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女性入試差別・LGBT支援批判 少数者排除をなくせ ダイバーシティ進化論(水無田気流)

2018/8/11 日本経済新聞 朝刊

写真はイメージ画像=PIXTA

 やり切れない思いで、東京医科大学の恣意的な女子合格者抑制の記事を読んだ。一般入試で女子受験生の得点を操作し合格者数を抑制していたという。大学関係者は、女性医師は出産・育児などで離職する人が多いため、男性のほうが望ましい。いわば「必要悪」と語ったという。

 詳細は調査中だが、もしそれが事実で大学の総意であるなら、入学者受け入れの方針に明記すべきだ。同大学の方針を読むと「1.十分な基礎学力をもつ人」とあり、めまいを覚えた。新卒採用でも「試験の点数順では女子ばかりになるので男子にゲタを履かせる」など聞くが、公正第一の大学入試でそうだとしたら……。批判は免れまい。

 同様に、属性による排除志向が批判を浴びた事例は、自民党の杉田水脈衆院議員の『新潮45』誌への寄稿「『LGBT』支援の度が過ぎる」である。筆者は最初、日本のLGBT支援政策は政府与党の議員が行き過ぎを批判するまでに手厚くなったのかと思い、近年の国の歳出予算より社会保障関係費を早速、確認。そのような傾向はなかった。

 原文に当たったところ、杉田氏は新聞各紙のLGBT報道件数を調べたとして、「リベラルなメディア」の報道への「違和感」を表明。しかし、新聞が社会的弱者について報道することは、社会の公器として当然の役割といえる。これを国会議員が批判するとは、言論封殺にも通じる姿勢と言わざるを得ない。

 さらに杉田氏は、LGBT当事者は「子供を作らない、つまり『生産性』がない」ので、「そこに税金を投入することが果たしていいのか」と批判するが、こちらも大いに問題がある。出産能力の有無を人間の「生産性」と等価にみなすことは、LGBTのみならず、経済・社会・身体的理由などから子供を持たない選択をした国民をも侮蔑する姿勢だからだ。

 冒頭の東京医科大学の問題に戻れば、女子学生排除の理由にされたという女性医師の高離職率は、本来職場環境の改善で解決すべき課題だ。人権上の問題はもちろん、「女性は離職率が高いため一律排除」といった「統計的差別」は経済社会にも悪影響を及ぼす。属性を理由に不当な扱いを強いれば、個々の能力を活かせず結果組織の利益にもマイナスに作用する。今こそ真剣に、この国の「マイノリティー(少数者)排除志向」を解消すべきである。

水無田気流
 1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

[日本経済新聞朝刊2018年8月6日付]

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