週末レシピ 絶対に飽きない餅、洋風アレンジも簡単に
「誰が餅はお正月の食べ物だなんて決めたんだ」と、声を大にして誰かに文句を言いたいくらい、私は餅が好きである。クリスマスが終わるとスーパーマーケットの店頭はがらりと正月一色に変わり、餅がどーんと陳列される。その光景を見るとワクワクしてしまう。年が明ける前から、朝に、昼に、おやつに、夜にと食べるようになる。
しかし、こんな餅好きの私ですら、その単調な味わいにのまま食べていると飽きてしまうことがある。そこで今回は、長年の餅愛が生み出した餅のアレンジレシピの数々をご紹介しよう。なお、今回は、一般的に手に入れやすい個包装タイプの切り餅を使っているが、もちろん、つきたての餅があれば最高だ。
まずは、餅を塩とオイルで食べる。
一般的にはしょうゆやきなこで食べると思うが、この「塩+オリーブオイル」という組み合わせで食べると、餅本来の味がダイレクトに感じられるうえに、一気に洋風に変化し、なんだかちょっと高級感も出るのだ。
<材料(1人前)>
切り餅 2個 / 塩 適量 / エクストラ・バージン・オリーブオイル 適量
(1)切り餅をごく薄く焦げ目がつくまで焼く
(2)(1)をお湯に2分つけて、軟らかくしてから引き上げる
(3)(2)を皿に置き、エクストラバージンオリーブオイルをまわしかけ、塩を振る
次も洋風レシピだ。
これは、イタリアンのシェフから教えてもらった。イタリアのラツィオに伝わる伝統的かつ非常にシンプルなチーズのパスタ「カッチョ・エ・ペぺ」を餅で再現する。これは、食事にはもちろんだが、小ぶりの餅で作れば、赤ワインにぴったりのおつまみにもなる。
<材料(1人前)>
切り餅 2個 / パルメザンチーズ 大さじ4 / バター…10グラム / 塩 適宜 / 黒コショウ 適量
「カッチョ・エ・ペぺ」は本来、「ペコリーノ・ロマーノ」という羊乳からできるチーズを使用するのだが、日本ではチーズ専門店にいかないと販売していないことが多いので、ここは手軽さを優先して、筒入りのパルメザンチーズで代用する。もし手に入れることができれば、ぜひ「ペコリーノ・ロマーノ」の塊を削ってたっぷりと餅にかけてみてほしい。ほっぺの落ちるおいしさである。
(1)切り餅を3等分に切って、ごく薄く焦げ目がつくまで焼く
(2)(1)をお湯に1分つけて、軟らかくしてから引き上げる
(3)バターは熱して溶かしておく
(4)(2)の餅を(3)の中に入れて全体に絡ませて、皿に盛る。上からパルメザンチーズ、塩、黒コショウをふりかける
次に紹介するのは、今や定番メニューとなりつつある「餅ピザ」だ。あまりによく見かけるようになったので、気になって発祥を調べてみたのだが、誰が言い出しっぺなのかは判明しなかった。
具材を乗せて焼くだけなので簡単だし、なにより見た目の華やかさが、お正月のめでたいムードにもぴったり。ぜひ三が日などで人が集まる際に試してみていほしい。米国、フランス、イタリアなど、普段餅を食べつけていない海外の人たちにふるまったことがあるが、餅そのものは「なんだこれは……。おいしくない」という評価だったのが、この「餅ピザ」に関してはお代わりを繰り返していた。みんなに愛される、そんなおいしさなのだ。
<材料(2人前)>
切り餅 3個 / タマネギ 4分の1個 / ピーマン 1個 / ハム 2枚 / トマトケチャップ 大さじ4 / とけるチーズ 80g / サラダ油 大さじ1 / 塩 適量 / 黒コショウ 適量
(1)ピーマンは種をとり薄い輪切りに、タマネギは薄くスライスしておく。ハムは幅1センチ程度に切って、さっといためておく。切り餅は、厚さが5センチになるように切っておく
(2)フッ素樹脂加工のフライパン(またはクッキングシートを敷いたフライパン)にサラダ油を熱し、(1)の餅を水にくぐらせて、フライパンに並べて弱火で焼く。餅に火が通って透き通ってきたら、フライ返しで裏返して、底に押し付けるようにしながら全体的に平らになるようにならす
(3)(2)にトマトケチャップをまんべんなく塗る。その上にとけるチーズをのせ、(1)でいためたピーマン、タマネギ、ベーコンを散らす。フライパンに蓋をして、弱火でチーズがよい具合に溶けるまで加熱する
(4)塩と黒コショウを散らす
のせる具材によって洋風にも和風にもできるが、餅ピザの魅力だ。餅はコメからできているので、コメに合う食材は餅とも当然相性が良い。
<材料(2人前)>
切り餅 3個 / 納豆 3パック / 白煎りゴマ 大さじ1 / ゴマ油 小さじ1 / 長ネギ 1本 / とけるチーズ 80グラム / サラダ油 大さじ1 / 塩 適量 / 黒コショウ 適量
(1)長ネギは斜めに薄切りにして、納豆、白煎りゴマ、チーズ、ゴマ油と合わせて混ぜておく。切り餅は、厚さが5センチ程度になるように切っておく
(2)フッ素樹脂加工のフライパン(またはクッキングシートを敷いたフライパン)にサラダ油を熱し、(1)の餅を水にくぐらせて、フライパンに並べて弱火で焼く。餅に火が通って透き通ってきたら、フライ返しで裏返して、底に押し付けるように押しながら全体的に平らになるようにならす
(3)(2)に(1)で混ぜ合わせた具材をのせて、フライパンに蓋をして、弱火でチーズがよい具合に溶けるまで加熱する
(4)塩と黒コショウで味を微調整する
餅は、焼いてよし、ゆでて軟らかくしてよし、そして揚げてよしと、調理方法によって変幻自在に姿を変えて、違うおいしさで私たちを楽しませてくれる。最後に揚げるレシピを紹介したい。揚げたあとの油の処理が面倒だからと敬遠しがちだが、それを我慢してでも、揚げたての餅のおいしさは格別なのである。
<材料(2人前)>
切り餅 2個 / キャノーラ油 適量 / 塩 適量
(1)餅は1センチ角に切る。
(2)鍋に油を180℃に温め、(1)をくっつかないように気を付けながら入れる
(3)餅が黄色く色づいたら、取り出して、油を切る
(4)熱いうちに塩をふって全体を混ぜる
揚げたてのまだ温かい揚げ餅を塩味でシンプルに楽しむのが基本だが、もちろん、この時の塩にはこだわりたい。粒が大きすぎるととなかなか塩が揚げ餅にくっつかないので、粒が小さめで、水分量が少なくさらさらしている塩がお薦めだ。なお、マグネシウムが多い塩(にがりを多く含む塩)は、油の酸化を早める傾向があるので、揚げたてで食べる場合には問題ないが、保存をして次の日にも楽しむような時には、避けたほうが賢明だ。
揚げる油とまぶす塩を変えることで、ガラッと味わいが変わるのも、揚げ餅の楽しいところだ。イタリアン揚げ餅、中華風揚げ餅、和風揚げ餅、シナモン揚げ餅、黒糖きなこ揚げ餅など、作り方はどれも「基本の揚げ餅」と同じ。
正月に登場シーンが限定されがちな餅だが、アレンジ次第で通年楽しめる逸材だ。今年は、ぜひいろいろな形で餅を楽しんでみてほしい。
(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)
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