ライフコラム

立川談笑、らくご「虎の穴」

小気味よさ、気品…古典落語の涼しさ味わう 立川談笑

2018/7/8

打ち上げ花火は昔から納涼の定番(イメージ=PIXTA)

 東京は7月の声も聞かずに早々と梅雨明け宣言が出ました。あっけない。あまりにあっけない。そしてやってきましたよ、うだるような暑さが。天空のどこかにあるスイッチが壊れてるんじゃないかなあ。「やっと梅雨明け」「さわやかな初夏」をすっとばして、いっきなり「真夏」だもの。今回はそんな暑さを上手にしのぐ、「納涼」のお話です。

 まずは「納涼」という言葉を考えてみます。涼しい北海道や軽井沢で過ごすのは「避暑」であって、「納涼」ではなさそう。また、「暑いから、ちょっとエアコンの温度を下げようか」ってのも、「納涼」って感じじゃありません。私の感覚でいうと、なんとなく、屋外のイメージ。基本的に暑くて、ちょっとだけ涼しい。あるいは涼しい気がする。つい暑さを忘れる。こんなところでしょうか。

華やかな江戸の風情

 さて、納涼の定番といったら、花火ですよね。納涼花火大会と称して毎年あちこちで盛大に催されています。日暮れ時の河原に明るい屋台がずらっと出ている。人の波をかきわけながら浴衣姿でうちわ片手にそぞろ歩きなんて、結構な風情です。「ヒューッ」。糸を引くように夜空に小さな光が吸い込まれると、途端に視界いっぱいに鮮やかな光の花が開いて「バッ、ドドーン!」。胸に響くほどの爆発音。そして一瞬遅れて、観衆の拍手とどよめきが広がる。

 「スター、マイーン!」

 なんて場内アナウンスもまたしみじみと味わい深いものです。

 その昔、江戸の納涼といえばなんといっても「両国の夕涼み」でした。浮世絵にもずいぶん残っています。どの絵も、ぎっしりと群衆が詰めかけた橋の上と、大小の舟がひしめく川面が強調されています。大津絵という歌に残っていますので、引用しますね。

 「両国の夕涼み 軒を並べし茶屋の数 団扇店(うちわみせ)楊弓場(ようきゅうば) そのほか数多(あまた)の諸商人(しょあきうど) 川の中ではテケテン馬鹿囃子(ばかばやし) ウロウロ舟(ぶね)に影芝居(かげしばい) 屋形(やかた)屋根舟(やねぶね)ある中で『そーれ、上がった上がったあ! たーまやー! かーぎやー!』」

 当時の川開きの賑やかな風情が伝わるでしょうか。これが大津絵両国という長い歌の、ほんの冒頭部分です。それにしても、浮世絵に描かれている「花火」がちょっと我々の想像と違うんですよ。言葉を選ばないといけないけど、ヘンテコなのが多い。妙にニュルニュルしてて、みみずみたいなのがあったりして。なにか理由があるのかしら。変なところが気になって納涼どころの気分じゃないなあ。

 両国の夕涼みの続き。これが古典落語だと「たがや」になります。

 花火当日の夜のこと。何万人もの見物人でごった返す両国橋の上で、ひとりの桶職人(たが屋さん)が複数の侍を相手に刀を振り回しての大立ち回りを演じます。こちらはサゲ部分をご紹介。

 「一足(いっそく)跳び下がって殿様が刀の柄(つか)に手をかけるより、たが屋がおどり込んだ方が早かった。『えいやあっ!』横に払った一文字。殿様の首が中天高くスポーン! 見ていた見物人が『ほうら、上がった上がった。たーがやー!』」

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