Men's Fashion

50代のワードローブ スーツを軸に揃える「威厳」

How to

「適齢ワードローブ」装い術(上)

2018.10.22

MEN'S EX

年相応の装い――この言葉は決して保守的なものではない。自分の年齢にふさわしいスタイルを選ぶことが見た目にブラッシュアップされたお洒落と格をもたらす。各年代を代表する巧者たちが、経験から得たポイントをレクチャーする。

第1回は50歳代のワードローブ。

(中)40代の服装アップデート シャツで揃える「落ち着き」>>




津田京樹さん リングヂャケットマイスター 206 青山店 プレス(左)東京におけるブランドの旗艦店、リングヂャケットマイスター 206 青山店にてプレス業と販売業務を兼任している。43歳。

吉田周平さん ビームス ドレス部ディレクター(中)エレガントで落ち着いた着こなしを貫く、ビームスのコンサバ番長。ビームスドレス部ディレクター。49歳、もう少しで50歳。

藤枝惠太さん 株式会社エスディーアイ 専務取締役(右)イザイア、マリネッラなどのイタリアものを中心に、上質な海外ブランドを扱う。現在も出張で年4~5回は海外へ。36歳。

装いとの付き合い方を知り印象をブラッシュアップ

M.E. 皆さん、若い頃と比べてアイテムの選び方や着こなしなど、服装への意識はどのように変わりましたでしょうか?

藤枝 20代の頃の僕は、自分を相手に印象付けることを目的に着こなしを考えていたように思います。

津田 それは僕もありました。たとえばパーティに招待されることがあったら、周りを見ずに自己満足の追求ばかりしていた気がします。しかし、最近は相手がどういった格好で来てほしいのかという視点で服を選ぶようになりました。

藤枝 当時はジャケットに合わせるニットにしても、存在感のあるローゲージが中心でしたが、今はもっぱらハイゲージです。そのほうが相手が話しかけやすいソフトな印象を与えられますから。

吉田 確かに。私も他業種の方とお会いする機会が増えましたから、落ち着いた印象を心掛けています。

津田 そうですね。スーツでも、今は個性やトレンドを意識するよりも、相手に与える印象を優先して色や柄も選ぶようにしています。

吉田 自分もスーツの色柄やディテールにより注目するようになりました。柄モノでも、今日のような同色で表現されたマイクロハウンドトゥースなどですと、上品さとファッション性を両立させられます。仕事関係の方に勧める場合もそういった意識を大事にするようお伝えするようにしています。

M.E. トレンドもありますが、最近は一時期のようなタイトなサイズのものは少なくなりましたね。

吉田 パンツのシルエットの変化がより顕著だと思います。昔はサイドのポケットに手が入りにくいぐらいのタイトフィットが主流でしたが、今は腰回りにしっかりとゆとりあるシルエットが基本です。

津田 タイトで短丈だと辛い場面もありますよね。ですから、年齢とともにジャケットの丈が長くなり、パンツの股上も深いモノを選ぶことの良さがわかるようになるんですね。

吉田 私は威厳を出せるスリーピースを選ぶようになりました。ベストでお腹回りも隠せますし(笑)。

藤枝 とはいえ、守りに入り過ぎて着こなしが退屈になってしまってもつまりません。そんな時は色使い。昔、ナポリに住んでいたことがあったのですが、向こうの大人はシーンを意識するのが本当に上手です。タイも昼間は明るく見えるグレー、夜はフォーマルな紺を選ぶ。年を重ねた人ほど、色使いがとても巧みなんです。

吉田 色使いは大切。シャツやタイなど、ちょっと目に留まるところだけに色を加えて変化を愉しむ。

津田 なるほど、大人の洒落心ですね。同時に、季節感を意識するのも大事かと。冬場に寒々しい色やペラペラの生地では違和感があります。初秋にフラノのスーツをさらっと着ている人を見ると、お洒落だなと思うことがありますし。

藤枝 自分のパーソナリティと相手へのリスペクト。年齢とともに、この両軸を意識しながら装うことが大事。これから参考にします。