景色に温泉も… 冬こそ楽しめるキャンプ場東西10選
受け入れ側は温泉やストーブを用意し、利用者の冷えた体を温める。
初心者も楽しめるキャンプ場をランキング。東日本と西日本に分けて紹介しよう。
温泉を売りに旅館並み設備

2017年に1泊以上オートキャンプをした人は、日本オートキャンプ協会(東京・新宿)によると840万人。前年比1.2%増で、5年連続で増えた。後押しするのが「冬キャンプ」だ。同年1~3月と11、12月の計5カ月間はキャンプ用品の購入が前年同期間を上回った。冬場の幻想的な景観が人気で、同協会は「もはやオフシーズンではない」と分析する。
キャンプ場も冬場の集客に力を入れている。今回は地理的には寒冷地が多く、冬らしい情緒を楽しめる東日本の施設の評価が高かったが、経営者らの多くは「地域間競争がこれから激しくなる」とした上で「温泉があることが優位になる」と話した。各施設は旅館並みの設備をつくり、"美肌の湯"をアピールする。
「さあ冬キャンプ」と意気込んでも拙速は禁物。初めてのテント泊ならAC電源が利用できるキャンプ場を選ぼう。自宅からホットカーペット、電気毛布、電気ストーブを持ち込めば手軽に暖を取れる。テント泊での就寝はナイロンやメッシュ素材の軽量簡易ベッド(コットという)と寝袋の組み合わせが一般的。だが冬場はコットの下に断熱性の高いマットを敷いた方がいい。寝袋に入るとはいえ、マットなしでは下からの冷気で震え上がることになる。
初心者はまず標高の低い平野部から始めたい。標高1000メートル級は気温が想像以上に低く過酷だ。グループで繰り出して、だれかが体調を崩したら大勢に負担がかかる。テント泊にこだわらず、キャビンやコテージなどを利用するのも立派なキャンプだ。
雪景色と星空

標高1100メートルに位置し浅間山を目前にキャンプを楽しめることで知られ、休日は予約を取るのが難しい。冬の夜、しんしんと降り積もる雪の中、テントサイトにいると澄み切った大気で真っ青となった雪景色に息をのむ人は多い。「寒いからこそ星空の美しさも際立っている」(佐久間亮介さん)。降雪は例年だと11月中旬からという。
テント泊に自信がないという人にも対応。「コテージ8種類、キャビン16種類と豊富で全棟に薪(まき)ストーブが標準装備され、宿泊日数分の薪が付いているのも魅力。ホットカーペットや氷点下15度まで対応する寝袋などのレンタルもある」(清水聖児さん)。炊事場は給湯器付きで冬にはビニールカーテンが設置されるなど、寒さ対策が随所にみられることが高い評価につながった。利用者から困り事の相談があれば丁寧に答えるものの、スタッフからの積極的な声がけはない。必要以上に利用者に関わってくるキャンプ場も少なくない中、こんな適度な距離感もうれしい。
(1)上信越道碓氷軽井沢インターチェンジ(IC)から50分(2)テントサイトはテント1張りで3000円から(3)http://sweetgrass.jp/
区画が整然、清涼感

茨城県北部の奥久慈地方の自然を生かしたキャンプ場。アスファルトの車道や芝生のテントサイトも整然と区画整理され、日本オートキャンプ協会の全国優良施設第1位を4度獲得した。
冬場の売りはキャンプ場内にある有料温泉。売店や事務所が入るセンターハウスにあり、男女別に内湯と露天風呂を備える。「庭園に囲まれた露天風呂は季節の木々や星空を眺めることができる」(関隆嗣さん)。「寒さが苦手な人は大型トレーラーに泊まるのも楽しい」(山田敏也さん)。米国製トレーラー「エアストリーム」が人気。
(1)常磐道那珂ICから1時間(2)テント1張り2600円から(12月~翌年3月)(3)http://www.greenvila.jp/
ドーム型コテージ

雪中キャンプが楽しい。テントサイトでは冬場、タープの下でコーヒーを飲み、体を温め、雪合戦に興じる親子連れが目立つ。スノーシューやソリの貸し出しもうれしい。降雪は11月下旬から。サイトはAC電源付きでペット可のサイトとドッグランも。「売店に調味料がたくさんあるなど意外と忘れがちな必需品がそろう」(小林希さん)
「広くてきれいな温泉施設を滞在中無料で使える」(牛島義之さん)のも冷えた体にうれしい。それでもテントに尻込みする人には、かまくらのようなドーム型コテージも。
(1)東北新幹線新白河駅から無料送迎バス30分(2)ドーム型コテージは大人1人7800円から(3)http://www.ang-f-ns.com/
たき火・囲炉裏囲む

滑り台や綱渡りなどの遊具を至る所に設ける。「クリスマスをはじめイベントも満載。何をしようかと困ることがない」(豊留雄二さん)。子どもの視点での運営が特徴だ。
キャンプサイトもキャビンも種類豊富。オートキャンプには「たき火」「囲炉裏」など冬場に最適なサイトがある。2組が隣同士で泊まる「ツインキャビン"語らい"」が人気=写真。キャビン間の屋根付きテラスで夕食を囲めば親子の会話も弾みそうだ。雪は12月中旬から。
(1)東北自動車道那須ICから10分(2)ツインキャビン"語らい"は大人4人・車2台で2万円から(3)http://www.camp-cabins.com/
室内に滑り台も

名前の通りサンタクロースの世界観がコンセプトで「冬キャンプに最適のキャンプ場」(高瀬宏樹さん)だ。サイトはオートキャンプとコテージの2種類あるが、この季節はコテージに泊まりたい。「趣向は様々だが、室内にそりや滑り台、クリスマスツリーを飾った『サンタクロースの家』がおすすめ。11月上旬から1月上旬まで一部コテージに施す電飾も素晴らしい」(豊留さん)
キャンプサイトではキャンプの醍醐味であるじか火のたき火もできる。「アウトドア好きには特別な場所」(山田さん)だ。
(1)東北自動車道矢板ICから30分(2)サンタクロースの家は2万4000円から(3)https://santahills.co.jp/
海外のリゾート気分

滞在すれば冬の寒さをしばし忘れさせてくれる。キャンプ場というより上質なアウトドア空間の趣だ。「日本にいながら海外のリゾート施設にいるかのような雰囲気。インスタ映えするスポットが満載」(豊留さん)と評価する専門家が相次いだ。
特に人気なのが、施設や調度の豪華さが売り物の「グランピング」サイトだ。水上デッキに作られたオリジナルテントにはベッドやバスタブを完備。バーベキューも運営側が準備してくれる。接客もホテル並みだ。「調度品は高級ホテルで使用されているものと遜色ない。そのセンスにひかれる」(小林さん)。水辺ではカヌー遊びもできる。ぜひ夕日が沈む頃に乗りたい。
(1)近鉄名古屋駅から特急、普通電車など経由して2時間30分ほど(2)グランピングは大人2人で3万2300円から(3)http://www.everglades.jp/
アクティビティー充実

一夜を過ごせば森の住民の気分になるかもしれない。テントもコテージサイトも森を満喫できるよう設計され、みんなが寝静まるとグリム童話のキャラクターが登場しそう。年代を問わず楽しめる。
「初心者が最も気になるトイレやシャワー施設が清潔。スーパーも近く、車で30分圏内に温泉もある。冬のキャンプに最適」(上野彩子さん)。「ドラム缶風呂や石窯でのピザ作りなど子どもが喜ぶ」(吉松梓さん)とアクティビティーも評価された。人気のマウンテンバイクのコースで寒さに縮こまった体をほぐしたい。
(1)名神高速竜王ICから40分(2)フリーオートキャンプサイトでテント1張り3500円から(3)http://www.grimm-camp.com/
山や清流を身近に

三重県北部、鈴鹿山脈と清流の青川に囲まれたロケーションが魅力だ。「四季を通じて様々な景色を楽しみながら宿泊できる」(山田さん)。これからの季節、川辺のオートキャンプサイトから望む冬支度の山々と、きらきら光る青川の対比が「インスタ映えする」と人気だ。
寒さ対策も入念で「石油ストーブから湯たんぽ、カセットヒーターまでレンタルできる」(五月女真弓さん)。ただ、テントではストーブ使用は避けたい。名古屋や関西からのアクセスも良い。
(1)東名阪自動車道桑名ICから30分(2)オープンサイトはテント1張り3000円から(施設利用料大人1人1000円別途)(3)https://www.aogawa.jp/
巨大かまくらに挑戦

広島県内最大規模のキャンプ場で、山間部に立地する。11月中旬から降雪があり、西日本では珍しく雪中キャンプを楽しめる。「積雪量が多く巨大なかまくらを作るイベントが子どもに受ける。そり遊びなど冬のアクティビティーも満喫できる」(清水さん)。場内に男女別の露天風呂、近隣にも低料金の温泉施設がある。澄んだ空に星空が広がる。「雲海を見ることもできる」(五月女さん)
「近くにスーパーがあるが、生鮮食品以外は場内の売店でほぼ購入できる。コルク抜き、缶切りなどのレンタルはうれしい」(関さん)
(1)中国自動車道庄原ICから40分(2)テント1張り3800円から(3)http://www.ogidani.co.jp/
高級テントをお試し

冬季を含め、四季のアクティビティーを積極的に企画。「洞窟体験やパラグライダー、スノーピクニックまで子どもが喜ぶ企画が目白押し」(吉松さん)。オートキャンプサイトはペット可、トレーラー用などきめ細かい。
「初心者には常設テントサイトがお薦め」(小林さん)。とんがり帽子のような形で、買えば15万~30万円ほど。設置が楽で水や泥、風に強い。キャンパー憧れのテントのお試し宿泊もここならでは。雪は例年12月から。
(1)中国自動車道新見ICから30分(2)常設テントサイトは9180円から。ほかに施設管理料が大人1人108円加算(3)http://0380.jp/
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。施設名(所在地)。(1)交通手段(2)1泊の料金例(税込み)(3)施設のウェブサイト。写真は東日本2位が岡村享則、西日本1位と2位が尾城徹雄、ほかは各施設の提供。
調査の方法 専門家の協力で、初心者が冬場でも楽しめ、通年営業しているキャンプ場を全国から24施設リストアップ。専門家に「星空が美しいなど景観を楽しめる」「寒さを和らげる温泉など入浴施設が充実している」「イベントが多彩で子どもが飽きない」「公共交通機関を利用しても比較的便利。自家用車で行っても高速道路のインターチェンジ(IC)から近い」などを評価基準としてランキングしてもらい集計。東日本、西日本でそれぞれ5位ずつ振り分けた。
今週の専門家 上野彩子(温泉情報誌「ゆこゆこ」編集長)▽牛島義之(アウトドアライター)▽小林希(JTBガイアレック サン&サン事業部SIT企画開発課企画担当課長)▽佐久間亮介(アウトドアライター)▽清水聖児(編集プロダクションのフィネス社長)▽関隆嗣(アウトドア研修プログラム講師)▽五月女真弓(日本キャンプ協会)▽高瀬宏樹(日本キャンプ協会公認キャンプディレクター)▽豊留雄二(自然遊びクラブ代表)▽山田敏也(キャンプ用品販売の合同会社エアロスミス代表執行社員)▽吉松梓(新潟医療福祉大学健康科学部講師)=敬称略、五十音順
[NIKKEIプラス1 2018年11月3日付]
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