ポリプの無性生殖の方法には、種類によって、2つに分裂する方法もあれば、組織塊から増える方法、さらには「横分体形成」と呼ばれるプロセスを通じて微細な雪の結晶状のクローン(エフィラ)を遊離する方法もある。
そして、何よりも驚くのは、死んだ後にポリプになる――つまり若い段階に再生するクラゲがいることだろう(この奇跡のようなプロセスを、研究者たちは「分化転換」と呼ぶ)。
ミズクラゲやキタユウレイクラゲ、オキクラゲ科のシーネットルなどは、分類上、同じ「綱」に属し、「真正クラゲ」とも呼ばれる。これらは、サンゴに代表される「刺胞動物門」のうちの「鉢虫綱」に分類され、成長した姿は、伏せた皿や膨らんだパラシュートのような形だ。
鉢虫綱のクラゲは傘の筋肉を収縮させて拍動しながら進み、とげの付いた微細な刺糸を触手の刺胞から発射し、水中を浮遊する獲物に毒を注入して捕獲する。獲物を口に入れる際は口腕と呼ばれるリボン状の付属器官を使う。なかには口腕に口が付いているクラゲもいる。
カツオノエボシは群体
猛毒をもつことで恐れられるカツオノエボシは、刺胞動物門のヒドロ虫綱クダクラゲ目に分類されている。カツオノエボシは1つの個体のように見えるが、実は同じ受精卵から発達した多数のヒドロ虫が集まった群体なのだ。受精卵は単に大きく成長するのではなく、さまざまな機能をもつ新しい「体」をいくつも生み出す。たとえば、成長して触手になるものもあれば、生殖器を形成するものもあるという具合だ。
有櫛動物門に属するクラゲは、それ自身で独立した門を形成する変わり種だ。このクラゲは、「櫛板」と呼ばれる体表を覆う櫛状の繊毛をゆらゆらと動かして泳ぐことからクシクラゲとも呼ばれ、体はさまざまな奇抜な形をしている。平たいリボン状の体をしたものもいれば、小さな袋や王冠のような体をしたものもいる。クシクラゲの大半は獲物を捕まえるのに粘着性のある物質を使う。「クシクラゲの触手には、膠胞という接着剤を詰めた袋のようなものがいくつもあるんです」と、米モントレー湾水族館研究所のスティーブ・ハドックは言う。
(文 エリザベス・コルバート、写真 デビット・リトシュワガー、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2018年10月号の記事を再構成]