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のっぴきならないペペロンチーノ 素材命、どう作る? 男のパスタ道(2)

2018/7/22

ペペロンチーノは料理の入り口か?=PIXTA

 日本経済新聞出版社の新書、日経プレミアシリーズ『男のパスタ道』からの2回目。パスタ道を極めるためには、料理の入り口としてのハードルは低いものの、奥があまりに深い、ペペロンチーノのレシピを作り上げること。著者の壮大な挑戦が始まった。

 私たちが「ペペロンチーノ」の名で親しんでいるパスタ料理は、正式にはスパゲティ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ(spaghetti aglio olio e peperoncino)と言う。アーリオ=ニンニク、オーリオ=油、ペペロンチーノ=唐辛子が入ったスパゲティという意味だ。

 日本では、アーリオ・オーリオと呼んだり、ペペロンチーニ(唐辛子の複数形)と呼ぶこともあるが、本書ではペペロンチーノで通すことにする。

 パスタ料理の名前には、カルボナーラ(炭焼き風)、ブッタネスカ(娼婦風)、カチャトーラ(漁師風)といった職業に由来する名前や、ボロネーゼ(エミリア・ロマーニャ州の町ボローニャ風)、アマトリチャーナ(ラツィオ州の町アマトリーチェ風)といった地方性・郷土性を感じさせるものも多い。

 それに比べてアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノは、ただ単に材料名を並べただけ。きわめてシンプルなネーミングだ。しかし、そのシンプルさこそ、ペペロンチーノの特異性を象徴しているように思う。

 パスタをゆで、ニンニクと唐辛子を入れたオイルソースにからめるだけ。味付けにも塩しか使わない。非常に短時間で作れる。あまりに簡単なので、イタリアでもレストランで出す料理というよりは、家庭料理という位置づけた。

 ただ、シンプルなぶん奥が深いとも言える。どんなパスタを選ぶか。どんな水や塩を使い、どれくらい入れるか。ニンニクはスライスするのか、つぶすのか。どこの産地の唐辛子を使うのか。どんな鍋を使って何分間ゆでるか……。細かな差異が、料理の出来にストレートに反映される。

 ペペロンチーノには、ほかのパスタ料理と決定的に違う点がある。チーズやアンチョビ、あるいはクリームやバターなど、旨味(うまみ)はコクの強い食材を使わないことだ。旨味などに頼れないから、味のごまかしがきかない。素材の持つ力、例えばパスタに使われた小麦の味の違いすら見えてしまう料理なのだ。

 実際、チェーンの格安レストランほど、シンプルなペペンチーノを出さない。マーケティング上の理由もあるだろうが、安い食事を使っているため素材勝負を避けたいという理由もあるのではないか。

 食材を最低限にしばり込んだうえで、味をどこまで極めていくか。いわば「引き算」の料理であって、蕎麦打ちに通じるものがある。この本で極めていきたいパスタ道にぴったりの「求道的なパスタ」だと言えるのである。

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