「夏休み」をやりっぱなしにするな ~インターンシップの振り返り方
常見陽平 千葉商科大学専任講師

「"夏の終わり"と言うと切なくなるので、"秋の始まり"と呼びませんか?」
先日、ラジオのパーソナリティーがこんなことを言っていました。なかなかナイスな、センスの良いアイデアです。ただ、夏が終わってしまったという事実は、まったく揺るぎません。
皆さん、この夏休みはいかがでしたか? 私はといえば、夏フェス参戦や屋形船パーティー、出張を兼ねた旅行など夏らしいことはそれなりにできました。ただ、育児や家事に忙殺され、仕事の方は、当初、予定していたほど進みませんでした。本当は、今頃、本1冊を書き上げているはずでしたが、まだ1/3も終わっていません。
いや、仕事をしていなかったわけではありません。たくさんのメディア出演や寄稿、講演をこなしました。ただ、人間とは弱いもので、ついついその場の「やらなければならないこと」に必死になり、「重要なこと」を疎かにしがちなものです。
スケジュール・SNS投稿・写真を見返してみよう

いきなり、ダメな中年の自分語りから始まりましたが、皆さんの夏休みは充実していましたか? 成し遂げたことはなんですか? ぜひ、この夏のことを振り返ってみましょう。
最初に、夏休みをざっと振り返ってみましょう。おすすめの方法は3つあります。1つ目は手帳やアプリなどで、スケジュールを読み返すこと、2つ目はSNSの投稿を読み返すこと、3つ目はこの期間に撮影した写真を見返すことです。あまり時間をかけずに、自分の夏休みがどのようなものだったのかを振り返ることができます。
「時間をかけずに」と言いましたが、この作業を始めると、意外に楽しくて時間を忘れて熱中してしまうことでしょう。やや忘れていた、何でもないようなことで、自分にとって大切な出来事を思い出すかもしれません。
スケジュールを読み返すと、取り組んできたことだけでなく、自分の時間の使い方のクセを理解することもできます。有効に時間を使うことができているのか、何に時間をかけ、何にかけていないのかを検証しましょう。
SNSの投稿内容を振り返ると、自分の気分の浮き沈みも含めて確認することができます。また、周りの人がどようなコメントをつけたのかを振り返ると、自分がどう見られているのか、期待されていることは何かを確認することができます。
写真を一通り振り返るのは、今後、本格化する就活戦線にとって有益です。自分をアピールする体験については、写真をストックしておきましょう。パラパラと見ることにより、自分の価値観や行動特性などに関する気付きもあることでしょう。
まずは、スケジュール帳、SNSの投稿、写真を振り返ることで自分が何をしたかを確認してください。スマホひとつで、簡単にできる夏休みの振り返りであり、自己分析の方法です。
インターンシップ振り返り 3つのポイント
もっとも取り組むべきことは、インターンシップの振り返りです。売り手市場や、就活時期の形骸化などが進む中、企業もアプローチを早めており、インターンシップは盛り上がりを見せています。皆さん、インターンシップはいかがでしたか? 何社参加しましたか?
言うまでもなく、インターンシップの振り返りは大切です。業界・企業についてわかったこと、意外な発見、企業に対するイメージが変わった点などはまとめておくべきでしょう。 ただ、これはあくまで王道の振り返りです。自分に合った業界・企業・職種と出会うためには、より深い振り返りが必要です。3点のポイントがあります。
「失敗」を振り返る
1点目は、インターンシップでの失敗について振り返ることです。議論をうまく仕切ることができなかった、意見が対立してしまった、社員から厳しいフィードバックを受けたなど、インターンシップでなんらかの失敗したポイントや反省点などはないでしょうか。ワンデーインターンシップでも、グループワークやプレゼンテーションなどがあります。「他大生に圧倒されて、上手く話せなかった・・・」などの反省点はないですか?
私も会社員時代は、インターンシップの受け入れを担当していました。インターン生の悩みをよく聞いたものです。よくあるのが、人間関係のトラブルです。意見の対立や、モチベーションやコミットメントが低い人を上手く巻き込めなかった、などです。つらくて泣きだす学生もいました。
もちろん、人間関係の問題は自分以外の人が悪いことは多々あります。ただ、どうすればうまくいったかは振り返っておくべきです。これからの就活も、社会に出てからの仕事においても、人間関係のトラブルは常にあるものです。どのようにすれば、他の人とうまくやっていくことができるか。考えてみましょう。
「違和感」を振り返る
2点目は「違和感」です。インターンシップを通じて、何かしらの違和感を抱いた人はいないでしょうか。この企業、掲げているビジョンとやっていることがズレていないか、このビジネスは本当に社会に貢献できているのか、この社員は尊敬できない、などです。もちろん、自分自身が社会や企業のことを理解できていないためという要因もあるかと思います。ただ、この違和感は意外と正しいことがあります。自分の価値観や行動特性、自分にあった組織風土を知るヒントになります。振り返るべきです。
「尊敬できる社会人」を振り返る
3点目は、自分はどんな社会人を尊敬するのかという点です。インターンシップで出会った社会人のうち、尊敬する人はどんな人でしたか?どんな社会人になりたいと思いましたか? これもまた、業界・企業・職種を選ぶ上でも、今後のキャリアを考える上でも有益です。ぜひ、振り返ってみましょう。
夏休みはインターンシップだけではありません。勉強や、旅行や趣味など、一通りの体験を振り返ってみましょう。やりっぱなしではなく、振り返ることにより、もっと有意義になります。応援しております。
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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