都会で働くアラサー女性の、仕事とプライベートのリアルとは? 働くことへの思い、お金の使い道、愛するモノたち、友達でなければ聞けない内緒の話まで。等身大の彼女たちの素顔に、ライターの大宮冬洋さんが迫ります。
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ここは東京・新宿にある和食店。高級店ではないが、新鮮な食材を真面目に調理していてボリュームもある。
今回、食事をしながらの取材に応じてくれたのは、都内の出版社に勤める真紀さん(仮名、32歳)。中部地方の「田舎」に実家があるという彼女の、家族の「食」の話から始まった。
「朝食を食べながら、昼食や夕食を何にするかを延々と話し合うのが普通の家庭だと思っていました。『昼は焼きそばだから夜は刺し身がいいよ』『刺し身なら日本酒を買ってこないと』……みたいな内容です。でも、3年前に姉が結婚して、それが普通ではないことに気付きました」
実家の近所にある飲食店は限られており、祖父母も一緒の三世代同居の家族にとっては「家飲み」がスタンダード。「実家の焼きそばが大好きです。休日の焼きそば作りは父の仕事でした」という、食卓を愛する温かい家庭の末っ子として真紀さんは育った。「姉の旦那さんは私たちほど飲み食い好きではなく、献立の話ばかりする姉を不思議がっているそうです」
真紀さんは学生時代から一人暮らしをして、就職と同時に上京。現在は都心の賃貸マンションで暮らしている。
「立地のよさとキレイさで部屋を選びました。1Kなのですごく狭いですよ。キッチンは一応ありますが、会食が多い仕事なので何週間もコンロを使わないことがあります。いつも冷蔵庫に入っている食材は納豆と豆腐だけ。料理をするのは彼氏が遊びに来たときぐらいです。でも、実家から家庭菜園の野菜が大量に送られてくるときは、腐らせないようにどうやって使い切るかを必死で考えます」
女性同士でつるまない、海外旅行も一人で
真紀さんは出版社の編集ではない部署で働いている。裁量労働制で、勤務時間に定時はない。早朝から客先に向かうこともあれば、昼近くになって出社することもある。帰りも適当な出先を書いて「NR(ノーリターン)」と記すだけ。ただし、個人の責任は重い。
「やたらに交渉事が多い部署で、社内でも人気はありません。トラブル対応はしょっちゅうですが、私はストレスをためこまないタイプなので向いていると思います。仕事中は淡々と働き、オフになるとすべて忘れるんです。仕事がすごく楽しいわけではないし、会社に居心地のよさを感じてもいないけれど、評価はしてもらっていると思います」