なぜ佐藤は全国1位? 都道府県名字ランキングの謎編集委員 小林明

名字の分布を調べると興味深い傾向が浮かび上がる=PIXTA
名字の分布を調べると興味深い傾向が浮かび上がる=PIXTA

2018年の全国名字ランキングを明治安田生命保険が発表した。東西の地域別や47都道府県別に名字の分布を調べると、様々な興味深い傾向が浮かび上がってくる。東日本では鈴木が、西日本では田中がそれぞれ1位なのに、どうして全国では佐藤が1位になるのか? なぜ東日本には鈴木・佐藤・高橋が多く、西日本には田中・山本・中村が多いのか? 東日本よりも西日本の方が独特の分布をしている地域が多いという事実も読み取れる。

こうした趨勢を分析すれば、相手の名字から出身地を推測することも可能になるかもしれない。今回は名字のトリビアを紹介しよう。

鈴木は東日本集中、佐藤は西日本でも多い

2018年名字ランキングの一覧表は全国、東日本、西日本に分けて、推定人口が多い順に名字を並べている。それぞれ比較すると、いくつかの謎があることに気がつく。

全国ランキングでは佐藤、鈴木、高橋、田中、渡辺、伊藤、中村、小林、山本、加藤の順でトップ10が続き、東日本のトップ3が全国のトップ3に食い込んでいる。一方、なぜか西日本のトップ3は全国ランキングでは4位以下に落ちている。しかも、東日本で1位だった鈴木が全国では2位に下がり、逆に東日本で2位だった佐藤が全国では首位に入れ替わる逆転現象も起きているのだ。

なぜだろうか? これは佐藤と鈴木の全国での分布のしかたが関係している。

鈴木が多い地域は、東日本のなかでも特に東海や関東に限られている。一方、佐藤が多い地域は、東北や北海道だけでなく、中国や四国、九州にも広く点在している。つまり、東日本だけに絞ってみれば、鈴木の方が人口が多いが、対象地域を全国に広げると、逆に佐藤の方が人口が多くなるというわけ。

その証拠に西日本だと佐藤は6位に入っているが、鈴木は30位圏外(33位)で大きな開きがある。だから全国では佐藤が首位に、鈴木が2位に入れ替わっているのだ。

西日本の方が名字の種類多い 温暖・農業・大陸…

では、なぜ西日本のトップ3が全国では東日本のトップ3よりも下位にあるのだろうか?

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