わが子の進路「損得勘定」 理系と文系どちらがいい?

日経DUAL

文系・理系の年収比較。女子に大きな差が見られた

経済協力開発機構(OECD)の国際成人力調査「PIAAC 2012」では、最後に出た学校での専攻分野(major)を尋ねています。日本の大卒男女(25~54歳)のサンプルを取り出し、大学時代の専攻に依拠して文系群と理系群に仕分けし、現在の年収とのクロスをとってみました。年収は国内の就業者全体の分布に基づく相対区分で、原統計では6つの階層が設けられていますが、ここでは3つに簡略化しました(下位25%未満、中間、上位25%以上)。

図1は、結果をグラフで表したものです。横幅を使って、文系群と理系群の人数比も表現しています。

ぱっと見、年収の性差が大きいことに気づきます。男性では「上位25%以上」が多くを占めますが、女性は「下位25%未満」が結構います。同じ大学・大学院卒でです。女性の場合、家計補助のパート就業が多いと思われますが、この格差は大きい。

ここでの関心事である文系・理系の差をみると、大学時代に理系を専攻した者のほうが、文系専攻者より年収が高くなっています。女性はそれが明瞭で、「上位25%以上」の割合は、文系は19.3%であるのに対し、理系では40.8%にもなります。「下位25%未満」のプアの比重は、これの裏返しです。理系の女性は既婚者が少ないのではないか、と言われるかもしれせんが、文系群と理系群の既婚率に大きな差はありません。

最近では「リケジョ」が重宝されるといいますが、女子の場合、理系に進むことのベネフィットが大きいといえるかもしれません。しかしながら、そういう女子は少ないのが現状。グラフの横幅を見ても、女性では文理の人数比が「3:1」になっています(男性はほぼ半々)。

日本の女子生徒の理系職志望率は低いのですが、「女子なのに理系なんて……」という周囲の偏見が寄与していることが少なくありません。それがいかに馬鹿げたこと、もったいないことであるかは、図1のグラフを見ると分かるかと思います。個人の稼ぎがどうかというカネ勘定の話だけではなく、女子の理系で開花したかもしれない才能が摘まれることは、社会にとってもマイナスです。

正社員になるには理系なら院卒、文系なら学部卒のほうが有利

大雑把な文系・理系というくくりで、将来見込まれる稼ぎの比較をしましたが、この2つの下にはより細かい専攻が含まれています。文系は人文科学、社会科学……、理系は理学、工学……というように。こういう具体的な専攻ごとのベネフィットも知りたいですね。

大卒者の細かな専攻ごとの年収を出すことはできませんが、正社員就職率という指標を計算することはできます。正社員になれるチャンスが高いのはどの専攻か。肌感覚では、文系より理系が優勢で、後者の中でも理学や工学などが強そうですが、データで見るとどうでしょう。

文科省の『学校基本調査』では、大卒者の進路を専攻別に集計した表があります。設けられている専攻区分は、人文科学、社会科学、理学、工学、農学、保健、商船、家政、教育、芸術、その他、です。このうちの商船は、卒業生が少ないので除きます。

正社員就職率の分母には、就職の意志のない進学者を卒業生から除いた数を充てます。分子は、正規就職者と臨床研修医です。医学部の場合、キャリアが臨床研修医から始まることが多いので、この数も含ませましょう。なお最近は大学院修士課程への進学者も増えていますので、学部卒業と大学院修士課程修了の2時点を織りまぜることにします。

学部の10専攻、修士課程の10専攻を、正社員就職率が高い順に配列すると、表1のようになります。Aは大学学部、Bは大学院修士課程です。

まず男子を見ると、下馬評通り理系が強いですね。学部(A)よりも大学院(B)が強し。理系、とりわけ大企業では、学部卒業生よりも修士課程修了者が好んで採用されるといいますが、それが表れています。

しかし文系は違うようで、男子の社会科学(法学部、経済学部など)の正社員就職率は、学部では85.5%ですが、大学院では74.0%に下がります。人文科学(文学部など)は陥落がもっと大きく、76.8%から51.2%に下がってしまいます。

文系の場合、大学院でプラス2年間学んだことの効果も説明しにくいですからね。学部段階での新卒就職に失敗したとか、まだ学生でいたいとか、生半可な気持ちで院に行く学生も多いですし。それが悪いとは言いませんが、お子さんがこういう方向に傾いた時、上記のような数字を出して、リスクを説明しないといけないかもしれません。

「女子の文系・院卒」不利は古い差別感の現れ?

次に女子を見ると、5つの専攻で正社員就職率が9割を超えています。トップは学部の保健専攻で91.5%です。多くは看護学部の卒業生と思われます。看護師への需要が高まっていますからね。農学部も健闘。リケジョならぬ「ノケジョ(農業女子)」が増えているそうですが、農林漁業の6次産業化(加工、流通販売の機能も付加)に際して、女性ならではの視点が評価されるのかもしれません。

文系では、大学院を出るとデメリットが発生するのは男子と同じです。女子の場合、就職率の下落幅が男子よりも大きく、社会科学は88.7%から59.1%、人文科学に至っては83.3%から45.0%とほぼ半減してしまいます。文系の院卒への風当たりは強いのですが、男子よりも女子でそれは顕著です。「学のある女性はいらぬ」。採用担当者の脳内には、まだこういう構図があるのでしょうか。大学院修了者の秘めた能力を汲もうとしない、企業の側の問題でもあると思います。

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体育会は有利。だが、わが子を上に従順な労働者にして