日テレキャスターの婚活ノート 40代自分磨きルール
報道番組「news every.」に出演中の日本テレビ解説委員の小西美穂さん。順風満帆にキャリアを築いてきたように見える小西さんだが、40代に入ってから仕事に行き詰まりを感じ、恋愛・結婚でも悩みを抱えることに。そのモヤモヤから抜け出すきっかけが、自分磨きノート。これは後に本気の「婚活」につながる「婚活ノート」にもなった。
◇ ◇ ◇
――小西さんは40代をどのように迎えられたのですか。
私が40代を迎えたころ、仕事も恋愛もうまくいかず、「暗いトンネル」の中にいました。20代からひたすらにがむしゃらに仕事に打ち込んできて、いつの間にか恋愛から距離ができていました。そして、40代に入り仕事で行き詰まったときにハッと気付けば一人ぼっちでした。「結婚したくないわけじゃないけれど、結婚できない」という話をよく聞きますが、そんな気持ちでした。
結婚したいけれど彼氏ができない。出会いがない。付き合っても続かない。いろんな悩みがありますが、結果にはすべてに理由があるものです。「なぜ私は結婚できないのか?」と真正面から向き合ったことが、私にとっては、自分が変わる第一歩になりました。
自分が結婚できない理由を分析するなんて、ハッキリ言って、つらい作業です。目をつぶって逃げたくなります。でも、覚悟を決めて、一度真剣に向き合ってみると、状況が変わったんです。私が実践したのは、女友達を巻き込んで、正直な助言を募集すること。その最初のきっかけをつくってくれたのが、学生時代に打ち込んだラクロス部の他大学の後輩です。
女友達からの助言で始まった本気の「自分磨き」
偶然、東京で再会した彼女に自分が今置かれている状況を洗いざらい話し、弱みもさらけ出しました。「私なんて40過ぎて彼氏もおれへんし、番組に出てるというたって、こんなんでええんかなーっていつも思ってるねん……」と。すると、隣に座っていた彼女の目がキラリ。何、何? どうした? と面食らっている私の前で彼女は勢いよくしゃべり続けました。今はジュエリーを売っているが、美容全般に興味があり、かつては有名メークブランドで美容部員もやっていたので、女性として小西美穂を徹底的に磨き上げて、人生を好転させる手伝いをしたいというのです。
思えば、私は記者として政治や司法の取材をし、それなりに世の中を分かってきたつもりでしたが、美容やファッションといった自分磨きの分野については全くの未開拓状態でした。何をどう身に着ければ自分がより魅力的になるかについて、真剣に考えたことすらなかったんです。そこで「とにかく私に任せてください!」という彼女の言葉を素直に信じてついていこう、と決心。これが、以降1年ほど続く私の自分磨きキャンペーン、「ジブン大会」の始まりです。
――「婚活」というより、まず「自分磨き」に取り組んだのですね。
はい。まずはずっとサボってきた「自分磨き」に専念し、自分がどこまで変われるかをとことん追求してみることにしました。それに「大会」と名付けることで、自分が主人公になり、やる気が湧いて前向きな気持ちになりました。ポイントは楽しむこと! 自分一人だけでストイックにやるのではなくて、女友達を巻き込んでお祭り気分で楽しむんです。自分磨きのために買い物に行ったり部屋を整えたりすることで、寂しさや憂鬱も少しずつ充実の時間に変わっていきました。
何より、大事なのは周りの力を借りることでした。これまでの自分流のやり方ではうまくいかないのですから、周りの意見を積極的に取り入れなければ、よくなるわけがありません。私も素直に受け入れる心の態勢を整えました。そして、メーク、ファッション、インテリアなど「その道に詳しいプロ(セミプロ含む)」を探してアドバイスを受ける、という行動を短期集中的に徹底してやっていったのです。
小西さんがつけていた「婚活ノート」とは
美容部員出身でジュエリーショップで働いていた彼女が私の出演番組を毎回チェックして、「あの服はよくない」「髪型はこうして」「メークも変えていきましょう」と逐一教えてくれる意見を、一つひとつ、ノートに書き取りながら実践していきました。それが自分磨きに役立ち、結果的に婚活に役立つことになった、いわゆる「婚活ノート」です。お見せするのは恥ずかしいのですが……。
――拝見します。すごい! 細かい字でメークやファッションのノウハウがイラスト付きで図解されています。しかしながら、味わいのある絵も……満載ですね(笑)
そうそう、下手なイラストで恥ずかしいです(笑)。メモを取っているときは必死なんですよね。
――こちらのページには、「おかめ」風のイラストでチークの入れ方が……。反対ページには、歩き方、立ち方まで書いてありますね。あれ? 「お尻に一万円札を挟んで」というメモまで!(笑)。この細かさは、単にアドバイスをフンフンと聞いているだけの雰囲気ではないですね。
はい。まさに、取材そのものでした。
彼女は私の自宅に来るとメークボックスの中身を広げて、「断捨離」を始めました。メークはトレンドを映すものなので、旬を過ぎたメークアイテムは手放したほうがよく、かつ、年齢に合ったメークをしなければかえって老けて見えるのだと。
それから、眉山の描き方やチークの入れ方など細かいメークテクニックの直接指導。明るい印象を与える「ハッピーオーラ」を醸し出すメークのイロハを教えてもらいました。さらに、メーク前にやるといい顔のリンパ流しのマッサージ法も。「ほら、美穂さん。ここをこうやって指で軽く流すだけでも、顔の印象が変わりますよ」。当時は土曜朝の番組を担当していたので、起きてすぐのむくみ解消に役立ちました。
「じゃ、次は、いつもの洗顔をここでやってみてください」と言われてやってみると……、彼女は「ダメ!」と一喝。大して泡も立てずにゴシゴシと洗って終わり! の私の洗顔法を、「そんな洗い方じゃ、顔がシワッシワになりますよ」と正してくれました。たっぷりの泡を使って優しく円を描くように洗い、最後にタオルで拭く時も優しく……と、この日から洗顔法を変えました。
彼女の「小西美穂改造計画」は髪形にも及びました。トップにボリュームを軽く出して、前髪を軽くおでこにかけて、ニュアンスのある雰囲気にするよう、美容室でのオーダーの仕方を教えてくれました。「そんな細かくお願いしたら、美容師さんにうるさがられるんやないやろか……」と後ずさりしかけた私のつぶやきを逃さず、彼女は「大丈夫です。そうして細かく伝えるのは『美意識』の表れなんです。なんの問題もありません」と背中を押してくれました。
何から何まで必死にメモを取ったのを、今でもよく覚えています。
――ここでも小西さんの「学ぶ力」が発揮されていったのですね。
彼女がヘアメークの師としたら、ファッションの師となってくれたのは、番組の出演者に紹介していただいたスタイリストさんです。
人気女性誌で活躍しているだけあって、雑誌から飛び出してきたようなオシャレな女性です。彼女は私の事情を知ると、二つ返事で快諾。その足で、私の自宅に来てワードローブを丸ごとチェックしてくれました。
それまで、私はなんとなく買って集めた服をうまく使いこなせず、コーディネートもワンパターンになりがちでした。彼女は、「はい、これは時代遅れ」「黒ばっかりでつまらない」と使える服を選別する一方で、奥のほうに収納していたほとんど着なかったジャケットを引っ張り出し……「違うテイスト同士を組み合わせると、あか抜けた印象になるんですよ。例えば、このツイードのジャケット、ダメージ加工のあるデニムと合わせてみてください」。自分では思い付かなかった組み合わせの妙に、目からウロコが落ちるようでした。
私は結構コンサバな服も好きで、リボンやフリルが付いた服も好んで買っていましたが、彼女はズバリ一言。「美穂さん、『好きな服』と『似合う服』は違うんです」。これは大きな発見でした。なるほど。どうやら私は、少し辛口テイストも取り入れたほうが似合うのだということに気付きました。
食わず嫌いをやめたら、不安より楽しみが生まれてきた
――ファッション面でも新鮮な気付きがたくさんあったんですね。
長らく自己流で服装を決めていたので、間違った思い込みもたくさんあったようです。ジーンズにパンストははかない、圧迫感のある黒タートルネックは着ない、ペタンコ靴は履かない……と禁止事項もいくつも指示されました。
彼女と買い物ツアーに出掛けるたび、「こんなの着たことない!」という未知の世界に足を踏み入れました。長らくパンツ派だった私にとって、タイトスカートやロング丈のワンピースへの挑戦は、ちょっと勇気がいるものでしたし、「似合わない服を着て、おかしいと思われないかな?」と不安にもなりました。でも、思い切って着てみると、意外と周りは自然と受け入れてくれて、「なんか今日、いいね」と褒めてもらえることがほとんどでした。
すると、だんだんと新しい装いを試すことが楽しみになっていきます。不安よりもっと新しい自分に出会ってみたい! という気持ちが勝るように。食わず嫌いをやめてトライしてみることで、少しずつ、開放されていく私がいました。
――メークとファッションの改造の他に取り組んだことはありますか?
インテリアの師にもアドバイスをいただきました。当時北欧家具のPRマネジャーとして活躍していた友人です。
その頃、私の部屋はどちらかというと冷たく無機質な雰囲気でした。黒革のクッションや、やはり黒で直線的なラインの椅子など、スタイリッシュな雰囲気にまとめていたのです。当時の私は、なんとなく、そのほうが都会的でカッコいいのかなと思っていたんですね。
私の部屋を見て彼女は一言。「美穂さん、ちょっと硬過ぎますね。もう少し女性的で柔らかな印象にしましょう」。そこで私が思いついたのは、鈴木京香さんでした。「鈴木京香さんが暮らしているようなイメージの部屋を目指したい!」と彼女に伝えて、二人で目標を設定。妄想するだけで、モチベーションが何倍も上がりましたね(笑)。
黒い家具はある程度処分し、椅子もテーブルも白やベージュで統一していきました。「テーブルは柔らかな白がおススメですよ。テーブルに着いた時に、レフ板効果で顔色が明るく見えますからね。美穂さん、これから出会う男性を招いたときのことも考えたら黒よりも白ね!」。勉強になります(笑)。
彼女が特にこだわったのは玄関でした。「いい空気が流れる玄関をつくりましょう」と、物を整理して、スッキリとした空間に整えてくれた後、薦められて買ったのは、手織りのキリムのラグマット。白基調の空間に映える民族調の織物のデザインは、1枚あるだけで空間をオシャレな印象に引き締めてくれます。絶対に自分では選ばない、プロならではのコーディネートです。
――「その道のプロ」のアドバイスにすべて従っていったのですね。
メーク、ファッション、インテリアと、さまざまなアプローチで自分自身を改革していくプロセスは、やればやるほど楽しめるものでした。
たかが見た目、されど見た目です。どこまで自分を磨けるかチャレンジしてみようと、ゲーム感覚でやる気になれました。まさに大会。私は自分磨き選手権の優勝を目指して、ピュアな気持ちで頑張っていました。
こうしてアドバイザーとなってくれた女友達は、私の変化を喜んでくれて、この「ジブン大会」の期間にさらに女の友情が育まれたような気がします。
「もっとよくなろう! すてきになろう!」という前向きな気持ちでつながっている仲間だから、いつ会っても楽しい。内面を磨くことも大事だけれど、外見を磨くトライをすることで、こんなに世界が広がるんだ、自分に自信を持てるようになるんだと気付けたし、人生の楽しみ方が広がったような気がします。
自分磨きを成功させるための、たった一つのルール
――自分磨きを成功させるポイントは?
ルールはたった一つ、「他人の意見を素直に聞き入れて、実践すること」。
プロとまでいかなくてもいいんです。美容やファッションに敏感な友人がいたら、ぜひ巻き込んで。「遠慮なく教えて。私、どんなところを変えるべきだと思う?」と聞いてみると、結構出てくると思いますよ。「え? それは無理……」と拒みたくなる提案に対しても、一度は素直に受け入れて試してみることです。「私はこれでいいねん」と突っぱねてしまったら、それ以上の発展はありません。頑固にならないことが大事だと思うのです。
――その後、出会いが?
「ジブン大会」を始めて1年ほどたった頃、私は番組でご一緒させていただいた陣内貴美子さんの紹介で今の夫と出会いました。当時夫は31歳。私は42歳。「ジブン大会」をしなければ、彼と出会っても結婚までたどり着くことはなかったでしょうね。
アドバイザーとして協力してくれた女友達に報告すると、手放しで喜んでくれて、手作りのパーティーを開いてくれました。一緒に頑張ってくれた友人たちに祝福されることがうれしく、「自分を磨く」という目的に集中した時間が、パートナーだけでなく女友達というかけがえのない宝物を私に与えてくれたのだと気付きました。
――40代からの自分磨きで学んだことはどんなことでしょうか。
ここまで、結果的に婚活につながった私の自分磨きについてお話ししてきましたが、そもそも、結婚をするかしないかは人それぞれの選択です。結婚や出産という女性としてのライフイベントが気になる時期というのは、仕事上では新たな仕事を任されたり、急に肩書きが付いたりとステップアップの転機を迎える頃とも重なりますよね。
私がそうだったように、キャリアの勝負をかけていく時であり、その分、ストレスも多いと思います。人間関係であつれきが生じたり、仕事が思うようにうまくいかなかったりと、女の30代・40代は一筋縄ではいきません。
そんなときに大事にしていただきたいのが、一人で殻に閉じ籠もらずに、素直に周りの人の助言を聞こうとする姿勢です。人の話をちゃんと聞こうとしてさえいれば、必ず、自分のことを理解してくれる仲間がどこかに見つかるはず。それは会社の同僚でなくたって、家族や友人、恋人、誰でもいいと思います。100%自分の味方になってくれる人を大切にしておくこと。行き詰まった時には、愚痴を言い合う相手ではなく、前向きな言葉を掛けてくれる人に会いに行く。
周りの力を借りながら、今だからできることを真正面から楽しむ。まずは、誰かに会ってみる。聞く耳を持つ。行動する。この繰り返しで、人はいくつになっても成長できるし、新しい世界を開くことができるのだと確信しています。
日本テレビ解説委員・キャスター。1969年生まれ。読売テレビに入社し、大阪で社会部記者を経験後、2001年からロンドン特派員に。帰国後、政治部記者を経て日本テレビ入社。BS日テレ「深層NEWS」ではメインキャスターを約3年半務め、現在は報道番組「news every.」でニュースを分かりやすく解説。関西出身の親しみやすい人柄で支持を集める。新著の「小西美穂の七転び八起き」(日経BP社)では、自身の仕事とプライベートの転機、キャリアの行き詰まりからの脱出法などをリアルに書き、多くの働く女性から大きな共感を呼んでいる。インスタアカウントはmihokonishi69
(ライター 宮本恵理子、写真 稲垣純也)
[nikkei WOMAN Online 2018年9月25日付記事、9月28日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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