もありますね」。
・MEDIUM(仕事):借金玉さんの場合、一回り小さい箱に、仕事に関する資料などを分類することなく、無造作に入れている。「なくさないことが最優先」
・SMALL(貴重品):パスポートなどの貴重品を入れ、「こればかりは特別」と蓋をしてから、室内の一角に目立たないように置いている。
【仕組み2.扉のない棚】 収納物を可視化
借金玉さんは、書斎の机の脇には「一覧」「一手アクセス」を実現する、約2mの高さの棚を設置している。扉がないことで、必要なものが目に見えた状態でそばにある安心感が得られる。
1段分の棚には、同じ用途のもののみを置く。「詰めればもっと置けますが、ゆったり置いて視認性を高めることが重要」。
【仕組み3.書類はバインダーで管理】
「集約、一覧、一手アクセス」の3原則を書類管理にも適用。案件の数だけバインダーを用意し、時系列順に挟んだ書類をめくるだけで、仕事の流れを一覧できる。「ファイリングするより、ずっと探しやすいです」。
「借金玉流」誰でもできる整理のスゴ技
「トレンディドラマに出てくるような整理整頓された空間に憧れつつも挫折した」という借金玉さんがオススメする、「日本一意識が低く、楽々&簡単で、無理のない整理術」を一挙ご紹介!
ブロガー・作家。1985年生まれ。大手金融機関勤務、飲食店経営を経て、現在は不動産業関連の自営業。2017年開設のブログ「発達障害就労日誌」が話題に。初の著書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』(KADOKAWA)がヒット中。
(文:籏智優子 写真:武藤奈緒美)
[日経おとなのOFF 2018年12月号記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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