妖怪ウォッチ生みの親 最強のPCで最高のゲーム体験
「妖怪ウォッチ」「イナズマイレブン」などの作品を、ゲームとテレビアニメ、映画などジャンルを超えたクロスメディア展開で大ヒットに導いてきたゲーム会社レベルファイブ。同社の代表取締役社長の日野晃博氏は、公開中の新作映画「映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS」で製作総指揮と原案・脚本を自ら手掛ける希代のゲームクリエーターだ。そんな彼がこだわるモノは、自らの体験を最大限にしてくれるハイスペックなPCだった。
ゲーム好きじゃない人に興味を持たせるために
幼い頃からゲーム好きで、プログラミングにも親しんだ日野氏が、1998年に創業したのがレベルファイブ。2007年に企画・シナリオ・プロデュースを手掛けたNintendo DS用ソフト「レイトン教授と不思議な町」は、声優に大泉洋さんや堀北真希さんを起用して話題になり、08年の「イナズマイレブン」からは、マンガ、テレビアニメ、映画などクロスメディア展開を積極的に行って大成功を収めてきた。
「クロスメディアというビジネスの形は、会社を立ち上げたときは考えてなかったんです。でも『レイトン教授』というオリジナルタイトルを自分たちで作ろうとなったときに、どうしても売らなきゃいけないという思いが働いてそこからいろいろ考えるようになりました。お客さんに近づくための一つのステップとして考えたのが、大泉洋さんや堀北真希さんといったタレントの声優への起用でした。
というのも、当時売れているのは『脳トレ』だけ、ゲーム好きはDSを買ってない、という時代だったんですよ。だから『レイトン教授』は、ゲームはやらないけどタレントに興味があるとか、脳トレを買ったけどほかにやるものがないっていう若い女の子に買ってもらえるようなアプローチをしたんです。
2作目の『イナズマイレブン』のときは、ターゲットの子どもたちにウケるためには、ただゲームを作るだけではダメだという結論になりました。それでマンガを連載し、テレビアニメを放送し、コンテンツを子どもたちの身近なものにして、最終的に5000円もするゲームを買ってもらおうと。そこでクロスメディアのビジネスがかなり確立できたので、『妖怪ウォッチ』は、最初からアニメとゲームと映画にできる企画として考えました」
モノより体験。だからモノ選びにこだわる
「僕はモノよりも時間とか体験を重視する方なので、あんまりモノにこだわらないんですよ。ただ、貴重な時間を最高の体験に使いたい。そのために必要だというモノにはかなりこだわります」
「最たるものがパソコンです。僕はゲームが大好きなので、ちょっとでも時間があればゲームをしたい。遊べる時間が少ない分、今体験できる最高の映像で楽しみたいんです。だから自宅では4Kで、かつ1秒間60フレーム以上で映像が動く、最高にハイスペックなデスクトップパソコンを使うようにしています。
例えば、この間まで使っていたパソコンは、史上最高といわれた『GeForce GTX TITAN X』というグラボ(グラフィックボード)を4枚挿していました。他の部品を合わせた金額は100万円を超えたかもしれない(笑)。最近は『GeForce RTX 2080 Ti』というグラボが出たので、それを2枚挿しにしたPCを、東京と福岡のそれぞれの自宅に置いています。
パソコンだけでなく、PlayStation4でも最高の状態で遊びたいので、SSDをより高速なものに換装(部品や装備を取り換えること)して遊んでいます。テレビはソニーのハイエンドモデルの84型液晶で、音響システムは6.1chサラウンド。東京にも福岡にもプロジェクターを備えて、いつでも110インチで遊べるようになっています(笑)。
ゲームは本当に、時間があれば寝る間を惜しんで……というか、寝る時間はいらないっていうぐらいやっています(笑)。朝から丸1日仕事をして、夜10時や11時に帰宅して、それからまた夜中の2時くらいまで仕事をしたとするじゃないですか。それで眠りたいんですけど、体が寝かせてくれないんですよ。どうしてもゲームをしてしまう(笑)。その上、NetflixやHuluで映画を見たりもするので、ひどいときは睡眠3時間、本当にひどいときはまったく寝ないときもあります」
MacBookが並ぶ会議室で…
「常に持ち歩いている」という仕事用のノートPCも、「日野仕様」だという。
「僕がノートPCに求めるものは、持ち運びやすくて軽いことと、ゲームができる性能を備えていること。その2つのバランスにもこだわりますね。ゲームができる高性能なゲーミングノートって、普通はかなり分厚いんですよ。でも僕が使っているMSIのゲーミングノートは比較的薄くて軽い。それに1070(GeForce GTX 1070)のグラボと、NVMe接続のM.2 SSD(最新規格の高性能SSD)を4TB分積んで、その大きさのノートPCで考えられる最高の状態にしてあります。これがあれば出張先のホテルでもゲームが楽しめる。
いつ何時、遊んでもいい時間が来るかわからないので、ノートPCには今遊んでいるゲームは全部インストールしています(笑)。今は『アサシン クリード オデッセイ』というゲームにはまっていて、もう80時間くらいやっていますね。
このノートで会議にも出ます。会議によっては、他の会社の人たちがみんなMacBookを使っていたりする。でも僕は、真っ黒なMSI。僕もMacってカッコいいと思いますよ。でもゲームをするなら、MacよりWindowsのほうがいいんです」
「ランクがある商品なら、必ず一番上のものを買いたいと思います。でも、高級ブランドだから持っていることがステータスだというものにはあまり興味がないんです。アップルのこの製品だからこれだけ映像がいいとか、ソニーのこのテレビだからこの色が出るんだとか、そういう実益のあるブランド力には引かれるんですけど。僕にとってはそういう『実力のある付加価値』が大事なんでしょうね」
自ら映画脚本まで担当する理由
13年にゲームを発売し、14年からテレビアニメが放送された「妖怪ウォッチ」は、同年映画も公開されて大ヒット。以降、毎年新作が公開され、累計興行収入は186億円を突破している。そして18年12月14日に、第5作目となる「映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS」が公開された。日野氏は過去作と同様、製作総指揮と原案・脚本を自ら手掛けている。
「映画は、わざわざ家から映画館まで行って、お金を払って見なきゃいけない。毎週テレビで見られるようなものではダメなので、アニメと実写を融合したりとか、毎回手を変え品を変え、新しいものを作ってきたつもりです。だけど今回は5周年記念ということで、ストレートに、アニメ映画として良いものを作ろうと思いました。だから、悲しいシーンで始まって幸せな方向に行き、弱いヤツが激しく強くなり、寂しい世界から豪華絢爛(けんらん)な世界に行く。振り幅の大きい物語にして、初めて見る人でも感情を揺さぶられるようなエンターテインメントをめざしました」
「脚本は、誰かに任せて面白いものができれば、それでもいいんです。でも映画は特にたくさんの人が絡むので大変なんですよ。例えば『こうしたい』と言っても、出資している方たちに『それではジバニャンが出て来ない。ジバニャンを出さなきゃ』と言われたりする(笑)。僕は基本的には仕事はみんなの意見を取り入れる方向で進めるんですけど、作品のために、誰が何と言おうと舵(かじ)を取りたいときもあるわけです。そのときのために『自分で書いた脚本だから文句は言わせない』じゃないですけど、それくらいのものがあった方がいいっていうのはあります。
あとはもう、脚本を書くのは趣味ですね(笑)。ビジネスじゃなく、これはクリエーティブ。売れるかどうかはさておき、とにかく自分が納得のいく、人を楽しませるものを作らなきゃいけないと思っているんです。それを世の中に出して、人が楽しめるものになっていれば売り上げにつながるという考え方。それは映画でもゲームでもマンガでも同じです。
なかでも映画は、コンテンツを多くの人に広められることが醍醐味ですね。特に、子どもたちの『おーっ!』と驚く声や笑い声を聞くだけで十分やった甲斐(かい)を感じられる。なので公開されたら、いつも映画館に3回くらいは見に行きます(笑)」
株式会社レベルファイブ 代表取締役社長/CEO。福岡の開発会社でメインプログラマー、ディレクターを経て1998年10月にレベルファイブを設立。世界累計出荷1700万本を記録した「レイトン」シリーズや、社会現象となった「妖怪ウォッチ」などのクロスメディア作品で、企画原案、シナリオ制作、プロデューサーを務める。現在、クロスメディアプロジェクト第5弾「メガトン級ムサシ」を企画中。19年春にはNintendo Switch用ソフト「妖怪ウォッチ4」を発売予定。
「映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS」
1960年代の東京。貧しくも幸せに暮らしていた少年・シンは、たった一人の家族である母親を亡くして不幸のどん底に落ちてしまう。そんなときに出会ったのが、姉を亡くした少年・イツキ。2人は妖怪が見える少女・タエやシンの守護霊・スーさんらとともに、家族の魂を取り戻そうと未知なる冒険に向かう。製作総指揮/原案、脚本・日野晃博 原作・レベルファイブ 監督・高橋滋春 特別出演・小栗旬、ブルゾンちえみ、声の出演・種崎敦美、木村良平、東山奈央、小桜エツコ、関智一 12月14日(金)全国ロードショー
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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