仕事は減らすな! 「時間貧乏」からの意外な脱出法臼井由妃著 「やりたいことを全部やる!時間術」

たとえば、地方に出張するとき、往復の新幹線の車内でパソコンを開いて仕事する人は多いでしょう。何もしないよりましですが、これは時間の「節約」にとどまります。将来の仕事に役立ちそうな出張先の情報を集めたり、そこでしか拾えない生のネタを持ち帰ったりすることまで視野にいれるのが「密度を高める」ことにつながると著者は述べます。同じ時間で3度も4度も「おいしい」状態をつくりだすように考えるのです。

人間関係を築く 目先の効率は非効率

著者は一方で「どんなに時間がなくても、人との出会いや付き合いを疎(おろそ)かにしない」と強調します。新しいチャンスや仕事は、全て人が運んでくるものだからです。

著者は、誰かと名刺を交換したら、その日のうちに相手の顔や会話を思い出しながら一筆箋を書くといいます。定型文であいさつのメールを送るほうが効率的なようですが、人間関係を築いていくという視点を足して考えれば、結果的には手紙のほうが「時短」になるというのです。

最近は、ビジネス文書はもちろんのこと、年賀状や暑中見舞い、転居通知などの私的な手紙までも、文面が印刷されたものを利用するケースが増えてきました。
確かにこれらは便利なのですが、これを使うことによって、一見手間が省略されたように思えても、本当はより人間関係の距離を遠くしている、人間関係を築く時間を多く必要とすることになっていることもあるのではないでしょうか。
(第2章 時間は支配したほうのものになる 79ページ)

15分以上考えるのは時間の無駄、それでも「スキマ時間」を活用するな! (メールの)「cc」が増えると生産性が下がる――。それぞれの項目は2~6ページほどの読みやすい分量で、会議やスケジュール管理からビジネスメールの工夫、睡眠や食事のとり方まで幅広く取り上げています。「忙しい」「時間がない」と、いつも嘆いている人にぜひ読んでほしい一冊です。

(雨宮百子)

◆編集者からひとこと 酒井圭子

本書は、2006年刊行のベストセラー「1週間は金曜日から始めなさい」(かんき出版)に大幅な加筆・修正を加え、文庫にしたものです。出版当時、この本にびりびりと刺激を受け、「いつか文庫に!」との思いを抱きました。それがようやくかなった形です。

ここ数年、時間術、仕事術、睡眠術、健康術がブームですが、本書はそのすべてを網羅した先駆的な一冊です。内容に古びたところはありませんでしたが、臼井さんの情熱で大幅加筆が実現しました。交流サイト(SNS)やメールの効率化、早起きの仕事術など、その分量は60ページにも上ります。ちなみに12年前は朝6時に起きていた臼井さん、今は2時起きでさらに生産性を上げているそうで、この間の進歩も反映されています。

「時間密度をあげて、心とお金に余裕を持つ」。働き方改革が叫ばれる今、ますます多忙を極めるビジネスパーソンにおすすめの決定版です。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ日本経済新聞出版社の若手編集者が、同世代の20代リーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。掲載は原則、隔週土曜日です。

やりたいことを全部やる! 時間術 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 臼井 由妃
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 864円 (税込み)

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