関アジ、関サバ、ヒラメ 大分の魚を握りで存分に
鮨龍
ネオン街のビルの1階にそっと隠れるように店はある。使い込まれたカウンター。少し高い天井。ここの空気はキリリと締まっている。
握りは2100円からだが、大分の魚を存分に味わいたいなら1万円のコースに限る。先付けは旬を迎えたタラの白子で舌の上で甘くとろけていく。刺し身盛りは関アジ、関サバ、ヒラメ。豊後水道の潮流に洗われた身がコリコリと引き締まっている。高級魚のシロアマダイの焼き物は軽く塩をふるだけ。時価だが、イクラとウニの盛り合わせは目で驚き、味わって二度驚くという豪華な逸品だ。
「大分の旬の魚をおいしく食べてほしい。その思いだけです」。と主人の前健太さん(35)。東京・赤坂、山口・萩で日本料理を学び、10年ほど前に父の店に入った。父が引退して4年、カウンター8席に小上がりという店を母と一緒に切り盛りする。
旬の魚を提供するという一徹な思いとネタへの目利きは折り紙つき。シャリは軟らかく握るが、きれいな形のまま食べてこそ本来のすしという信念があるから、箸の客には手で食べる客よりわずかに固く握る。この繊細さも店の味だろう。ネギトロなど手巻きものは必ず手渡しする。「少しでも時間を置くとノリのパリッとした食感が消える。すぐ食べて下さいとお願いするんです」。細やかな気配りに幸せを感じて、夜が静かに更けていく。
(奈良部光則)
〈すしたつ〉大分市都町3の6の7 電話097・537・1595
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