長く続く胃もたれ・胃痛 どんな薬を飲めばいい?
機能性ディスペプシア(下)
内視鏡検査で異常はないのにもかかわらず、胃もたれや胃痛などの不調がずっと続いている……。そんな胃の病気である機能性ディスペプシア(FD)は、ストレス対策、生活改善、薬による治療の3つの対策で治せるという。2回目の「胃の長引く不調 ゆっくり食べ・腹八分目でいたわる」に引き続き、3回目は、各治療薬の使い分けについて見ていこう。
◇ ◇ ◇
ストレス対策や生活習慣の改善に加え、薬による治療も有効だ。市販の胃薬を試す人も多いだろうが、1、2週間のんでも症状がよくならない場合は、医療機関で薬を処方してもらおう。
「症状に応じ、まずは胃酸の分泌を抑える薬や、胃の運動をよくする薬を処方する。両者を併用することも多い」と兵庫医科大学内科学消化管科の三輪洋人教授。
胃酸に過敏で、胃の痛みや灼熱感がある人には、胃酸分泌抑制薬の「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」や「H2ブロッカー」が用いられる。
また早期満腹感や胃もたれがある人には、消化管運動機能改善薬「アコチアミド」(商品名アコファイド)が処方される。FD治療薬として日本で初めて承認された成分だ。胃の動きをよくすることで、食べたときの胃上部の膨らみや消化したものの排出を促す。
漢方も頼りになる。代表的なのは、六君子湯(りっくんしとう)と半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)。「FDに一番多く使われている漢方が、六君子湯。体力のない人の胃もたれや食欲不振、みぞおちの痛みなどに効く」と北里大学東洋医学総合研究所の及川哲郎副所長。FD患者を対象にした臨床試験では、みぞおちの痛みの改善効果が報告されている。
半夏厚朴湯は、ストレスがあって胃が張る人に効果的。「FDの人はお腹にガスがたまりやすいが、服用によりガス腹の改善が認められた」と及川副所長。他にも安中散(あんちゅうさん)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などもよく処方される。
また強いストレスや気分の落ち込みがあれば、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもある。
「FDの治療で大事なのは、命にかかわる病気ではないと理解すること」と三輪教授。医師に「大丈夫」と言われるだけで安心し、症状が改善する人も。信頼できる医師に診てもらおう。
ピロリ菌を除菌すれば症状が改善することも
胃の不調が続く人は、内視鏡検査に加え、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染しているかどうかも調べておくといい。血液検査で簡単にわかる。
ピロリ菌は胃粘膜に生息する細菌で、アンモニアを分泌して胃酸から身を守る。乳幼児期に飲み水や食べ物から感染する。長くすみつくと胃粘膜に慢性的な炎症を起こし、胃潰瘍や胃がんだけでなく、FDを招くリスクも高まる。「感染している人は除菌治療をすると、FDの改善が期待できる」と三輪教授。ピロリ菌対策も忘れずに行おう。
兵庫医科大学(兵庫県西宮市)内科学消化管科教授。1982年鹿児島大学医学部卒業。専門は消化器内科。日本消化器病学会「機能性消化管疾患診療ガイドライン─機能性ディスペプシア(FD)作成委員会」委員長も務める。
北里大学東洋医学総合研究所(東京都港区)副所長(臨床准教授)。1986年浜松医科大学卒業。専門は漢方全般、内科、消化器。日本東洋医学会認定漢方専門医・指導医。日本消化器病学会消化器病専門医など。
(ライター:佐田節子)
[日経ヘルス2018年8月号の記事を再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。