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World Food Watch

美味!フィンランドの「虫パン」 環境配慮で食通注目

2018/9/27

ファッツェル社が昨年11月に発売した「コオロギパン」

「えっ、すごくおいしい」――今年8月に訪れたフィンランドで、昨年11月に発売され大きな話題となった「ファッツェル・コオロギパン」を食べてみた。同国の大手食品メーカー、ファッツェル社が世界で初めてスーパーで売りに出した材料に虫を使ったパンだ。乾燥コオロギの粉が入っていて、小麦粉ベースのパン1個に70匹分のコオロギの粉(パンの重量の3パーセント)を混ぜ込んでいる。

同社は、国内でインストアベーカリー(スーパーなどの店内でパンを焼き販売する店)を展開しているが、コオロギパンは11店のインストアベーカリーで販売を始め、現在は全57店(取材時)に拡大。特に都市部で人気だが、発売当初より地方からや、輸出についても多くの問い合わせがあったという(現段階では輸出の計画はないらしい)。首都ヘルシンキの大手スーパーでは、一際目立つ場所にコオロギの絵をあしらった緑色のパッケージに入ったパンが並べられていた。

コオロギパンは写真のようなインハウスベーカリーで焼いたものを販売

あるアンケートで「国民食」としてライ麦パンを挙げた人が最も多かったという国民性だけあって、パン作りにはこだわりがある。コオロギパンも物珍しいパンというだけではなく、ベーカリーで手作りした焼きたてを販売する本格派。その上材料には、ライ麦粒やヒマワリの種、ゴマなども使用し味わい豊か。おいしいわけだ。

もっとも、ファッツェルのこのコオロギパンは今秋で終了。次の商品に切り替わる。新しく登場したのは「ファッツェル・コオロギロール」。丸いパンで、南東部の都市にある拠点で一括生産するため、販売店が限られた最初の製品とは異なり、すべての小売店での販売に対応できるものだ。

昆虫は、2050年には人口が98億人になるといわれる世界の食糧難に対応できる食材として、2003年より国連食糧農業機関(FAO)が普及に取り組んできた。2013年に発表されたFAOの報告書によれば、昆虫は全世界で1900種以上が既に食用とされている上、生産において環境負荷が少なく、栄養価が高い食材だという。

例えば、家畜牛肉1キロを生産するには8キロの飼料が必要だが、昆虫肉は同2キロですみ、より低資本で生産が可能。また多くの昆虫類は、タンパク質や良質の脂肪を多く含み、カルシウム、鉄分などが豊富だとFAOは指摘する。

フィンランドで食用の虫の飼育・販売が許可されたのは2017年の秋。「欧州連合(EU)諸国の中では7番目とスタートは遅かった」とコオロギ養殖のベンチャー、エントキューブ社の最高マーケティング責任者(CMO)、ヨナス・アールティオ氏は言う。しかし、ファッツェルだけでなく、エントキューブが14年に早々と設立されたり、今年5月には循環経済をテーマとし昆虫を食材として使用するレストラン「ウルティマ」がヘルシンキにオープンしたりと話題が尽きず、今や虫食の先進国として注目されている。

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