教育改革を断行していく上で最も大事なのが、教職員の意識改革だ。上層部の意識は変わってきたが、学園全体に浸透しているとは言いがたい。例えば、ある先生に学生募集のパンフレットの内容を改善するよう指示したところ、「わかりました。1年かけて案を検討し、2年後の募集に間に合わせます」との返事。「そこまで世の中は待ってくれない」と、前倒しするよう指示したという。

教職員にも人事評価制度を導入へ

「今も熱い血はたぎっている」と話す渡氏

意識改革の具体策として、渡氏が検討しているのが人事評価制度の導入だ。授業内容や研究成果を適正に評価し、給与に反映させる。すでに職員には18年度中に取り入れることを決めた。教員については職員への導入の成果を踏まえ展開していきたいという。「企業では当たり前のこと。相当の抵抗は予想されるが、やらなければ学校自体がなくなっていく」

かつて渡氏が石油業界の再編を相次ぎ仕掛けたのも、「このままでは日本の石油産業全体が過当競争で沈んでしまう」との危機感からだった。日石の副社長だった1999年には三菱石油との合併を陣頭指揮。新会社の社長に就いてからは、東北石油、九州石油、そして10年にはジャパンエナジーとの大型合併など、次々と統合を実現させた。

「生きるか死ぬか」の競争をしてきた企業経営者の目からすると、学校経営はどうしても生ぬるく見えてしまうという。その一方で、「学校経営は企業より難しい面もある」とも。企業は国内市場が縮小するなら海外を開拓できるが、学校は簡単に外には出られないからだ。「高いお金を払ってでも我が子を入れたいと、親御さんに思ってもらえるかどうか」。教育の質の向上に力を入れるゆえんだ。

企業合併では5~10年後のビジョンを掲げ、共有していくなかで組織が一枚岩になっていくという。「成城も第2世紀ビジョンという旗は立てた。あとはどう浸透させていくか」。今も熱い血はたぎっていると話す渡氏の次の一手が注目される。

渡文明
 中学、高校を成城学園で過ごし、1960年慶応義塾大学経済学部卒業、日本石油(現JXTGホールディングス)入社。2000年社長、05年会長。石油連盟会長、経団連副会長・審議員会議長などを歴任。14年6月から成城学園理事長。

(村上憲一)

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