もちろん本当に円グラフであることに意味があるときはその限りではありませんが、それでもできるだけ違った見せ方はないか、他の形で表せないか、工夫を凝らさなくてはなりません。「おや、今までと何か違って新しいぞ」と思わせるべく、いろいろな表現パターンを使ってメリハリをつける。そのために、さまざまなグラフ・図形のレパートリーやオリジナリティーある分析手法を駆使できるようにと教わりました。これは新入社員の昇進条件の項目の一つでもありました。
先を読まれないストーリー展開を
また、クライアントに提供するプレゼンテーション資料に書かれるメッセージは全体を通してひとつの物語のように流れていかないといけません。ブツ切りのメッセージを羅列しても、見ている人の頭に入らないからです。なので、どう聞き手の心をつかんで離さない「ストーリーライン」を組み立てるかが非常に重要になってきます。
あくまでも当時教わった例ですが、「このままではA社の今後の業績が危ぶまれる」という事実でも「このままではA社の名声が地に落ちる」というように極端なスタンスを取ったメッセージにした方が聞き手へのインパクトは大きくなります。ありきたりな言葉や展開ではなく、相手の予想をいい意味で裏切れるようなメリハリのあるストーリーラインである必要があるのです。
「ボケやツッコミのパターンにバリエーションを持つように!」「ストーリー性を大事に」「先が読めてしまう」「最後もうひと展開ほしい」などとお笑い養成所で耳にするたびに、マッキンゼーでも同じことを言っていたなと思ったものです。頭では分かっていても実際にやり続けることはとても大変なことではありますが、相手の予想をいい意味で裏切る何かができないかという意識を忘れずにいたいものです。自戒を込めて。(つづく)
1983年生まれ、東京都出身。白百合学園中学校・高等学校から東京大学文科三類に入学。工学部社会基盤学科卒、東大大学院修了後、2008年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、お笑いタレントを志して09年夏に退社。TOEIC990点(満点)、英語検定1級取得。現在、ワタナベエンターテインメント所属のお笑いタレントとして活動中。