佐藤 日本の国内線は羽田空港の発着枠が限られているため、少ない便数で大量輸送をしなくてはいけない。だから大きな旅客機が求められるんです。

貞平 確かに海外で国内線に乗ると、日本より小さな旅客機が多い気がします。

佐藤 日本では多くの人を乗せたいから777を使いたいんだけど、初期の200は旧式化しているので、新型に変える必要がある。そうなると200ERを選ぶしかない。そこであえてパワーを抑えたエンジンを取り付けて国内で200ERが飛んでいたりする。もちろんエンジンが違うだけだから、見た目じゃまったくわかりません。そういうややこしさがあるわけです。

貞平 確かにややこしい(笑)。

佐藤 一部の航空ファンにとっては、そういうところが楽しいんですけどね(笑)。ただ航空会社がそれを一般の乗客に説明する必要性があるかというとまったくない。だから、こういう細かなところまではホームページには記載されていないことも多いんです。

航空会社で呼び方が異なる?

貞平 エアバスも「A320」と書いている会社と「A320-200」と書いてある会社がありました。

佐藤 通常、機種名に続くダッシュ以下の数字は胴体長の違いを表すことが多いのですが、エアバスA320の場合はエンジン性能の違いなどを示しているにすぎないので、ダッシュ以下を省くケースが多いんです。A320-200に関しては、A320-100は初期にわずかな数が造られただけなので、現在、日本で使われているのはすべてA320-200になります。ちなみにA320ファミリーの場合、胴体の短い順から、A318/A319/A320/A321と機種名も違います。

貞平 エアバスA320にはneo(new engine option)かceo(current engine option)という違いもありますね。

佐藤 それもエンジンの違いですね。neoのほうが新型です。エアバスとneoを導入した全日空は、以前の機種をceoと呼んでいますが、他の航空会社はceoという呼び方をしていないので、これもややこしい。neoのことを「A320-200N」としたりする場合もあるんです(笑)。

貞平 誰かが決めてくれればいいのに。

佐藤 そういう意味では、当社が毎年発行している『日本の旅客機』というムックを一つの基準としていただけるかもしれません。ただ、うちの書籍の多くはあまり安くないんですね(笑)。そこで、お小遣いの少ない学生さんなど、これから飛行機について知りたい人に向けて入門編として出したのが、貞平さんが読んでくださった『旅客機型式ハンドブック』なんです。

佐藤さんが編集を担当した『旅客機型式ハンドブック』は入門書として最適。博物館などにも置かれ、人気があるそうです(写真 加藤康)

機種を知っていると旅が快適に?

貞平 それにしても機種の違いって奥が深いですね。飛行機が好きだけど、あまり知らなかったなと反省しています。

佐藤 鉄道ファンに乗り鉄や撮り鉄があるように、それぞれの楽しみ方があっていいと思います。みんなが機種に詳しくなる必要はないですから。旅客機に関してはボーイング機とエアバス機が大きなシェアを占めていて機種もどんどんしぼられる傾向があるし、もっとわかりやすいカラーリングの違いなどを楽しんでいる航空ファンのほうが主流じゃないでしょうか。ただ機種について基本的なことを知っていると得をすることはあるかもしれません。

貞平 得するなんてこと、あるんですか?

佐藤 貞平さんは旅客機で席を取るとき、どこを選びます?

貞平 私は窓側です。いつも黒い布を持っていって、それを頭からかぶって、機内の明かりが入らないようにして外の写真を撮っています(笑)。

「飛行機では私は窓側の席を選びます。黒い布を頭からかぶって……」と語る貞平さん(写真 加藤康)

佐藤 うちのカメラマンと同じですね(笑)。確かに飛行機が好きな人は窓側に座る場合が多いんですが、ビジネス利用の場合、多くの人が通路側をまず選ぶんです。トイレに立つとき、隣の人に気兼ねすることはありませんから。反対にいちばん人気がないのが3人掛けの真ん中の席です。

貞平 窓の外も見えないし、トイレにも立ちづらい(笑)。

佐藤 それに横一列の座席数が多い旅客機は正直、狭いんですよ。国内線の場合、ボーイング777は3-4-3で10席、ボーイング787が9席が主流ですから。その点、767は2-3-2の7席が標準。広いし、真ん中の席も1列に1つしかない。767はそれなりに大きいので羽田-福岡や羽田-札幌など幹線に入る可能性もある。だから、僕は前の便がトリプル(777)で、次の便が767の場合、1時間程度の違いなら767を選ぶことがあります。そちらのほうが快適ですからね。

今回参考にさせていただいた『旅客機型式ハンドブック』と『日本の旅客機2018-2019』をもって佐藤さんと記念撮影(写真 加藤康)

2019年の注目機種は?

せっかくの機会なので、佐藤さんにこれから日本に入ってくる注目機種を聞いてみます。「国内線ではJALが導入予定のエアバスA350WXBですね。国際線ではANAが東京~ホノルル線にエアバスA380を導入する予定ですが、それと並ぶ注目機種です」

2019年度中にJALが国内線に導入予定のエアバスA350WXB。「旅客機型式ハンドブック」には「新しいけど堅実」な飛行機だと書かれていました

実は私、海外でA380には乗ったことがあるのです。だからA350WXBにぜひ乗ってみたい。JALに時期を確認したところ、「2019年度中に導入予定」という答えが返ってきました。今から楽しみです。

ちなみに「今のうちに乗っておいたほうがいい旅客機は?」と聞いてみると、「サーブ340B」というお答えでした。「小型プロペラ機の種類は世界的に減る一方ですし、サーブ340Bは退役も近いですから」とのことでした。日本では奄美群島を始め西日本各地を結ぶ日本エアコミューターと北海道エアシステムが使用しています。

佐藤さんが「今のうちに乗っておいたほうがいい」というサーブ340B(写真上は北海道エアシステム、下は日本エアコミューター提供)

あらためて『日本の旅客機』に載っている機種を確認してみると、私が作ったリストに載っていなかったのは、佐藤さんが教えてくれたボーイング777-300ER、777-200ER、そしてエアバスのA320neoとA321neoの4つでした。合わせると25機種ということになります(ボンバルディアDHC-8-Q400とDHC8-Q400CCは1機種として数えました)。

私が個人的に今一番乗りたいのは、新中央航空が運用しているドルニエ228-212。調布空港から大島や新島などを結んでいる路線なので、観光旅行でいつか乗りたいとチャンスをうかがっているところです(もちろん観光のメインイベントは「ドルニエ228-212に乗る」なんですけどね)。

今いちばん乗りたいドルニエ228-212(新中央航空提供)

みなさんが乗ったことがある機種はいくつあったでしょうか。離島を結んでいる路線に乗る機会が多い方は、乗ったことのある機種数、けっこう稼げているかもしれませんね。羨ましい。

ビジネスやプライベートで旅客機に乗るときには、「きょうの機種は何かな」と、ちょっとだけ注目してみてください。

それでは、みなさんすてきな空の旅を!

貞平麻衣子
 1981年3月16日生まれ、O型。元地方局アナウンサー。現在はホリプロに所属し、NHK-FM『クラシックカフェ』等を担当。趣味は、飛行機と愛犬とビールと旅。一人旅でアマゾン川のピラニアを釣ったり、愛犬を連れてパリに行くなど、大の旅好きでもある。