日経ウーマン

2018/12/6

オトナのスキルアップ入門

脳のポテンシャルをとことん引き出すには勉強していないときの過ごし方が鍵

勉強効率は、勉強以外の時間をどう過ごすかでも変わる。脳のパフォーマンスを最大限に高めるには、朝からしっかり食べ、適度に運動し、たっぷり眠り、たばこやお酒を控えることが重要。どれも当たり前のことのようだが、そこには脳科学に基づいた明確な理由がある。脳にいい、「勉強していない時間」の過ごし方を知ろう。

1 脳のエネルギー補給に朝食は必須

脳が活動するためのエネルギーは主にブドウ糖だが、ブドウ糖は体内に貯蔵できず、不足しがち。特に朝、寝起きの脳はエネルギーが欠乏した状態。午前中から集中力を高め、効率良く勉強するには、朝食をしっかり食べて脳にエネルギーを補給することが不可欠。

脳を働かせるには朝食は必須(写真はイメージ=PIXTA)

2 30分の有酸素運動が海馬の神経を増やす

脳の働きを良くするには、運動も重要。海馬の神経細胞を発達させるたんぱく質「BDNF(脳由来神経栄養因子)」は、運動によって増えるためだ。BDNFを増やすには30分程度の軽い有酸素運動が効果的。過度な運動は脳組織を壊す活性酸素を発生させるため要注意。

3 睡眠は記憶定着と脳のゴミ掃除の時間

睡眠には記憶の定着に加え、脳を使うことで生じる老廃物(ブドウ糖の燃えカス)を排出する役割も。「脳の老廃物は睡眠中にしか排出されない。寝不足続きだと脳は老廃物でゴミ屋敷状態になり、働きが落ちる」。勉強効率を上げるため、毎日最低でも7時間は眠ろう。

4 酒とたばこは脳を直接傷めつける

たばこのニコチンと、アルコールを体内で分解するときに合成される有害物質・アルデヒドは、共に脳組織を損傷する。長期にわたる飲酒習慣は前頭前野を萎縮させることも分かっている。お酒で赤くなる人はアルデヒドを処理できない体質のため、特に飲酒を控えて。

瀧教授は英語を勉強中

Q1.きっかけは?
A リスニング力不足を実感
英語は研究上の公用語。論文の読み書きや日常会話は問題ないが、「外国人のジョークが理解できないことなどもあり、リスニングへの苦手意識をなくしたいと思ったのが、英語の勉強を始めたきっかけ」。

Q2.目標は?
A 海外でストレスなく話す
海外でも日本にいるのと変わらないくらい、ストレスなく会話できるレベルを目指す。「研究者仲間との意見交換やコミュニケーションをより深めたいし、トラブルが起きた場合のクレーム対応力も磨きたい」。

Q3.勉強方法は?
A 英語のシャワーを浴びる
科学系の英語ニュースをPodcastで繰り返し聞き、自宅では英語の動画を常に流し、「脳が英語漬けになる環境」に身を置く。外国人と話す機会があれば積極的に会話し、学びをアウトプットして脳に定着させる。

Q4.勉強のタイミングは?
A すきま時間を徹底活用
移動中、皿洗い中、洗濯物を干す間など、10分程度のすきま時間が主な勉強タイム。「アスリートの筋肉同様、脳は1日でも休ませると、やる気を取り戻すのに時間がかかる。家族旅行中でも勉強は休みません」。

Q5.習得の極意は?
A 勉強は「夢へのパスポート」

勉強を「自分を夢に導いてくれるもの」と捉えること。「私には大好きな昆虫の博物館をつくるという夢があり、英語の勉強もその夢へのひとつの過程と思っているので、ストレスなく楽しく学べています」。
瀧 靖之さん
東北大学加齢医学研究所教授。脳のMRI画像を用いて、脳の発達や加齢のメカニズムを解析する脳医学者。最新の知見を基に、脳を生涯健康に若々しく保つ生活習慣を提案する。著書に『「脳を本気」にさせる究極の勉強法』(文響社)、『生涯健康脳』(ソレイユ出版)など。

(ライター 籏智優子)

[日経ウーマン 2018年10月号の記事を再構成]