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健康づくり

人生100年時代って本当なの?

2018/7/19

イチ子お姉さん 最近「人生100年時代」という言葉をよく耳にするわ。今の子どもの半数が100歳(さい)を超(こ)えるという予測もあるの。色々な準備が必要ね。
からすけ 元気なおじいさん、おばあさんが多いよね。どうすれば健康で長生きできるかは子どものうちから考えておかなければいけないのかな。

■平均寿命が延びているの

からすけ 100歳まで生きることが珍(めずら)しくなくなったの?

イチ子 日本では毎年、平均寿(じゅ)命というものを計算しているの。各年齢(れい)の人が1年以内に死亡する確率(りつ)や、平均(きん)してあと何年生きられるかという数値などを「生命表」(キーワード)というものにまとめていて、これを見ると年齢ごとに、平均してあと何年生きられるのかがわかるのね。0歳児が平均してあと何年生きられるかという数値を示したのが平均寿命。2016年の日本人の平均寿命は男性80.98年、女性87.14年。現在は人生80~90年時代という感じね。

<キーワード>
生命表 日本にいる日本人について、その年の1年間の死亡状況が今後変化しないと仮(か)定し、各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという数値などをまとめたもの。毎年の人口や死亡数、出生数などの統(とう)計数値を基に作成している。
学び直し 社会人になってからも、仕事を続けていく上で必要な知識や技術を得るために、大学などの高等教育機関に戻って学習すること。習得した知識(しき)や技術、資格で、さらにレベルの高い仕事に就く。人生100年時代になると、学び直しの機会は複数回になることも想定される。

寿命が今後どれだけ延びるかについては、国立社会保障・人口問題研究所が推(すい)計しているわ。2065年には男性の平均寿命は84.95年、女性は91.35年にまで延びるそうよ。ただ、この時点でみても平均寿命が男女とも100年に達しているわけではないのよ。

からすけ 「人生100年時代」はまだずっと先の話じゃないの。なぜ、そんなに話題になるの?

イチ子 英国の学者、リンダ・グラットン氏らが書いた「ライフ・シフト」という本がきっかけよ。そこで紹介された研究によると、07年に生まれた日本の子どもは107歳まで生きる可能性が50%あるとされたのよ。これまでは人生80年時代といわれてきたけれど、人生100年時代のことを考えようという機運が高まってきたの。

からすけ 実際には、どんな形で考え始めているの?

イチ子 100歳まで生きることを想定すれば、80年時代を念頭に考えていた人生設計を根本的に見直す必要が出てくるわ。政府も昨(さく)年9月に有識者からなる「人生100年時代構(こう)想会議」を立ち上げたわ。長い高齢期を生きていく上でどのように仕事を確保し、生きがいのある生活を実現していくかを検(けん)討したの。

からすけ 現在(ざい)のように、60~65歳くらいで仕事をやめたら、老後に生活するお金も足りなくなりそうだね。

■働き方の見直しが必要ね

イチ子 定年を迎(むか)えるなど高齢になって仕事を辞めた後に、定期的にお金を得られる年金制度があるけど、これも見直されていくわ。年金の財(ざい)源は働いている人が中心に支えているけど、年金をもらう高齢者が増える一方では、負担が大きくなることが心配されているの。そこで、高齢者が長く働きながら、年金をもらう時期を遅(おそ)くすることも検討されているのよ。

からすけ 老後も長く働き続けるのは、大変そうだね。

イチ子 そう、そこが重要なところよ。高齢になっても楽しみながら働けるような形で「職業寿命」を延ばしていく必要があるわ。そのために働き方を考えることが大事になってくるのね。これまでは、10~20代で学校の教育期間を終えてから仕事に就いて60~65歳で引退。今後は、70~80代まで働くとすれば、働き方に柔軟(なん)性を持たせることも欠かせなくなるよ。

例えば、1つの仕事を続けた後、一旦(たん)、その仕事を辞めて「学び直し」(キーワード)をして、別な職種に就くことも想定されているわ。また、現在のメインの仕事の傍(かたわ)らで、別の仕事もこなす「副業」やボランティアに取り組む形も、有効な方法とされているわね。新鮮(せん)な気持ちで元気に長く働き続けていくには、今の仕事と、違(ちが)う視点や知識を得る時間や機会を持つことが大切という考え方よ。

からすけ 年をとってからも健康を維(い)持することが、とても大事になりそうだね。

イチ子 実は平均寿命がいま延びているのは、男女ともがんや心臓病、脳卒中、肺炎などの死亡率(りつ)が低くなっているのが要因なの。1970年ごろまでは結核(かく)などの感染症(しょう)で死ぬ子どもの数の減少で平均寿命が延びてきたけれど、それ以降は、医学の進歩や毎日の生活習慣の改善によって心臓病や脳卒中、がんなどによる高齢者の死亡数が減って長寿化が進んでいるのね。

からすけ でも、年をとると、世話をしてもらうことが必要になるお年寄りも増えているよね。

イチ子 「健康上の問題で日常生活が制限されることがない期間」を「健康寿命」と言うんだけれど、老後も長く働くには、これを延ばしていくことが重要ね。高齢になると、介護が必要な状態になったり入院したりするので健康でいられる期間は平均寿命よりも10年くらい短いとされているの。人生100年時代に備えるには、健康寿命を延ばしていくという研究が進むことも欠かせないわ。

■自分の時間を生きて

渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話 長寿の祝いは、干支が一巡(じゅん)した「還暦(60歳)」や、中国唐(とう)時代の詩人、杜甫の「人生七十古来稀(まれ)なり」に由来する「古希(70歳)」などがあります。
織田信長は強敵(てき)の今川義元と桶狭間で戦う前に、曲舞の一種の「敦盛」を舞(ま)い出陣(じん)しました。「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如(ごと)くなり」。天界と比べれば人の世の50年はあっというまで、はかなく無常とし、合戦に賭(か)ける覚悟(ご)をしたのでしょう。
現代は100年前と比べても、一定の時間内にできることが増えました。交通網(もう)の発達は移動時間を短縮し、コンピューターが作業効率を高めました。AI(人工知能)も浸透すれば、人が感じる時間の速度は、さらに速くなるかもしれません。
「人生100年」をどう生きるのか。時間に追われず、旅行や読書、創(そう)作活動などに取り組み、じっくりと自分の時間を生きたいものです。

[日本経済新聞夕刊2018年7月7日付]

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