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パーム油増産で消える熱帯雨林 森林の保護・共存探る

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ナショナルジオグラフィック日本版

世界的にパーム油の需要が増え、今や世界全体で消費される植物油の3分の1がパーム油だ。一方で、パーム油の増産が熱帯雨林を減少させていることはよく知られる。ナショナル ジオグラフィック日本版2018年12月号では、中部アフリカのガボンと、アジアの取り組みを取材した。パーム油生産と森林保護は共存できるのか? 持続可能性の答えを探っている。

◇  ◇  ◇

勢いよく茂った葉の付け根に、赤い果実を大きな房状につけるアブラヤシは、古くから人間に利用されてきた。果実を煮てたたき潰せば、食用油が得られるし、種子(パーム核)の殻は燃料になる。葉を編めば、屋根もふけるし、籠も作れる。しかし、アブラヤシから作られるパーム油の利用が、数十年前から爆発的に増えてきている。用途が広く、滑らかな質感が人気を集めているのだ。その上、生産性が高く、同じ量の油を生産するのに、大豆などほかの油糧作物に比べた場合、半分の農地で済む。

パーム油は、インドなどでは調理油として一般的だし、クッキーやピザ生地、パン、口紅、せっけんなど、原材料にパーム油が入っていないものを探すのは難しいほどだ。環境にやさしいとされるバイオディーゼル燃料にもパーム油が使われている。

世界的に見て、パーム油の需要は高まり続けている。最大の消費国はインドで世界全体の17%を占め、後にインドネシア、EU(欧州連合)、中国が続く。2018年の世界の消費量は6550万トンになると予測され、1人当たりに換算すると、約9キロを使う計算だ。

森林伐採とアブラヤシ栽培

膨大な需要が自然環境を大きく損なってきている。東南アジアのボルネオ島では、1973年から4万平方キロを超す熱帯雨林が伐採されて焼き払われ、アブラヤシ農園に変えられてきた。2000年以降に限れば、消失した森林の半分近くがアブラヤシ栽培のためだった。

森林伐採で、絶滅が心配されているボルネオオランウータンは、1999年から2015年までの間に15万頭近くも減った。伐採は気候変動も加速させている。インドネシアが排出する温室効果ガスの半分近くは、森林伐採をはじめとする土地利用の変化によるものだ。同国で頻発する森林火災と煙霧には、アブラヤシ農園を造るために火を放たれたものが多い。

こうした環境破壊を防ごうとする取り組みが、中部アフリカのガボンで始まっている。例えば、オラム社のアブラヤシ農園では、楽園とも呼べる原生林が消滅するおそれはないだろう。なぜなら、ガボン政府はこの森を保護することを条件に、同社にアブラヤシの栽培を許可したからだ。

「私たちがガボンで探っているのは、森を失わずに、アブラヤシ栽培と農業と森林保護が共存できる方法です」と話すのは、ガボン国立公園局を率いる保全生物学者のリー・ホワイト。人口200万人足らずのガボンは、農業の大規模化に向けて動き始めたところだ。政府は科学的な調査結果を基に、国内の広大な森林のうち、保護すべきところと、アブラヤシの栽培に利用できるところを見極めようとしている。

急拡大したアブラヤシ栽培

パーム油の二大生産国はインドネシアとマレーシアだが、代表的なアブラヤシであるギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)はアジアではなく、アフリカの中西部が原産だ。この地域の森林を流れる小川の底からは、3000年前のアブラヤシの果実が出土したこともある。19世紀、英国の貿易商たちはせっけんやマーガリン、ろうそくなどを作るため、アフリカ産のパーム油を輸入していた。さらに、パーム油からグリセリンを取り出す方法が発見されると、医薬品、写真フィルム、香水、さらにはダイナマイトまで、用途が大幅に広がった。

1970年代まではボルネオ島の4分の3は緑豊かな熱帯雨林に覆われていた。しかし、世界的にパーム油の需要が高まってくると、複数の企業によって森林が焼かれ、アブラヤシ農園が造られるようになる。食品に含まれるトランス脂肪酸の健康への悪影響が指摘され(多くはパーム油で代用が利く)、バイオディーゼル燃料の需要が高まったことも、栽培に拍車をかけた。2000年代初頭には、ボルネオ島の平地や泥炭地に広がっていた広大な森林がアブラヤシ農園に姿を変えた。

この頃には、森林破壊に反対する自然保護団体の圧力が強まってくる。世界自然保護基金(WWF)は、パーム油の製造・販売に関係する大手企業と協力して「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」を設立し、責任あるパーム油生産の基準づくりに着手した。RSPOに認定された農園は、「原生林、あるいは生物多様性(絶滅危惧種など)の集中度が高い地域、生態系が脆弱な地域」を開墾してはならない。また、土壌の浸食を最小限に抑え、水源を保護しなければならない。労働者には最低賃金を保障し、「自由意思で、事前に十分な状況説明をした上での同意を」地域社会から取りつける必要もある。

現在、RSPOの認証を受けたパーム油は世界の供給量の5分の1ほど。ユニリーバやネスレ、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など、パーム油に大きく依存する消費財メーカーは、数年以内に認証パーム油だけを使うように、原材料の供給体制を見直すと約束している。大きな前進だが、十分ではない。

政府はどこまで介入できるか

パーム油の生産に関する議論において、絶対に必要なのに、決定的に欠けているものがある。それは、生産国における政府の介入だ。

ボルネオ島北部に位置するマレーシア領サバ州で、野生動物を苦労せずに見たいなら、キナバタンガン川がいいだろう。観光客はボートに乗ったまま、ボルネオゾウやテングザル、サイチョウ、時にはオランウータンまで見ることができる。ブーツが泥だらけになる心配もなく、開けた場所で存分に観察できるのは感動的だ。

だがなぜ、野生動物を簡単に見ることができるのか? それは、動物たちの生息できる場所がほかにないからだ。川の周囲に何キロにもわたって広がっていた森林は跡形もなく切り倒され、代わりにアブラヤシが植えられた。

サバ州の森林保護を主導してきたのは、最近まで州政府の林業局のトップだったサム・マナンだ。サバ州の保護区が過去10年間で州の面積の12%から26%に増えたのは、マナンの尽力によるところが大きい。彼は2025年までに、この割合を30%にまで増やし、自然公園や保護区、州有林と、さまざまな木を植えた地帯をつないで、動物が自由に歩き回れるようにしたいと考えていた。

島最大の木材の積み出し港として栄えたサンダカンの町に、マナンを訪ねた。社交的でいたずら好きそうな彼は、「アブラヤシがなければ、サバ州の自然保護は頓挫します」と言い、パーム油生産者との協力が不可欠だと考えていた。サバ州政府の最大の財源は石油産業だが、パーム油はそれに次ぐ規模だ。「産業界から自然保護の資金を調達するのです」

確かに、パーム油はサバ州に経済的な恩恵をもたらした。道路が舗装され、学校の設備が改善され、衛星放送が見られるようになった。州都であるコタキナバルには新しいショッピングモールがいくつもオープンし、高級ブランド店が軒を連ねる。

サバ州は2025年までに州内すべての生産者にRSPO認証を取得させたい考えだが、どのように目標を達成するかは、まだはっきりと決まっていない。「飛びながら飛行機を組み立てるようなものです」とマレーシア人活動家のシンシア・オングは話す。マレーシアのNPOワイルド・アジアは、キナバタンガン川流域などの数百軒の小規模農家をいくつかのグループに分けて共同で認証を受けさせ、認証済みの搾油工場にアブラヤシの果実を販売できるようにしている。

(文 ヒラリー・ロズナー、写真 パスカル・メートル、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック日本版 2018年12月号の記事を再構成]

[参考]ナショナル ジオグラフィック日本版2018年12月号では、ここで紹介した「パーム油と森林保護」のほか、紀元前の聖書を含んだ写本群「死海文書」など聖書の歴史をひもとく古代の写本を探す「古代の聖書を探せ」、シリーズ鳥たちの地球では、千歳川のほとりの森で人間と鳥との距離を考える「北海道 鳥を待つ森」、トランプ政権で縮小される保護区を巡る「米国西部は誰のもの?」、「パタゴニアのピューマ」を掲載しています。

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