ディベート日本一 埼玉の開智学園「探究力」で伸びる開智中学・高等学校(中高一貫部)の溜剛校長に聞く

外部の視点を取り入れるため、教師もさまざまな分野から採用している。博士号を持ち、大学で研究を続ける若手のポスドクの採用を5年ほど前から始めた。現在は中高一貫部で5~6人、学園全体では約20人が教える。「理科系を中心に専門性を高めるのはもちろんだが、それよりも仮説を立てて考える思考法そのものを教えてもらうのが狙い」と溜氏。さらに、他の職業で働いた経験者や、予備校の講師らも積極的に招いている。

制服もカバンも生徒がメーカーと交渉

体育祭も毎年、生徒がコンセプトを決めて運営する=開智学園提供

「こうした取り組みの結果として、生徒の考える力が向上したことが、難関大学への進学者増につながってきた」。溜氏はこう分析する。探究力を育てる教育は、いわゆるアクティブラーニングの一種であり、進学重視の教育とは対立するとみられることも多いが、「当校では密接につながっている」。18年春の東大合格者数は過去最多。東京工業大学や筑波大学にも、ここ数年は安定して10人前後を送り出すなど実績をあげている。

探究力の必要性と同時に、生徒に常日ごろ伝えているのが「何のために勉強するのか」ということ。実は溜氏自身、家庭裁判所の調査官から29歳のときに教師に転じた。その経験から「国語や数学、英語の知識もそれ自体の習得が目的ではない。身近にある不便や不満をどう解消するか。その手段として活用し、経験することが一番の勉強になる」が持論だ。

実例として、活発な生徒会活動を挙げる。同校では制服や体操服、デイパックなどを生徒が中心となってつくっている。担当の教員は付けるものの、メーカーの選定、デザイン、価格交渉などをすべて生徒に任せる。例えば、夏服のポロシャツ。学校が提示した上限価格は1着あたり4000円だったが、生徒がメーカーに出させた見積もりは4500円だった。溜氏が突っぱねると、生徒たちはメーカーのロゴを入れることで4000円に値下げする交渉をまとめてきた。

体育祭や文化祭(探究テーマの発表会)も、まず生徒会がどんなコンセプトで実施するかを校長らにプレゼンし、それを学校が承認する方式をとる。問題があれば再提示させる。「おかげで生徒たちのプレゼン能力は相当高い」と溜氏は笑う。卒業生からは生徒会活動やフィールドワークについて、「中高時代は面倒で嫌だったが、大学に行って初めて、勉強の基礎を学んでいたんだとわかった」といった感想も寄せられるという。

「学校という最も身近な社会で、先生が動いてくれるのを待つような生徒では心もとない」。溜氏が求める理想は高い。それは「中高生のうちに自主性を育てないと、大人になってからでは遅い」との思いがあるからだ。ぶれない教育方針のもと、探究力と実践力を身に付けた生徒の中からどんな人材が飛び出してくるか楽しみだ。

(村上憲一)

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