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小沢コージのちょっといいクルマ

トヨタ・センチュリー21年ぶり一新 日本にこだわる

2018/9/27

田部 分かりません。今回ハイブリッド化もあって静粛性では間違いなく日本一だと思いますが、ロールス・ロイスとの比較はできなかったので。それからトルクの出し方にしても、EV走行からハイブリッド走行への切り替わりで、エンジンがかかった瞬間が極力分からないよう滑らかにしてます。

小沢 つくづくきめ細かい配慮ですねぇ。それから聞いて驚きましたが、月間の販売目標わずか50台。ちと少なすぎませんか。正直これだけのつくりです。海外に出せばある程度は売れると思うのですが。価格も1960万円。2000万円弱はある意味安い。ロールスの「ファントム」が5000万円クラスですから。

■なぜ高級車大国・中国に進出しない?

田部 海外に出すとなると左ハンドルもつくらなければいけませんし、みなさんが思ってる以上に大変なんです。インパネ造形はもちろん、ステアリングギア回りも全く変えなければいけなくなりますし。

小沢 確かに世界を向いた瞬間から今のセンチュリーの方向性を変える必要が出てくるとは思います。走りの性能はもちろん、内装ひとつとっても、もっと押し出しが必要になるはず。もしや利益度外視でつくってるとか?

田部 いや赤字でもいいなんてことは全くありません。ただ、すごくたくさんもうけようとしてないということだけはいえます(笑)。

小沢 でも今やトヨタはドイツのフォルクスワーゲン、米国のGMと並び世界で一番多く自動車でビジネスをしている会社です。「クラウン」もそうですが、日本の感性や技術を誇る頂点のクルマを世界に出さないのは少し不思議な気もするんです。日本独自カルチャーの京都がこれだけ受けてるんだから、「走る京都」みたいなテイストで打って出てもいいような。

田部 全く考えていませんね。

小沢 だからそこが面白いなと。良い意味での自然な日本の箱庭文化を感じます。京都や着物の文化もそうだけど、あえて自分の中に閉じこもり、自分たちの快楽であり、美意識を追求する面がある。

田部 別に出したくないと言っているわけじゃなくて、出せるのが一番いいと思いますけど、やっぱりある程度数がまとまらないと難しいです。ものすごく投資もかかるし。今回の新型に海外から声が殺到すれば分かりませんが(笑)。

小沢 具体的に思ったのが隣国です。今やこんな近くに中国という世界で最も勢いがあり、最も貪欲な高級車市場があるんですよ。メルセデス・ベンツもBMW今や世界で一番売れている市場です。トライしないのはちともったいなさ過ぎる。しかも2000万円なんて中国のお金持ちからすると超安い(笑)。

田部 頭ごなしに否定するわけではないんですが、価値観が少し違うような気もしますね。センチュリーはやっぱり和であり、ジャパニーズスタイルじゃないですか。静かできめ細かい、日本人が茶室に感じるような安らぎを追求したクルマ。それから日本の大企業のトップの方に、いまだにセンチュリーに対して愛着を持っていただいてるんですよ。装備の古さとかは関係なくやはりセンチュリーが最高級だよねと。企業としての責任、社会貢献とまではいいませんが、われわれは継続的に出していかなければいけないと思っています。そこは商売とかは関係なく。

小沢 つくづくトヨタって日本の何かであり、文化を背負っている面があるんですよね。ある意味日本自動車産業の誇りみたいな部分はつまってんだろうなと。

田部 ありがとうございます。

田部 正人(たなべ・まさと、写真右) Mid-size Vehicle Company  MS製品企画 ZS 主査。83年入社。シャシー設計部、生技部門を経て、95年より製品企画部門へ。第1開発センターZK主幹として初代及び2代目ハリアー、初代クルーガー を担当。03年には第1トヨタセンターZS主幹として2代目センチュリーと初代センチュリーロイヤルを手掛けた。以降、初代ヴェンザ、9代目カムリ(北米)の製品企画全般を取りまとめ、12年より3代目センチュリーに携わり、開発統括を担った
小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、「ベストカー」「時計Begin」「MonoMax」「夕刊フジ」「週刊プレイボーイ」などに寄稿。著書に「クルマ界のすごい12人」(新潮新書)「車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本」(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

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