家事の基礎も習得 自立促した土佐中高の楽しい授業村木厚子・元厚生労働事務次官が語る(下)

村木厚子・元厚生労働事務次官
村木厚子・元厚生労働事務次官

将来の仕事について、学生時代はあまり明確な希望がなかったという元厚生労働事務次官の村木厚子氏(62)。それでも「ずっと続けられる仕事に就こう」と心に決めたのは、親が苦労しつつも私立土佐中学・高等学校(高知市)に通わせてくれ、自主自律を重んじる校風の中で成長したためだ。困難があっても仕事を続けていく基礎が、中学時代から培われた。(前回の記事は「人見知り少女が折れない官僚へ 村木氏育んだ土佐中高」

生徒に真剣に向き合って教えてくれた。

先生は生徒をあまり子ども扱いせず、自主性を尊重してくれました。「何を教えるか」を真剣に考えている先生がずいぶん多かったと思います。名物教師がたくさんいて、授業は楽しかったです。

印象に残っているのは生物の先生。中2と中3で習ったのですが、後に南極地域観測隊の隊員になって、南極の石をくれました。遺伝の法則などを分かりやすく教えてくれて、生物学が好きになりましたね。中1から週1回あった漢文の先生もおもしろかった。辞書の編纂(へんさん)にかかわるような大家なのですが、中学生を相手に真面目に論語や詩を教えていました。ちょっと言いにくそうに「これは恋の話なんだ」とか、ね。

進学校だから受験のための勉強ばかりというイメージがあるかもしれませんが、家庭科などもユニークでしたよ。中1では1年間かけて浴衣を縫いました。きれいにできたので、いまだに持っています。中2はずっと調理実習。料理の基本はここで覚えました。1年間、学校で徹底的に習って、家族にも食べさせたいと思い家でも作っていましたから、何回もやれば覚えますよね。家事能力の基礎を作ってくれたと思います。このとき覚えた手作りさつま揚げやひき肉とジャガイモの煮物は、いまだに食卓に上るメニューです。

授業が楽しかったのはみな同じようです。毎年開く同窓会では、かならず名物授業の再現があります。退官された先生も授業をするので、みんな懐かしがって聞きに行きます。50歳、60歳になっても「誰に何を習った」というのがずっと心に残っているって、なかなかないですよね。当時はあまりありがたみを分かっていなかったかもしれませんが、今考えるとよかったと思います。

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