
準惑星ケレスは、火星と木星の間の小惑星帯にある最大の天体だ。ケレスには火山が一つあることがわかっている。火山といっても、熱いマグマを吹き出すのではなく、氷を噴き出す山だ。ただ、なぜこうした山がケレスには一つしか見つかっていないのか、地質活動のエネルギーはどこから得ているのかなど、これまで様々な疑問が呈されている。
2018年9月17日付けの学術誌「Nature Astronomy」に発表された論文は、この謎に一つの答えを示すものだ。ケレスでは過去10億年の間、複数の山が絶えず活動していたのではないかというのだ。順を追って説明しよう。
ケレスに「氷の火山」が見つかったのは2015年。NASAの無人探査機ドーンがケレスの周回軌道に入り、氷に覆われた地表を間近にとらえた写真を送った。この写真の中に、高さ3900メートルを超えるピラミッド型の火山らしきものを見つけたのだ。
氷の火山とは
この頂をもつ山は、「アフナ山」と名付けられた。2016年の論文で、アフナ山は地質活動があり、炎や硫黄ではなく、氷や他の物質を含んだものを噴出していると吹き出していると発表された。
噴出物が氷とは奇妙に聞こえるかもしれない。ケレスのほかにも、土星の衛星エンケラドスや、木星の衛星エウロパなどで同様の現象は観測されており、太陽系外縁部にもほぼ間違いなくあるとされる。氷の噴出は天体内部の熱によって引き起こされるが、その熱は、惑星の周りを回る衛星の場合、惑星との重力相互作用によって発生すると考えられている。
科学者が氷を噴出する山の存在を初めて知ったのは、1989年に探査機ボイジャーが海王星の衛星トリトンに接近した際のことだった。ボイジャーの撮影した写真には、トリトンの表面から噴き出す氷の間欠泉らしきものが写っていた。
NASAジェット推進研究所のロザリー・ロペス氏は言う。「ここまで来るのに色々ありましたが、今では氷の噴出が考えていたよりも、よくある現象ではないかということがわかっています。ただ、観測はしていても、そのメカニズムとなるとまだ解明されていません」。ロペス氏は、今回の研究には関与していない。