ベルリン・フィル首席フルート奏者パユ 一流のソロ術

独ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者エマニュエル・パユ氏がソロでも活躍している。2018年に無伴奏曲集のCDを出したほか、19年12月には東京でソロ公演も開く。来日したパユ氏に世界最高峰といわれる演奏とベルリン・フィルについて聞いた。

「音符一つから息まで全部私一人の責任。体力面でも大変だった」。11月28日、サントリーホール(東京・港)の楽屋でパユ氏は自身初の無伴奏曲集のCDについて語り始めた。

大ホールで感じ取る無伴奏フルートの息と音

5月に出た2枚組CD「SOLO」(発売元:ワーナーミュージック・ジャパン)。バロック期のテレマン「無伴奏フルートのための幻想曲」から武満徹氏らの現代音楽に至るまで単旋律を吹き続けるアルバムだ。

世界最高峰といわれるフルート奏者のエマニュエル・パユ氏(11月28日、東京都港区のサントリーホール楽屋にて)

17年11月、東京オペラシティコンサートホール(東京・新宿)で一人だけのコンサート「SOLO」を開いた。「大ホールで1600人もの聴衆が、私の吹く息から出る音を感じ取る。音楽の力を実感した。CDは学生時代から吹いてきた独奏曲と、東京オペラシティでの演目を集大成した内容になった」。19年12月2日には同ホールで「SOLO Vol.2」を開く。「第1回に負けない集中力と印象深さを持つ公演にしたい」と抱負を語る。

1970年スイス・ジュネーブ生まれのパユ氏は89年の神戸国際フルートコンクール、92年の最難関のジュネーブ国際音楽コンクールでともに第1位となった。92年に当時クラウディオ・アバド氏が首席指揮者・芸術監督だったベルリン・フィルに入団。翌93年には同フィル首席フルート奏者に就いた。

「ベルリン・フィルで首席になる際、歴代奏者について考えた。(英・北アイルランド出身の)ジェームズ・ゴールウェイ氏、(スイス出身でパユ氏が師事した)オーレル・ニコレ氏、遡ればデンマークのカール・ヨアヒム・アンデルセン。皆個性が強い。ドイツの伝統を必ずしも継承してもいない。ならば私もありかなと思った」

ペトレンコ指揮ベルリン・フィルの幸せな時間

ベルリン・フィルは英国のサイモン・ラトル氏が首席指揮者・芸術監督を務めた16年間を6月に終えたばかり。ロシア出身のキリル・ペトレンコ氏が同職を引き継ぐのは2019~20年シーズンだ。

「今は首席指揮者がいない移行期。ただ、以前にペトレンコ氏の指揮で演奏した際は、幸せな時間を持てた。終身指揮者・芸術監督のヘルベルト・フォン・カラヤン氏が89年に亡くなり、アバド氏の時代に私は入団した。それからラトル氏が来て新たな演目を開拓した。これまでもそれぞれの変化が明らかになるには時間がかかった。今回も少し時間をいただきたい。ベルリン・フィルで演奏できる喜びは変わらない」

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

「ビジュアル音楽堂」は本稿が最終回です。2016年2月から計159回にわたる連載のご愛読ありがとうございました。
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