よく人に話しかけられます
女優、美村里江さん
人がよく話しかけてきます。旅先では外国人に道を聞かれるし、相談や愚痴を聞くことも多いです。それはまずいだろうと思う内容も打ち明けられます。正直、面倒なので放っておいてほしいのですが。強そうな顔つきなので、もっと優しい人に話せばいいのにと思います。(岡山県・女性・40代)
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面倒と言いつつ、付き合ってあげる相談者さん。お優しいですね。それでいて「強そうな顔」というご謙遜。どんなお顔立ちかたいへん気になります。
まず、人に話しかけられるのは、話しかけてもよさそうな人に見えるからです。当たり前ですが、危険そうな人、冷たそうな人には話しかけにくい。きっと相談者さんは気さくで、優しそうに見えるのだと思います。とってもいいことですね。
もう一つ、「話しかけてもよさそうな人」には定義があります。都合良く扱えそうな人です。「気さくで、優しそう」でも、お付きの人がぞろぞろいたり、忙しそうであれば、自分の都合に合わせてもらうのは悪いと感じるはずです。
相手は「この人だったら自分の時間に付き合ってくれるだろう」と踏み、相談者さんはそれをくんで相手に従っているのです。つまり、自分でそのような流れに乗っている。結果、聞くのを面倒に感じるような相談や愚痴、聞くのがはばかられる話まで「聞かせられて」しまう。
私が20代前半でやった実験を紹介します。約10年前、所属事務所がある駅の周辺。芝居の研究として数日かけて行いました。私も(正体を気づかれず)人に話しかけられるタイプです。
ほほ笑んでゆっくり歩く。真顔でゆっくり。不機嫌そうにゆっくり、ほほ笑み早足、真顔早足。不機嫌早足。これらを良い姿勢と猫背の双方で試しました。計12パターンです。
結果、ほほ笑み・ゆっくり・良い姿勢が最も声を掛けられやすかったです。親切そうで余裕があり、健康に見えるからですね。面白いのはナンパも増えたこと。「この人なら助けてくれそう」は「こいつなら軽くひっかけられる」にもつながるようです。対策としては、さらに背筋を伸ばして大股で歩くのが効果的でした。頼もしさの方を出してちょろさを消すのです。面白いほど効果がありました。
人は人を選びます。何らかの理由であなたが選ばれる。でも、自分も自分を選べるのです。
「親切で頼もしい。でも余計な話をしては申し訳ないかな」。振る舞いによっては、相手にそう思ってもらうことが可能です。望む結果になるまで、色々な自分をお試しください。
[NIKKEIプラス1 2018年10月6日付]
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