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ロシア人歌手ヴィタリ 東京に住んで日本の歌を熱唱

2018/10/6

東京在住のロシア人歌手ヴィタリ・ユシュマノフ氏(36)が日本の歌に取り組んでいる。9月に日本名歌集のCDを出し、10月には日本歌曲を含む公演も開く。ロシアの名門オペラハウス、マリインスキー劇場の一員として2008年に初来日した彼が、移住してまで日本に入れ込む理由を探った。

厚みのある低いバリトンの歌声が部屋中の床や壁を震わせる。オペラで鍛え抜かれた圧倒的な声量で彼が朗々と歌い上げたのは土井晩翠作詞、滝廉太郎作曲の「荒城の月」。9月26日に出た彼の3枚目のCDアルバム「『ありがとう』を風にのせて―日本名歌集―」(発売元:オクタヴィア・レコード)にも収録した近代日本歌曲の古典だ。CDには滝や山田耕筰、信時潔らの歌曲から文部省唱歌や現代の歌まで23曲を収めている。彼の歌を指導しているピアニストの塚田佳男氏が伴奏を務めた。

マリインスキー劇場の一員として初来日

「『荒城の月』にはストーリーがない。1枚ずつ絵を見ている感じの曲。ちゃんと言葉を理解しなければ絵が出てこない。意味を全部理解すれば歌いやすい」。そう話す彼の日本語は自然な発音だ。外国人には苦手なはずの助詞の使い方も危なげない。日本で音楽活動を始めて5年の今年、「ヴィタリ」を芸名にし、オペラ出演や歌曲のリサイタルで活躍している。そこでこれから彼を姓ではなく「ヴィタリ」氏と呼ぼう。

「日本語は話しやすい。でも読むほうは漢字が難しい」とヴィタリ氏は言う。「新聞は読めるが、専門書になると漢字が多くて辞書をたくさん引かなければならない」。これまで彼はロシア語とドイツ語の翻訳でも日本の本を読んできた。「村上春樹さんの小説も読んだけれど、やはり『葉隠』が一番印象に残った。日本人のメンタリティーのベースは『葉隠』のほうだと思う」と語り、武士道にみられる日本人の精神に強い関心を示す。

「日本人になりたい」「前世は日本人だったのではないかと言われる」と語る彼が初来日したのは、世界的指揮者ワレリー・ゲルギエフ氏が芸術監督を務めるマリインスキー劇場の日本公演のときだった。参加する一歌手としての来日だった。「日本に来て最初の1秒でここに住みたいと思った」。本当か、と思ってもっと聞いてみると、「成田空港に着いて飛行機を降りたとき、懐かしい気がして自分の体がどこかに戻ってきた感じになった」と説明した。

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