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酒は百薬の長ではない それでも飲む場合の目安量は? 飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題(下)

日経Gooday

2018/9/12

浅部:お酒を飲むと肝臓がんになる確率が高まるのは、かなり確かです。一方でお酒が体にいい、みたいな研究はわりと“弱い”のですよ。有名な「Jカーブ」現象で、少量の飲酒だと心血管系の疾患リスクが減少する、ということは示唆されているのですが、それは欧米では心筋梗塞が死亡原因としてものすごく多いから。これが少量の飲酒で少し抑えられると、全体で死亡率が少し下がる、というだけなんじゃないかと。

海外の14の研究をまとめて解析した結果。適量を飲酒する人は死亡リスクが低い傾向が確認できる。(Holman CD,et al. Med J Aust. 1996;164:141-145.)

 あと「お酒を飲む人」グループと、「お酒を飲まない人」というグループで比較する場合、後者に不健康だから飲めない人が含まれているのでは、ということも示唆されています。つまり、飲めるということはそれだけで健康な人なんじゃないのと。だから、「お酒を飲む人」グループの結果が良かったとしても、お酒を飲むことが健康につながっている、というわけではなさそうです。

葉石:そもそものグループにバイアスが…。

浅部:適量を飲酒しているほうが血管の病気が減る、ということは確からしいと言われています。しかし、比較的最近の論文では、がんなど他の病気のリスクが高まるから、全体では少量の飲酒であってもマイナスだそうです。残念ながら「健康のためには飲まないほうがいい」という意見が主流になってきました。飲むにしてもごく少量に抑えたほうがいいですね。

葉石:でも、少量に抑えるって難しいですよね。私の本にも、適正な飲酒量はエタノール換算で1日20g程度、ビールだったら中瓶1本、日本酒なら1合程度、と書いているのですが……。

小田嶋:大酒飲みから言わせると、それだったら飲まないほうがましですね。まんじゅうの皮だけ食べろって言われているような感じ。

浅部:ですよね(笑)。でも、最近の研究だとさらに適量が下げられてきているんですよ。

2018年5月11日に東京・下北沢の書店「B&B」にて開催された鼎談を記事にしました。

葉石:WHO(世界保健機関)の基準からすると、日本で適量とされている量は、少し多めだと聞いています。

浅部:日本人の体の大きさから考えると、ちょっと甘いんですよね。日本人はアルコールを分解する酵素の面から見ても、あんまり酒が強くないですし。そうすると、本当に1日1杯くらいの量になってしまうんです。アルコールの健康に対する害という観点からすると、自分に合った方法で酒量を制限するということしかないですね。

■アルコール依存症は人生そのものを変えてしまう

葉石かおり著、浅部伸一監修『酒好き医師が教える最高の飲み方』

葉石:では最後に、お二人にとって最高の飲み方ってなんでしょうか。

浅部:私は食べるのが好きで、食べ物に合わせた酒を飲むのが好きなんですよ。だから、食べ物と一緒に、おいしいなあと思いながら飲みたいです。あとは、人と楽しく会話しながら飲む。それが一番ですね。

小田嶋:私は最高も何も、もう飲めないですからね。吾妻ひでおさんのアル中体験を書いた漫画に、「アルコール依存症は不治の病気。一生治りません。ぬか漬けのきゅうりが生のきゅうりに戻れないいのと同じです」というお医者さんのセリフがあるんですよ。

葉石:なんと分かりやすい例え…!

小田嶋隆著『上を向いてアルコール』

小田嶋:私は今、20年間酒をやめています。しかし、今でも一度飲んだら、依存症の状態に舞い戻る。これは確実です。だから皆さんにとっての最高の飲み方は、多量飲酒者(ハイリスク群)とアルコール依存症の間にあるレッド・ラインを超えないことだ、と言っておきましょう。

葉石:やはり、多量飲酒者であることと、アルコール依存症になってしまうことの間には、大きな壁があると。

小田嶋:その一線を超えると、帰ってこられないですからね。アルコール依存症になって酒をやめるというのは、元の生活に戻るということではありません。今までと別の人生を歩むということなんです。サッカー選手がサッカーできなくなってタクシー運転手になった、とかそれくらいの話。

 断酒を始めたころ、いろんな人に「酒をやめるってどんな気分ですか」って聞かれたんです。それで、何かの原稿に「翼をなくした鳥みたいなものだ」と書きました。本当に、鳥が歩いているような気分だったんですよ。

葉石:もともとは空を飛ぶように生まれたのに。

小田嶋:今でも飛んでみたいと思うけれど、そうすると必ず墜落するって分かってるから、やりません(笑)。だから、そんなことにならないように皆さんは気をつけてください。

(おわり)

(文:崎谷実穂、写真:鈴木愛子)

[日経Gooday2018年6月28日付記事を再構成]

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