自分の顔が嫌で整形したいです
作家、石田衣良さん
整形したいです。これまでの人生、周囲から面白い、優しいと言われることはあっても、かわいいと言われたことが一度もありません。私も三枚目キャラの自負があり気にしていませんでしたが、改めて自分の顔を見ると、好きなパーツが一つもなく絶望します。整形するか、今の自分を好きになるよう努力すべきか、どうしたらいいでしょう。(兵庫県・女性・20代)
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顔面整形の技術は第1次世界大戦により飛躍的に進歩したといいます。戦場で顔に傷を負った多数の兵士を治す必要があったからです。その技術が全世界的に美容目的で広まって、今や空前の隆盛期を迎えています。
韓国や台湾の目抜き通りを歩いていると、看板の多くが美容外科のもので驚いた人もすくなくないでしょう。よく似た美女になぜか道ですれ違うことも多いですよね。もちろん事情は欧米でも日本でも変わりません。
テレビで見かける女優・アイドルには、ぱっちり整形手術を実施済みの人も多いです。ほとんどは目頭切開と目の二重術、それに涙袋と唇をふくらませるヒアルロン酸の注入といったライトなものですが、顎の骨を削ったり、鼻にシリコンを詰めたりという大改造もちらほら。
彼女たちの顔は商売もの。芸能界の生存競争は厳しいのでしかたないよなあというのが、ぼくの個人的見解です。親にもらった身体に傷をつけるのはけしからんという意見もわかりますが、これほど整形が一般化すると説得力がないとも思うのです。
ですから、あなたが整形をしたいなら、ぼくはとめません。ただし整形は途中、あるいは初回が一番美しいのを忘れずに。整形マニアになって数百万円を投じたうえ、顔面崩壊に至る人もめずらしくないのです。どこかの段階で自分の意思で整形にストップをかけてください。
とここまで整形の話をしましたが、周りの人から面白い、優しいといわれるのは素晴らしいことじゃありませんか。面白くない美人は3日で飽きるというのは真実です。日帰りで目をぱっちり二重にするのもいいですが、それより面白キャラをもっと伸ばしてみませんか。
顔は確かに重要なとっかかりですが、男性の多くはただ顔がきれいなだけの女性を好きにはなりません。自分の顔を笑って受けいれる勇気をすこし出すだけで、あなたの場合は十分。これまであなたを好きになってくれた人はみな、顔も三枚目のところも含め今のままのあなたを気にいってくれたはずです。似たような顔の美人なんて、ぼくはつまらないと思うけどな。
[NIKKEIプラス1 2018年9月15日付]
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