古いパソコン ソフト引き継ぎとデータ消去のポイント
売却・下取りから譲渡・廃棄まで(下)
使わなくなった古いパソコンをどう処分するか。上編では「古いパソコン 処分方法は4つ、売却時の注意点は?」でお得に処分する方法を紹介した。下編ではライセンスの引き継ぎやデータ消去について注意点を解説する。
ライセンス引き継ぎは注意点が多数
ここからは、パソコンを手放す前に確認しておくポイントや、必要な作業について説明する。最初はソフトウエアライセンスの引き継ぎだ。ここでは、Microsoft Officeとアドビシステムズの製品を例に説明する。
Officeの場合は、製品によって異なる。パソコンを譲渡された人でも使えるのは、ライセンスがパソコンにひも付いている「PCプレインストール版」のみだ。
「プロダクトキーカード版」と「Office 365 Solo」は、新しいパソコンでも引き続き使用できる。ただし、同時にインストールできるパソコンは2台までなので、古いパソコンのライセンスは非アクティブ化しておこう。また、月額900円で利用可能な法人向けの「Office 365 Business」に乗り換えてもよいだろう。こちらは1ユーザー当たり5台までインストールでき、Microsoft Teamsなどのツールも利用可能だ。
アドビ製品は、買い切り版の「Photoshop/Premiere Elements」などと、月額料金で利用する、サブスクリプション版の「Adobe Creative Cloud」に大別して考えよう。Elementsなどは、ライセンスを他人に引き継げるが、手順が少々複雑だ。
Creative Cloudは、パソコンを譲渡された人は利用できない。パソコンを譲る人は、事前に古いパソコンでログアウトしておこう。今からアドビ製品を利用する人は、Creative Cloudを契約するのがお勧めだ。移行が簡単で、常に最新バージョンを利用できる。
大切なデータは忘れずに移行する
古いパソコンを手放すに当たり、中のデータは忘れずに新しいパソコンへ移行しておこう。移行対象のデータは、頻繁に閲覧する写真や動画のほかに、IMEやID/パスワードなど多岐にわたるので参考にしてほしい。
バックアップ先には、外付けハードディスク装置(HDD)やクラウドストレージを用意する。クラウドストレージについては、例えば「Dropbox」だと無料では2ギガバイト(GB)しか利用できないが、月額1200円を払えば1テラバイト(TB)まで保存できる。移行する際の一時保管場所として1カ月だけ契約してもよいだろう。ただし、パソコンだけにしかデータを保存していないと故障や操作ミスなどで、消えてしまうリスクもある。別途、バックアップ先を確保しておくことをお勧めする。また、Office 365 Soloを契約している人は、OneDriveが無料で1TBまで利用可能だ。
写真や動画、文書ファイルなどは、Cドライブの「ピクチャ」や「ドキュメント」から外付けHDDなどにコピーすればよい。IMEのユーザー辞書は、IMEツールバーの「ツール」nボタンから保存できる。新しいパソコンのIMEで読み込めば、同じように使える。
なお、可能であれば、データを移行する際は、新しいパソコンと古いパソコンを並べて実施しよう。移行対象データが新しいパソコンでも読み込めて、古いパソコンと同じように利用できることを確認できれば安心だ。
端末保証の内容もしっかりチェック
パソコンにかけられている保証には、譲渡された人が引き続き利用できるものと、利用できないものがある。ここでは、パソコンメーカーが発行している保証と、家電量販店の保証に分けて紹介する。
まずメーカーの直販で購入した場合だ。今回は、NECと日本HPに確認した。メーカーの標準保証は、どちらもパソコンにひも付いているため、利用者が変わっても引き続き保証を受けられる。ただし、保証書を紛失してしまうと、受けられない場合もある。
注意したいのは延長保証だ。NECや日本HPの場合、購入した人以外は、保証を受けられない。さらに、日本HPは、譲渡された人が保証に入り直すこともできない。ルールはメーカーによっても異なるので、譲渡する場合は確認しておこう。
家電量販店で購入した場合も、メーカーの保証書が箱の中に入っているので、標準保証については購入者が変わっても使用できる。
そのほかに、家電量販店では、購入時に付与されたポイントで支払える独自の延長保証を設けている場合が多い。ビックカメラではパソコンの購入時に加入できる。また、パソコンを他人に譲る際は保証を引き継ぐことも可能だ。
こうしてみると、延長保証は、譲渡された人は受けられず、無保証で使わざるを得ないケースもある。もちろん壊れたら修理には出せるが、有料になってしまうので、譲る人には説明を忘れないようにしよう。
データは確実に消去する
「データの消去」で初心者が勘違いしがちなのは、「ごみ箱」に消したいファイルを入れて「ごみ箱を空にする」を実行することで目的が達せられたと思うことだ。実際にはファイル管理情報が削除されただけで、データ自体は残っている。見られても問題ないデータで、家族などに譲る場合はそれでよいかもしれないが、……オークションなどで第三者に譲る場合は、完全消去をしておくのが安心だ。
NECや東芝、富士通など、各メーカーでは、工場出荷状態にできる再セットアップメディアを用意しているので、それを利用すればよい。また、既にメーカーがない場合や、自作パソコンのデータを消去したい場合は、市販の消去ソフトを使用する手もある。
データの消去が面倒だったり、パソコンが起動せず消去できなかったりする場合は、有料で業者に依頼してもよいだろう。
(ライター 藤原達矢=アバンギャルド)
[日経パソコン2018年6月25日号の記事を再編集]
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