経営者は「非理系」でOK 技術生かす構想力磨け「エクスポネンシャル思考」 斎藤和紀氏

技術の進化に順応するのに、古い働き方が邪魔になることもある。周りが誰もツイッターに手を出さないから、自分もアカウントをつくらないといった、横並び式の発想は「動かないリスク」を増大させる。斎藤氏は「社内で余計な忖度(そんたく)が働きすぎると、企業が丸ごと『詰んだ』状態になりかねない」と警鐘を鳴らす。

技術の進化から取り残された中間管理職が、会社の変身にブレーキをかける可能性も

ただ、斎藤氏は日本企業の行く末を必ずしも悲観していない。「私が会った限りでは、経営トップは結構、分かっているし、変化にも順応している。むしろ、トップと若手の間にいる中間管理職がブレーキになっている」とみる。技術の進化についていけないと認めれば、体面にかかわるので、新思考の提案を軽んじたり遠ざけたりしがちなのだという。

ロボット掃除機の草分けである「ルンバ」は2002年に売り出されたが、パナソニックが「ルーロ」で後を追ったのは2015年。13年もかかった理由はいろいろあるだろうが、斎藤氏は「絶対的な安全性、機能を求める、旧来のものづくり意識が時間を奪った可能性がある」と指摘する。

エクスポネンシャル的に成長する新興企業は商品・サービスを素早く開発して投入し、顧客や消費者の反応を見ながら、改良を重ねていく傾向が強い。こうした「走りながら考える」式の開発アプローチは、スピード感で勝り、新たな技術も取り込みやすい。「発売時点で完成品を」という発想では、結果的に投入のタイミングが遅れてしまう。

成功体験捨て、変身めざせ

「従来の自社のイメージにとらわれていると、エクスポネンシャル企業に進化するチャンスを逃す」と、斎藤氏は警告する。過去に成功体験があればあるほど、ダイナミックな転身への抵抗は大きくなりがちだ。だからこそ、過去に引きずられない若手が経営トップとダイレクトに意見交換できるような風通しのよさが必要で、「社長と新人がLINEでつながるような仕組みが望ましい」(斎藤氏)。

事業分野を柔軟にシフトしていくことも重要になってくる。斎藤氏は「英ダイソンが電気自動車(EV)事業に乗り出し、ウーバーの自動車製造への進出がささやかれるような時代に、業種・業態を固定して考えるのは『(変化に対応できずに滅びた)恐竜化』のリスクを抱え込むことになる」と指摘する。

米国で成功したウーバーも、規制の厳しい日本では事業化に苦労している。だが、見方を逆転させれば、日本では実現できないビジネスが、海外でなら大きく展開できる可能性があるとも考えられる。国内では低成長でも、海外で急成長を目指す道もあるわけだ。

斎藤氏はこうした発想の転換・拡張を「自分のキャリアづくりでも取り入れてほしい」とすすめる。会社の業務配分が不適切なせいで、自分の成長チャンスが損なわれていると感じるような場合は、「もっと成長できそうな居場所を貪欲に探していい」。会社の行く末と自分の将来イメージを俯瞰できれば、成長につながる動き方も選びやすくなる。「行動しないことを許さない」というシンギュラリティ大の思想は斎藤氏の言葉に今も力を与えているようだ。

斎藤和紀
1974年生まれ。早稲田大学人間科学部を出て、同大学院ファイナンス研究科修了。米シンギュラリティ大学エグゼクティブプログラム修了。金融庁、石油化学メーカーを経て、ベンチャー支援に取り組む。現在、エクスポネンシャル・ジャパン共同代表のほか、Specteeの最高財務責任者などを務める。
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