ナショジオ

ニュース

9千年前の奇妙な石仮面、16個目の発見 真贋は不明

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/12/15

ナショナルジオグラフィック日本版

9000年前の石灰岩の仮面。略奪対策にあたるイスラエルの政府機関によって最近発見された(PHOTOGRAPH BY CLARA AMIT, ISRAEL ANTIQUITIES AUTHORITY)

虚ろな目、歯をむき出しにした不可解な表情。イスラエル南部の砂漠で見つかる9000年前の石仮面群は、とても風変わりで、発見された数もわずか15個と極めて少ない。だからこそ先日、イスラエル考古学庁(IAA)が16番目の仮面が見つかったと発表すると、大きな注目が集まった。と同時に、従来からあった真贋(しんがん)論争にも再び火が付くことになった。

2018年11月のIAAのプレスリリースによると、この石仮面は数カ月前、同庁の盗難防止部隊によって発見されたという。仮面の発見後、ヨルダン川西岸南部のプネイ・ヘベル居住区付近に位置する「石仮面が最初に発見されたと思われる遺跡」では、考古学者らによる調査が行われている。先日開催されたイスラエル先史学会の年次総会において、IAA盗難防止部隊のロニット・ルプ氏、IAA考古学研究部長のオムリー・バルジライ氏が、仮面の初期調査の結果を発表した。

今回発見された仮面には、現在までに見つかっている他の仮面と多くの共通点がある。顔は人間のそれと同じくらいの大きさで、柔らかい石灰岩を彫って作られている。目の穴は大きく、口の線は強調され、仮面の縁には穴が穿たれている。穴は、この仮面を顔か何かに縛り付けるためのものだったと考える研究者もいる。

「実に見事な、美しい仮面です」。仮面の回収と、発見された遺跡の特定に携わったルプ氏はそう語る。「仮面を目にすれば、幸福感で涙があふれます」

■暮らし方が変化した時代?

この新石器時代の仮面は美しいだけでなく、科学的にも重要なものだ。仮面の分析を行ったバルジライ氏によると、この仮面が作られたのは、一帯の人々が定住社会を築きはじめた時期にあたるという。

「狩猟・採集に基づく経済から、古代の農業や牧畜への移行には、社会構造の変化と、儀式を行う宗教活動の急激な活発化が伴った」。バルジライ氏はプレスリリースにそう記している。

この時代を専門とする米ネバダ大学の人類学名誉教授アラン・シモンズ氏も、同じ意見だ。「人口が増えて1カ所に多くの人が暮らすようになると、何らかの社会的な統制が必要になります。そこで、より様式化された儀式活動が行われるようになるのです」。この時代に見られるその他の儀式活動の痕跡としては、人をかたどった小さな像や石膏を塗りつけた頭蓋骨などがある。

仮面の縁には穴が穿たれており、一部の研究者は、この仮面が顔や何らかの物体に縛り付けられるようにデザインされているのではないかと考えている(PHOTOGRAPH BY CLARA AMIT, ISRAEL ANTIQUITIES AUTHORITY)

■目的は不明

これらの仮面が9000年前の社会において具体的にどのような目的で作られたのかは、謎のままだ。一部には、祖先崇拝と何らかの関係があるのではないかという意見もある。

「葬儀などの儀式のためのものだったのか、それとも単なる手の込んだパーティーグッズなのか。その答えは誰にもわかりません」とシモンズ氏は言う。

ナショジオ 新着記事

ALL CHANNEL