ビジネスパースンなら誰でも持っている名刺入れ。だが、それはどうやって選んだのか。「昔、買ったものをなんとなく使い続けている」という人も多いのでは? 文具ライターの納富廉邦氏は「名刺入れは重要なビジネスツール」と力説する。初対面の相手の前で使う機会が多く、相手から意外に見られているからだ。実用性に優れ、会話の糸口にもなる個性派名刺入れを紹介する。
初対面の人の前で使うビジネスギア
「単に名刺を入れるだけで、使い勝手自体は大きく変わらない」という認識があるのか、どんな名刺入れを使うか、どんな構造になっているのかが問われる機会はあまりない。財布、キーケース、名刺入れという紳士装身具3点セットでデザインをそろえて、良い革を使っていればそれで良し。今も名刺入れに対する大方の認識はそんなところだろう。
しかし、財布、キーケース、名刺入れのうち、名刺入れは人前で使うケースが圧倒的に多い。しかも使う場面はほとんどが初対面の相手の前だ。そんなツールは他にはほとんどない。
実際、名刺入れは意外なくらい注目されている。
筆者が、ある展示会で名刺を出したとき、受付の女性に「その名刺入れ、水木しげるさんの全集特典ですよね、」と声を掛けられたことがある。講談社が発行した「水木しげる漫画大全集」購入者特典として作られた名刺入れを使っていたのだ。そのマニアックな視点に驚いていたら、「去年、お見掛けして『あれは……』って思っていたんです」。初対面の人間が何十人も来るプレスの受付で見かけた名刺入れを、1年たっても覚えている人がいるのだ。
最近使っている木製の名刺入れに対しても、「その名刺入れ、いいですね」と言われる頻度がとても高い。仕事柄、同じくらい変わった財布を使っていることも多いのだが、「その財布、いいですね」と言われたことはほとんどない。財布はあまり人前で取り出す機会がないからだろう。また普通の名刺入れがどれも似たようなデザインばかりなので、個性的な名刺入れを持っていると目を引くという効果もあるに違いない。
しかし、誰もが持っていて、数多く使うツールにもかかわらず、そこにデザインや機能に特徴がある製品を使うべきだという指摘は意外なほど少ない。機能として突出したアイデアが必要なく、外見上の魅力として「良い革を使ってさえいれば問題ない」と考える人が多いからだろう。だが、革の名刺入れの場合、使い込んだエルメスの名刺入れのような、一目で革の良さが分かるような場合でもなければ、それがグッチであれヴィトンであれ、型押しの革のブランド品に対して、わざわざ目を留める相手はいない。
ビジネスパースンはもっと時間をかけて、きちんと名刺入れを選ぶ意味があるのではないか。変わった外見をしていなくても、優れた機能があれば、それが会話を弾ませるきっかけになるかもしれない。名刺入れはそれほど重要なビジネスツールなのだ。
補充の手間が省ける大容量
名刺入れに求められる機能は、大きく分けて2つに分けられる。一つは「大容量」であり、もう一つは「出し入れのしやすさ」である。