リクルートホールディングスは2015年4月に「働き方変革プロジェクト」を発足させ、16年1月には職場にいなくても在宅や外出先で働ける、リモートワークを全社員対象に上限日数無しで導入。オフィスには席を自由に選べるフリーアドレスを導入する一方、キッズスペース付きのサテライトオフィスの実証実験をするなど、働き方改革に取り組んでいます。営業社員の働き方やマインドセットは本当に変わったのでしょうか? リクルートの二葉美智子HR研究機構イクション事務局長に聞きました。
両立支援も長時間労働の壁

白河桃子さん(以下敬称略) きょう一番お聞きしたいのは「マインドセット」の変化です。リクルートといえば、すごく優秀でパワフルな人材の輩出企業で、そこで働く女性たちも長時間労働をいとわず猛烈に働く方が多いというのが一般的なイメージです。本当に働き方が変わって社員のマインドは意図した方向に変わったのでしょうか。
二葉美智子さん(以下敬称略) 当社には「個の尊重」というビジョンが大きく掲げられているので、常に一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮してもらおうという理念がベースです。その上で、06年ごろから取り組みを始めたのが女性活躍のための両立支援です。
もともと新卒入社時に女性社員の比率が4割程度と高い会社ですが、管理職として活躍する人は割合として少なかったんです。リクルートの女性って肉食系で機会さえあれば昇進したいタイプだと思われるかもしれませんが、実際に社内でアンケートをとってみると、「より高い役職を担いたい」と答えた社員は男性が7割いたのに対し、女性は4割しかなかったんです。さらに、3割は「どちらとも言えない」。この「どちらとも言えない」と感じる心理の根底に、「そもそも役職につくことを魅力に感じていない」という課題が見えてきました。
白河 その理由で大きいのは長時間労働ですよね。私は公式の取材以外でもリクルートの女性社員の話をよく聞きますし、28歳研修などグループ会社で研修講師をさせていただいています。会社の育児との両立支援制度が充実する裏側で、その制度を利用したことが裏目に出て、会社でくすぶっている女性がもったいないと思っていました。「私は営業でトップ成績をとっていたのに、時短勤務で前のようには働けなくなった。でも、時短勤務からフルタイム勤務に戻すことはしばらく無理。戻した途端に長時間労働になると思うから」と。
二葉 ワーキングマザーは10年前には女性社員の1割しかいなかったのですが、企業内保育所設置といった両立支援を進めた結果、今は2割まで増えました。両立支援の対象は女性だけに限らず、最近の30代以下の社員の共働き率の増加は顕著ですね。パートナーを扶養に入れていない男性社員の割合が増えていますので、男女共に家庭に時間を費やすためのケアはより必要になっているのだと理解しています。