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転機の1つが1stシーズンの氷帝キャスト。加藤和樹(センター)はオーディション時既に跡部景吾役になりきっていたという。斎藤工(左から3番目)は「色っぽさ」が印象的だったとか (C)許斐 剛 TK WORKS/集英社・テレビ東京・NAS(C)許斐 剛/集英社・マーベラス音楽出版・ネルケプランニング

人気を決定づけた最初のターニングポイントは05年8月。本公演7作目のミュージカル『テニスの王子様』~The Imperial Match 氷帝学園でデビューした加藤和樹や斎藤工の役へのハマり具合が大きな話題を呼び、チケット争奪戦に発展。これまでにない『テニミュ』旋風を巻き起こした。「氷帝公演はもともと原作でも人気が高いお話だったんですが、柳浩太郎さんや城田優さんらの人気の高まりに加えての氷帝キャストのデビュー。これが大きな波となりました」。

厳しいシステムで鍛え上げられた俳優たちの数は総勢300人以上。柳、城田、加藤と斎藤に加えて宮野真守、瀬戸康史、古川雄大など、その後も幅広い分野で活躍する俳優を多数輩出し、「若手俳優の登竜門」といわれるまでに。

キャストを見つけるには「とにかく丁寧にオーディションをするしかない」と野上氏。人気に火がつき、各芸能事務所が若手を推薦してくるようになっても、「決め打ちしない」のが大原則。「『一度オーディションを受けてみませんか?』というお願いをしています」。

代わりに、『テニミュ』メンバーに入ったからには徹底的に鍛え上げ、卒業後も条件が合えば別作品の提案も行うこともあるという。

「ありがたいことに、この作品で活躍した子たちがみんな魅力的であることに他社さんも気づいてくださったんです。例えば、古川さんは今では帝国劇場の真ん中に立つまでになった。彼らの活躍を見ることは代えがたい喜びです」

ライブ、映画祭など多展開

若手俳優を中心にマンガ原作でキャラクターを忠実に再現。シリーズ化や前出のキャスト卒業システムも多くの作品が取り入れているなど、『テニミュ』が作った仕組みは、今の2.5次元ミュージカルのベースにもなっている。「長期プロジェクトのつもりではありましたが、まさか15年も続くとは思っていなかった」と言う野上氏は、今なお続く『テニミュ』人気の要因について「競合が生まれてくれたからこそ」と分析する。

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学vs四天宝寺 東京公演2018年12月20~25日。以降、大阪12月29日~19年1月13日、岐阜19年1月26~27日、宮城19年2月2~3日、東京凱旋19年2月7~17日で上演。

「当初は正直、演劇として認められていないところもあったと思うのですが、今はマンガやゲームなど日本のコンテンツの魅力が改めて評価され、それらを原作とした舞台がとても増えました。他社さんもいろいろな手法で作り上げてくださったからこそ、この『テニスの王子様』という作品に今一度注目が集まったのだと思っています。この作品だけでは、絶対にここまでたどり着きませんでした。もちろん負けられないという思いもありつつ、同時に皆さんに感謝しながら走り続けたいです」

早い段階から舞台以外にも展開しているのも、『テニミュ』の強さ。初演の翌年から既にミュージカルの枠を飛び出し、『Dream Live』と銘打って公演楽曲を使用したコンサートを実施。12年には公演の映像を上映するテニミュ映画祭やキャストによる大運動会も初開催された。さらに今年11月には初の文化祭も開催した。

「普段、劇場では静かに見ているのが、コンサートなら声を出して応援できる。そういう機会はすごく素敵ですよね。今後も『テニミュ』の試みは終わりません。キーワードはいつだって“キラキラ”。応援してくださるお客様の思いを裏切らないように今後も丁寧に、どんどん広げていきたいです」

(ライター 松木智恵)

[日経エンタテインメント! 2018年11月号の記事を再構成]