働き方・学び方

キャリアの壁をどう破るか

「100年着られる洋服」 作り手の喜びを買い手にも WEF名誉会長・尾原蓉子氏×デザイナー・皆川明氏

2018/12/5

対談に臨むWEF名誉会長の尾原蓉子氏(左)とデザイナーの皆川明氏

ファッションビジネスの世界で長年活動してきた尾原蓉子氏が、関わりの深い経営者やデザイナーらとの対談を通じ、キャリアの壁をどう破るかを探っていく連載。最終回となる4回目はものづくりへのこだわりが詰まったブランド「ミナ ペルホネン」を展開するミナ(東京・港)の皆川明社長と、仕事との向き合い方について語り合った。

■主流の反対側にも答えがある――慣行の壁

――素材から手作りをするなど、ファッション業界の主流とは一線を画す皆川さんのスタイルに、尾原さんもずっと注目してきたそうですが、どのような考えが基本にあるのでしょうか。

皆川明
1989年、文化服装学院卒業。95年に服飾ブランド「ミナ」を設立、2000年直営店をオープン。03年ブランドを「ミナ ペルホネン」にあらためる。06年に「毎日ファッション大賞」の大賞を、16年には芸術選奨新人賞をそれぞれ受賞。生地からデザインする服やインテリアは高い評価を得ている。

皆川 ファッション業界では、安い労働工賃で大量生産し、期末にセールをして廉価で大量販売するのが大きな流れとなっていますが、それは私たちの目指す価値基準ではありません。セールをしない、国内で生産する、素材を吟味して作る――これは、労働にもしっかりと価値をつけて経営の健全性を持たせたいからです。良いデザインとは、消費者だけにメリットがあるのではなく、それを作るプロセスの中で良い労働が生まれ、作り手も生活の糧と作る喜びが得られるものだと思うのです。

これは、今の市場経済の大きな方向性とは逆を行きますが、その分、競争がほとんどなく、私たちの方法論を貫きやすい。何も隠すことがないので、お客様に知っていただくときにも楽な気持ちでいられます。

尾原 競争が少ないとのことですが、作る人も、消費者も、社会環境もみんなハッピーになる行き方は素晴らしいし、同じようなことを試みる人も多いはずです。しかし、それが長続きしない理由はどこにありますか。

皆川 1つには、素材づくりから自分たちで受け持つと、それだけ時間と労力とマネジメントが増え、プロセスが複雑になるからです。また、人は多くの場合、過去の事例を参考にしてしまいます。アパレルや小売りが大きな利益を享受し、上流工程の作り手はギリギリの採算といういびつな利益分配を「そういうものだ」と思い込み、自社の利益を多く集める方向へと流れてしまう。そうではなく、他者の利益はお互いに共存するための大事な要素だと捉えて尊重する意志さえ持てば、必然的に相手から信頼されます。信頼があれば、作りやすい環境が手に入り、そこから良いものが生まれ、競争力があるから、よく売れる。それを信じて実践するだけです。

私は、物事を解決する方法論は1つではなく、多数派が支持する答の反対側にも別の答があると思っています。実証されたものに集中するのではなく、その逆を進んで、自分で答えをつくったり、わからなかったことを解明していくのは、とても面白いことです。

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