画像はイメージ =PIXTA同時通訳や英語スピーキングの講演などで活躍する横山カズ氏は、国内でしかも独学で自身の英語力を鍛え上げた経験を持ちます。話し、かつ聴くことにおいて、「英語は瞬発力」というのが持論。どうすれば「瞬発力」を鍛えられるのかを連載で語ってもらいます。
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■もっとも重要な英語で「思う力」
私は究極的には「英語学習は1技能」だと考えてます。
それは、あくまで自分を主人公にして、自分の情緒や感情を「英語で“思う”力」が必要だということです。
「思う」という行為は心の中で無意識に、瞬間的に起こります。一説によれば、人間は1日10万回ほども何かを“思って”いるそうです。「考える」手前のもう一段深く心とつながっているのが、「思う」ことです。その回路と英語を音読によってつないでいきます。すると1日何千回、何万回と英語で思うことができるようになります。まずその回路を、基本的な語彙の音読によって狭く深くインストールします。英語と自分の気持ちや感情をつないで、取れなくなるようにするんです。そうして英語が使いやすくなるにしたがって、まるでお腹がすくようにより多くの英語に触れたくなってきます。パッシブな学習がアクティブな習慣に変わる瞬間です。
語彙も増え、発音などの練習にも前向きに意欲をもって取り組めます。
これはモチベーションを高く、快適に保つ大事な要素です。
英語で“思う”ことができるようになれば、無理にではなく自然と新しい単語や表現にも目が向き、覚えたくなってくるものです。それはまさに心が英語を求めている状態ですね。
“思う力” をコアとすると、”出口” が4つ(「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能)あるイメージです。
その糸口はI see ~ingだと私は考えています。簡単なパターンだと思われるかもしれませんが、その使用頻度の高さに驚いていただけるかもしれません。シンプルな単語やパターンほどまるで息をするように使用され、パワフルなものです。こうすることで自然に英語の語順にも慣れてゆくこととなります。
■「多読」は意識しなくていい
リーディングにおいても不自然な意識的努力によって「多読」「速読」などというものを行わなくとも語順に従い、英語を読むスピードも伸びてゆきます。英語の「自動化」が促進されるのですね。これは身体にインストールしてしまえば一生消えないスキルです。
この状態が味わえるようになると、自分の心に響く表現を“宝さがし”する楽しみができます。それらの自分の心とつながり合った表現は、近い将来自分の口から発せられることになるわけです。こうして自然に個性やアイデンティティが英語に乗り移っていきます。主人公はあくまで自分自身なのです。
■ロジックだけでは危険!
いわゆる「ロジック(論理的思考)」だけにこだわらず、まずは思ったことを口にできればよいのです。ロジックを過剰に意識しするあまり、ディベートやディスカッション以外のすべての会話が苦手になる、というケースがあまりにも頻発しています。最初は自由でよいのです。
瞬間的に英語を“思いつく”ためには、最初に心に響く表現を厳選して、その一つの表現を通し、できるだけたくさんの感情や思い出を去来させ、自分の置かれた情景を表現することです。そうすることによって、一つの表現でも、驚くほど多くの可能性を持つことになります。
着回しがきき、ラフに着こなせる“普段着の英語”ですね。この限られた語を状況に応じて使いまわす力が、本当に重要です。語彙を増やしていくことも大切ですが、実際に使うことができる語彙は限られています。なので、自分を主人公にして、自分の使う語彙や表現を身体にしみ込ませます。そこから上達のドアは自然に開いていきます。
■「I see」で、まずは目に見える世界を英語にできるように!
「思っていること」「目に映ること」を言えるようになる。まずはI seeに英文を続けましょう! 眼に映るものはすべて「I see」で表現できると、見たものがすぐに心の中で英語に変換されます。
このときにI seeを「~が見える」という日本語と対応させておくと効果的です。
I see+人・無生物に続けて英文を口に出せるようになれば、そのまま瞬発力になります。
まずは文字を追ってみて、さらに無生物主語で英語的発想を注入しましょう。手はじめは以下のような例文です。
机の上に私の本があるのが見える。 I see my book sitting on the desk.
他の子たち、頑張ってるなぁ。 I see the other people practicing really hard.
あの先生張り切りすぎだよなぁ。 I see the teacher trying too hard.
あの子、寝落ちしてるじゃん。 I see my friend falling asleep.
誰かが教室出ていくなぁ。 I see a man walking out of the class room.
横山カズ同時通訳者。翻訳家。英語講師。関西外国語大学スペイン語学科卒。英語を日本国内で独学し、航空、医療、ITなど多分野をこなす同時通訳者に。リクルート・スタディサプリENGLISH、学びエイド講師。楽天では「実際に役立つ」ことにこだわったスピーキング指導で英語社内公用語化に貢献した。著書に『英語瞬発スピーキング』『英語に好かれるとっておきの方法~4技能を身につける~』『パワー音読入門』など。 本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。