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『はじめての土偶』著者の譽田亜紀子氏。「元祖縄文女子」として執筆やメディア活動を通じて縄文文化を広めている。「土器や土偶は土に埋まっている1つの歴史で、国民の宝。先端だけを追い求めると学問が淘汰される。未来の考古学者をつくりたい」

品川氏も縄文展のヒットの理由として、「縄文が『かわいい』や『面白い』といった視点で紹介されることでより身近な存在となり、全国各地に縄文時代の遺跡があるという間口の広さも重なり、多くの方に関心をもっていただけたのだと考えています」と分析する。

「はじめての土偶」は初心者に向けて縄文土偶を紹介した書籍で、土偶のかわいさやキッチュさという新たなイメージを広めた。

縄文文化は、土器や土偶、身に着ける装飾品やポシェットなど立体的なものばかりで、絵画のような2次元のものは圧倒的に少ないとされている。

「もしエネルギーに陰陽があるとすれば、土偶から漂うものは陰ではなく陽のエネルギーだと感じる。自らの身に降りかかる理不尽なことを納得するため、見えない存在をよりどころとしていたら、それを表す土偶に負の念を込めることはないはず。今見る人が、『かわいい』『すごい』と素直にエネルギーを受け取ることが、一番縄文時代に生きた人々に近づけるのでは」(譽田氏)

縄文不人気ゆえ創刊したフリーペーパー『縄文ZINE』

縄文時代をテーマにしたフリーペーパー『縄文ZINE』は、15年に創刊された。年に2~3回の不定期発行で、創刊号は6000部だった発行部数が、博物館などにも設置されはじめ、4号からは3万部になるほど注目されている。

『縄文ZINE』の望月昭秀編集長。「ギャルと縄文」や、読モ(読者モデル)ならぬ「DOGUMO」など若い人が手に取りやすいポップな内容だ。悩みを縄文流に解決する『縄文人に相談だ』(国書刊行会)は4カ月で重版に

望月昭秀編集長は、「今回の縄文ブームのきっかけは、やはり天下のトーハクが大々的に展示したからこそ」と話すが、縄文への興味を引く一因となった自負はあるという。「読者がどんどん若年化してきた。縄文へのハードルは下げたのでは」(望月編集長)。

『縄文ZINE』は、そもそも縄文が不人気ジャンルであったがゆえに創刊に至ったという。

「縄文自体は興味を抱かれにくくスルーされがちで、創刊当時はバカにもされた。だが、入り口さえあれば、知れば絶対に誰もが面白いと思う。1万年続いた縄文時代だが、象徴となる人物など固有名詞が全くないことが他の歴史とは異なる特徴。弥生以降は、必ず中心人物にスポットライトが当たり、庶民の暮らしはサブ的存在でしかない。だが、縄文時代に出てくるものは普通の人の生活に根付いたものばかり」(望月編集長)

同じ時代にエジプトではピラミッドが建てられている。庶民の暮らしに使用された道具ばかりでは、少し寂しい気もするが。

「文明という点では見劣りするが、中央集権的な権力がまだなかった当時の日本の風土でしかこの文化は生まれなかった。普通の人の生活の息遣いが少しでも感じられるからこそ、見る人がそれぞれの見方で楽しめる。独特すぎる造形への共感性はないだろうが、何か分かる感覚が人を魅了する」(望月編集長)

エヴァと縄文土偶の共通項

立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構の中村大助教。現代美術アーティストたちと協働で「縄文茶会」などのイベントや展示で、考古学を現代文化の創造につなげる活動もしている

1万年以上前に生まれた土偶と、現代のアニメに共通点を見いだす人もいる。縄文時代の考古学を専門の一つとし、12年のMIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)「土偶・コスモス展」ではキュレーションも行った、立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構の中村大(おおき)助教だ。

中村助教は、「縄文土器よりも縄文土偶のほうが人気がある」という。「展示に来た人は『表情が面白い』『腰から脚にかけての表現がすごく洗練されている』など、人体表現に対する感想のほうが多かった」(中村助教)。

その理由として、中村助教は「日本人は感情移入ができるヒトガタに引かれるのでは。ヒトガタには『かたちのチカラ』がある」と話す。

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