シェアオフィスは、ここ数年ニーズが急速に拡大している。スマホの普及やパソコンの軽量化、インターネット接続環境の改善など、モバイルワークの環境が整備されてきたのに加え、生産性向上やワークライフバランス重視の世論の追い風が、背景にある。

都心の立地狙い大手の参入相次ぐ

無料で利用できるドリンク・おやつコーナーもある

働き方改革の一環としてテレワークを推進する企業の中には当初、自社のサテライトオフィスを拡充することで対応しようとしたところもあったようだ。しかし、サテライトオフィスにふさわしい不動産物件を都市部で見つけるのは容易ではなく、また、費用対効果の面でも問題が多かった。

例えば、ワークスタイリングと契約しているJFEエンジニアリングも、テレワーク制度を導入した当初は、東京と横浜にある自社のサテライトオフィスを利用していたが、現在は、横浜のサテライトオフィスは閉鎖しシェアオフィスの利用に切り替えている。

三井不動産はそうした企業ニーズが多いことに着目し、2017年4月、法人向けのワークスタイリングを首都圏の10拠点でスタート。その後も、新たな拠点を次々と立ち上げ、現在の拠点数は地方都市を含めて31。利用契約を結ぶ法人も、すでに200社を超えている。

だが、首都圏では東急電鉄もシェアオフィス「ニューワーク」を展開。今年2月には、世界20カ国以上でシェアオフィスを展開する米ウィーワークが、日本でサービスを開始するなど、大手運営会社の間の競争も本格化してきている。

大手どうしの競争に勝つカギを握ると見られているのが、顧客ニーズをくみ取った様々な高付加価値サービスの提供だ。

最近はインターネット使い放題のカフェでパソコンを開いているビジネスマンをよく見掛けるが、ネットにつないだ時に情報を盗まれるリスクや、置き引きにあう危険性が指摘されており、社員がそういった場所で仕事することを禁じている企業も多い。

その点、ワークスタイリングは、有人受付やセキュリティーカメラなどで不審な人物や不審物をチェックしたり、不正通信感知システム付きのWi-Fiを使用したりするなどして、ビジネスマンが安心して仕事に打ち込める環境を提供。さらに、会話の内容が第三者に聞かれないようサウンドマスキングと呼ぶ防音システムを取り入れるなど、会議需要にも対応している。

実際、取材をしていた部屋と壁一枚隔てた隣の部屋では、どこかの企業の社員が会議を開いていたが、向こうの話し声はまったく聞こえなかった。細田氏は、「非常にしっかりとしたセキュリティーがワークスタイリングの特徴」と強調する。

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