白河 経営と働く人の幸福の一致、すごくいい流れになってきたんですね。

前野 そう思います。逆に言うと、社員に不幸せな働き方を強いている企業は、社員も不幸だし、利益も出ない。最悪です。

白河 「会社のために我慢すれば給料は上がるから」と滅私奉公する時代は過ぎ去ったというわけですね。この最近の人事のトレンドを見ていても、あきらかに「人を管理する」から、より個人をエンパワーメント(能力開花)するにはどうしたらいいかという方向に変わってきていると思います。

前野 おっしゃるとおりで、早く乗り換えないと大変なことになります。すでに破綻しかけている企業はいくつもあると思います。

高度な知識を使う定型作業は通用しない

白河 中小企業のほうがフットワーク軽く、思考をシフトしている印象があります。大企業はどうしても遅れてしまうみたいで、仕事の中身はナレッジワークのはずなのに働き方や人事管理は定型作業のままになってしまっているところが多い気がします。

前野先生は「辻つま合わせのような働き方改革は意味がないどころか、危険だと思います」という

前野 獲得してきた高度な知識を使ってやる定型作業、みたいになっていますよね。でも、それでは通用しない時代がやってきた。

白河 一刻も早く企業は社員の幸福な働き方を設計しなければならないということが明らかになってきたわけで、社員の幸福度を上げるための手段として「働き方改革」は機能する可能性はありますよね。

でも、実は「ビジョンなき働き方改革」が横行してしまっているのではないか?というのが、私が抱いている危機感です。「残業時間が減りました!」「カッコいいオフィスを作りました!」といった数字や目に見えやすい形での改革ばかりが先行しているというか。

前野 それ、改革じゃないですよね。できることからやろう、というレベルは「改善」止まりです。ほとんどの会社のやり方は間違っていると思います。

白河 中には残業時間を減らす第1フェーズは成果を上げ始めた企業もちらほら出てきているんです。婚活女子から「白河さん、働き方改革、進んでいますよ。大手勤務の40代ぐらいの見合い相手が5時に会いましょうというんです」ですって(笑)。これはこれでいいことかもしれませんが、そろそろ第2フェーズの「その先に生み出す価値を高める」という本質的な改革まで進まないと意味がないと思っているんです。

前野 残業時間を減らす成果がそれほど出ているとはちょっと意外ですね。ただ、本当に無理のない形での残業圧縮になっているかどうかは注視しないといけないですよね。単純に無駄な作業を省いて「やればできたじゃん」という成果ならいいのですが。

白河 根本的に人が足りていなかったり、仕事全体の設計そのものに無駄が多過ぎる場合には、むやみに残業削減をするだけでは無理が生じますよね。

前野 かえってゆがみが生じているのではないかと心配ですね。頑張ってやっても22時までかかっちゃう仕事を17時までに終わらせようとすると必ず負荷がかかるので、ストレスが増大し、社員は不幸になってしまいます。すると、創造性や生産性も低下する。辻つま合わせのような働き方改革は意味がないどころか、危険だと思います。

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