辛さ強烈! 松屋のカレー「年々スパイシー化」の謎

日経トレンディネット

同社商品開発部商品企画グループ兼西日本松屋企画グループの水品一也グループマネージャーは「カレーの味には『会長の意向』が大きく働いている」と話す。

同社の創業は1968年だが、カレーの販売を開始したのは1980年だ。牛丼チェーンの競争が激化するなかで、「他のチェーンと差をつけるために特色があるメニューが必要だと考えて、通年メニューとして『ビーフカレー』の発売を開始した」(水品グループマネージャー)。カレーを選んだ理由を、同社の創業者でもある瓦葺(かわらぶき)利夫会長は「牛めしと同じようにクイック提供できる商品で、国民食でもあるカレーに力を入れたかった」と話す。提供を開始するにあたり、本格的な欧風カレーを目指そうと考えて牛骨や牛肉をふんだんに使用。本格的な味が受け、ビーフカレーは爆発的に売れたという。

2002年に発売していたオリジナルカレー。見た目は変わらないが、今のカレーのほうがかなり辛いという。松屋全体の売り上げにおけるカレーの割合は7~8%。それでも全国の松屋で1日5万食弱売れているそうだ

その後、さらに本格的な味を目指して30回以上も味の調整を重ねるうちにどんどんスパイシーになっていったそうだが、その裏には「辛さで耳の裏が熱くなるほどでなければカレーとは呼べない」という瓦葺会長の持論があった。同社にはホテルのレストランなどで経験を積んだ常任の開発担当者が複数人いるが、「新担当者が就任するたびに、瓦葺会長が『自分が一番おいしいと思うカレーを作ってほしい』と指示する」(水品グループマネージャー)。

そうして出来上がったカレーと、現行のカレーを瓦葺会長が比較をするのが常だという。歴代の担当者が既存のオリジナルカレーよりも「本格感」のあるスパイシーなカレーを目指して研究を続けているうちに、辛さもどんどん進化したのかもしれない。

個性的なカレーも続々開発

また、松屋でのカレーの新メニュー開発も積極的に行っている。2009年に発売した「トマトカレー」は大ヒットし、オリジナルカレーの2倍もの売り上げを達成した。一方、売れ行きはそこまでではなかったものの、開発に関わった水品グループマネージャーが「あの味は傑作だった」と振り返るのが2016年に発売した「チキンと茄子のグリーンカレー」だ。

「650円で販売していたが、タイ料理店なら1000円以上の値段をつけるのではないだろうか」(水品グループマネージャー)。期間限定商品だが、提供中は店内にココナツの香りが充満していたという。コアなファンもいたようで、これを目当てに来る人も少なくなかったそうだ。

「チキンと茄子のグリーンカレー」。2016年5月に期間限定で販売。「濃厚なココナツミルクと厚切りチキン、たけのこ、茄子などの野菜がたっぷり入ったカレーマニアもうならせた本格的なタイ風グリーンカレー」(松屋広報)
「ごろごろ煮込みチキンカレー」(並盛、590円)。2016年の新発売時は「ごろごろチキンカレー」の商品名だったが、2017年、2018年に再発売した際に煮込みの文字が追加された

さらに、2018年4月に期間限定で扱っていた「ごろごろ煮込みチキンカレー」は、2016年4月に発売して大好評だったメニューの再発売。オリジナルカレーをベースにした商品に文字通りチキンがごろごろと入っており、SNS上でも「松屋の傑作カレー」「ごろごろ煮込みチキンカレー大復活」など、再発売を喜ぶ声が多く見られた。販売が終了する前には、メニューから消えるのを惜しむ記事を掲載したメディアもあったほどだ。

カレー専門店も運営

また、同社はカレーに力を入れるあまり、カレー専門店も立ち上げている。2012年にスタートした「マイカリー食堂」は、板橋、三鷹、府中で3店舗展開しているが、「純粋にカレーで勝負したい」(水品グループマネージャー)という思いから松屋の名前は一切出さずに営業している。そのため、松屋が運営するカレー店だと気づかない人も多いという。

「マイカリー食堂 三鷹店」(東京都武蔵野市中町1-6-7)。営業時間は月~土曜が10~24時、日曜・祝日が 10~23時半
マイカリー食堂で人気ナンバーワンメニューだという「ロースかつカレー」(550円)

「『松屋のカレーは辛すぎる』という意見もあるが、松屋でないと食べられない味という独自性を出すためにも、あえてパンチの効いた味にしている」と水品グループマネージャーは話す。使用するスパイスの種類もリニューアルするごとに増えており、「正確に辛さを計測しているわけではないが、現行のカレーが一番辛いというのは確か」(同氏)。

牛丼チェーンにカレーを置く本来の目的は、「牛丼以外のものが食べたいときの選択肢」だろう。だが、牛丼の味が定番化しているのに対して、カレーはインパクトを求めてスパイシーに進化し続け、今では牛丼以上に各店の個性が表れているのかもしれない。

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2018年7月9日付の記事を再構成]

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