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パーム油増産で消える熱帯雨林 森林の保護・共存探る

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/12/9

ナショナルジオグラフィック日本版

マレーシア(東南アジア) 収穫されたアブラヤシの果房が搾油工場へと運ばれていく。アブラヤシは油糧作物のなかで、単位面積あたりの油の収量が最も多い。急増する需要を満たすため、2大生産国であるインドネシアとマレーシアでは、森林が消え、野生動物が減っている(PHOTOGRAPH BY PASCAL MAITRE)

世界的にパーム油の需要が増え、今や世界全体で消費される植物油の3分の1がパーム油だ。一方で、パーム油の増産が熱帯雨林を減少させていることはよく知られる。ナショナル ジオグラフィック日本版2018年12月号では、中部アフリカのガボンと、アジアの取り組みを取材した。パーム油生産と森林保護は共存できるのか? 持続可能性の答えを探っている。

◇  ◇  ◇

勢いよく茂った葉の付け根に、赤い果実を大きな房状につけるアブラヤシは、古くから人間に利用されてきた。果実を煮てたたき潰せば、食用油が得られるし、種子(パーム核)の殻は燃料になる。葉を編めば、屋根もふけるし、籠も作れる。しかし、アブラヤシから作られるパーム油の利用が、数十年前から爆発的に増えてきている。用途が広く、滑らかな質感が人気を集めているのだ。その上、生産性が高く、同じ量の油を生産するのに、大豆などほかの油糧作物に比べた場合、半分の農地で済む。

パーム油は、インドなどでは調理油として一般的だし、クッキーやピザ生地、パン、口紅、せっけんなど、原材料にパーム油が入っていないものを探すのは難しいほどだ。環境にやさしいとされるバイオディーゼル燃料にもパーム油が使われている。

世界的に見て、パーム油の需要は高まり続けている。最大の消費国はインドで世界全体の17%を占め、後にインドネシア、EU(欧州連合)、中国が続く。2018年の世界の消費量は6550万トンになると予測され、1人当たりに換算すると、約9キロを使う計算だ。

■森林伐採とアブラヤシ栽培

膨大な需要が自然環境を大きく損なってきている。東南アジアのボルネオ島では、1973年から4万平方キロを超す熱帯雨林が伐採されて焼き払われ、アブラヤシ農園に変えられてきた。2000年以降に限れば、消失した森林の半分近くがアブラヤシ栽培のためだった。

森林伐採で、絶滅が心配されているボルネオオランウータンは、1999年から2015年までの間に15万頭近くも減った。伐採は気候変動も加速させている。インドネシアが排出する温室効果ガスの半分近くは、森林伐採をはじめとする土地利用の変化によるものだ。同国で頻発する森林火災と煙霧には、アブラヤシ農園を造るために火を放たれたものが多い。

こうした環境破壊を防ごうとする取り組みが、中部アフリカのガボンで始まっている。例えば、オラム社のアブラヤシ農園では、楽園とも呼べる原生林が消滅するおそれはないだろう。なぜなら、ガボン政府はこの森を保護することを条件に、同社にアブラヤシの栽培を許可したからだ。

「私たちがガボンで探っているのは、森を失わずに、アブラヤシ栽培と農業と森林保護が共存できる方法です」と話すのは、ガボン国立公園局を率いる保全生物学者のリー・ホワイト。人口200万人足らずのガボンは、農業の大規模化に向けて動き始めたところだ。政府は科学的な調査結果を基に、国内の広大な森林のうち、保護すべきところと、アブラヤシの栽培に利用できるところを見極めようとしている。

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